二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*参照2000突破! ( No.484 )
日時: 2012/01/03 21:21
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

第46話 病室にて————1


円堂「どうして、お前が…」

夜だった。

電灯の黄色い光の下、久々の再会を果たした3人がいた。雷門中サッカー部関係者の円堂と音無、そして鬼道有人。

普段と違う声色で、円堂は友人であった鬼道に詰め寄っていた。

帝国学園サッカー部総帥になった鬼道は、イタリアリーグで活躍していた、イナズマジャパン時代の天才ゲームメーカー。

サッカーの腕は勿論のこと、司令塔として活躍していた事もあり、サッカーチームのレベルを上げるのは容易いだろう。

そんな帝国サッカー部と、雷門中は次の試合で当たる事になった。しかし雷門に、強い相手と戦えるという喜びは起こらない。

何故なら、帝国学園サッカー部が完全にフィフスセクターの手に落ちていからだ。

そこをまとめる立場ならば、鬼道もまたフィフスに従っているという事になる。そこを円堂は問い詰めているのだ。

鬼道「お前も知っているだろう。管理サッカーになる前の荒れたサッカーを。」

円堂と音無は、その言葉にひるんだ。この言葉だけなら、鬼道は完全にフィフスを肯定している事になる。

彼は、反論しようと口を開いた円堂をねじ伏せるかの様に笑みを浮かべ、さらに続けた。

鬼道「まだ用事が残っているんだ、ここで失礼させてもらおう。…試合を楽しみにしている。」

兄さん、と音無が鬼道の背中に呼びかける。しかし、実の妹でも立ち止まらせる事は出来なかった。

円堂「……鬼道。」




普段なら、許可されないことだ。しかし許可されたのは、当然権力をちらつかせたからだろう。

まあ、名前を名乗った時点でそうなるのはあまり気分の良い事ではないが。

非常灯位しか明りの無い薄暗い病院の廊下を、俺は1つの部屋目指して歩いていた。

ネームプレートに気を配り、規則正しい足音を鳴らしながら。

そして俺の帰国の引き金を引いた名前を見つけ、ドアを開けた。暗い病室に、カーテンを閉めたベッドから漏れる優しい光。

鬼道「…魁渡。」

呼びかける。

一瞬、部屋の全ての動きが止まったかのように変わる空気。次いで、白い手によってカーテンが勢い良く開けられた。

橙色の髪が覗き、思わず頬が緩むのを感じる。動きから元気を読み取れて、嬉しいからだと思う。

魁渡「鬼道ッ!!?」

鬼道「今日意識が戻ったと聞いて面会は無理かと思ったが…。元気そうだな。」

ベッドの隣にある椅子に腰かけると、明かりに照らされて魁渡が良く見えた。

長い間日光に当たっていないからだろう、肌は10年前からは想像できない程白くなっている。

そして、また比べ物にならない程やせている。仕方が無い、意識が無い間は食べ物を口にする事が出来なかったのだから。

更に言うとすれば、当然の事だが身長が伸びていない。一日に必要な栄養を点滴から摂取しても、身長には回せないだろう。

ただ、医者が言っていた通り、異常な点もある。

1つ目は筋肉。全く運動をしていなかったはずだが、魁渡は1人で普通に体を起こしたり、立ったりできたという。

見た目からも、あまり衰えていない事が分かる。

もう1つは回復の速さ。今まで昏睡状態だった魁渡の元気の良さを見れば一目瞭然。検査入院の患者にしか見えない。

現に、魁渡は朝に目が覚めて検査を終えるまでに、物を書いたり折り紙をったり、サッカーをしに外に出ようともしたらしい。

サッカーやろうぜ!、と誘われたらあっさりOKしてメテオスマッシュを打ちそうだ。

魁渡「鬼道?どうしたんだ、難しそうな顔をして。」

元々長い間昏睡状態だった患者が、目を覚ましたその日に面会してこんなに物を話すなど、通常はあり得ないだろう。

それでも今こうして会えているのは、魁渡が『普通』では無いからだ。幾ら元々丈夫な体をしていたとしても…。

鬼道「…久し振りだな、魁渡。」

魁渡「何だ、言うタイミング間違って無いか?」

そう言いながらも、魁渡は満面の笑みを浮かべた。

懐かしい笑顔だった。迷いの無い、真っ直ぐな彼らしい笑顔。

心配は要らなかったな。そう思った俺は、とりあえず魁渡に現状を伝える事に踏み切る。

鬼道「魁渡、お前は10年間眠り続けていた。」

途端、顔が曇る。そして、ティアラから聞いた、と返事が返ってきた。

魁渡が目を覚ましたのはティアラ達が見舞いに来た時だったと聞く。

魁渡「FFI決勝戦が終わって、鈴音達の近くに行って、表彰式だって呼ばれて……。その後に体に重い衝撃があった。何があったのか分からなかったけど、瑠璃姉の透明な涙が見えた気がするんだ。そして、意識が途切れる直前、何なのか分からないけど温かい光が体の中に入ってくる感覚があった。そこで記憶がプツリと途切れて今に至る。」

視線を、掛け布団の上で握りしめた両手に注ぎながら魁渡は語ってくれた。

違和感を覚えたのは、透明な涙と温かい光という2つ。

瑠璃花はあの時涙なんて流さなかったし、温かい光が体の中に入るという事に至ってはUFOにさらわれた体験談の様だ。

…本当に感じた事を話しているだけだというのは分かっているが。

さっきまでの笑顔が嘘の様な寂しげな表情。緋色の瞳に映るのは、絶望とも悲しみとも言えない光。

俺が何も言えないでいると、ふと思い出したように、魁渡が顔を上げて振り返る。

魁渡「鬼道、そう言えば瑠璃姉は…!!」

鬼道「!」

その言葉に、ドクン、と音を立てて心臓が大きく跳ねた。