二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*〜本編更新 ( No.537 )
- 日時: 2012/03/24 23:04
- 名前: 伊莉寿 ◆OIb3ToTaW. (ID: r4kEfg7B)
第54話 突風少年の名前、松風天馬
〜橘SIDE
昨日は走って家に帰った。それから少し落ち着いてみると、焦りって怖いと思った。
だってバカみたい。あんな約束して…確かにお父さんとお母さんとは行けない。行きたいなんて言い出せるわけがない。
だけどサッカー部の人達と行きたい訳じゃない。あの人と行きたかった。
橘「わがままだなぁ…。」
もう叶わない願いだよ。つきのんと一緒に行けるなら良いかな。サッカー部の人達だから賑やかな1年生も一緒かぁ。
一息ついたら、っていつ?勝ち進むか、負けるか…待って、負けて行ったらテンション低いし暗いし気まずいと思う。
橘「…勝ってほしい…ソフィアに、ってそれはズルだもん。」
まず却下されるなぁ、雷門が勝ち進めるようにして、なんて。
応援に行くだけで良い、とも違う。
橘「決めた!」
天馬「おはよー美咲!決めたって何を?!」
橘「…っくりしたぁ、6月か…」
天馬「名前で呼んでよ!!」
まさか美咲も名前で呼んでくれないなんて、と天馬君が肩を落す。そこまでショックだとは思ってなかったから、慌てて謝った。
歌ちゃんに名前で呼ぶように言っておこうかなぁ。聞いてくれないかもしれないけど。
橘「あのね、あたしサッカー部に入ろうと思って!」
天馬「…え?!ほんとっ!?」
橘「うん!よろしく[天馬]!」
名前をちょっと強調してあげた。
*
天馬「月乃さん、おはよう!朝練に来なかったけど、どうしたの?」
月乃「…6月、おは(天馬「名前で呼んでっ!!!」
挨拶を遮って天馬君が嘆く。
朝練、行かなかったんだ…昨日の事があるからかな。
橘「おはよ、つきのん!あたしサッカー部に入る事にしたの、よろしくね。」
月乃「私、今日は部活休むから。」
天馬「え…?どこか調子悪いの?」
心配そうに声をかける天馬君。優しいなぁ、名前で呼んでさえくれてないのに。
これが仲間って物かな。
月乃「違う、私…」
きっとそうだ、つきのんには仲間がいる。信じ合える仲間という存在。だけど、今からつきのんは、その大切な仲間を…
月乃「サッカー部、やめるつもり。」
きっと、これもあたしのせい。
*
橘「テニス部からサッカー部に転入します、橘美咲です!」
時間は飛んで昼休み。2年生の教室に行こうとすると、目当ての人物は廊下で友達と話してた。
サッカー部…つきのんは昨日の事でサッカー部をやめるつもりで。
改めて押し寄せてくる罪悪感を振り払って、笑顔でキャプテンに挨拶する。話をしてたのはサッカー部の2年生だった様子。
神童「神童拓人だ。改めてよろしく。」
橘「はい、キャプテンよろしくお願いします!皆さんのサポート頑張りたいと思いますっ!!あ、あと…」
時々練習に混じっても良いですか?と尋ねてみると、少しびっくりした表情をしてから勿論、と快諾してくれた。
絶対冗談混じりで答えたよ…。あたしは本気なのにな。
橘「霧野先輩、あたし絶対サッカー部勝たせますから!」
霧野「!」
倉間「霧野、この1年(橘「倉間先輩、今度シュート技見せて下さいっ!」
小さいですね、あたし結構小柄なほうだけど微妙に勝ってます♪
あと浜野先輩とか速水先輩とか、名前を少し覚えて教室に戻った。すると丁度、つきのんが荷物を持って教室を出てきて。
橘「つきのん、どしたの?」
月乃「…。」
橘「…もしかして、昨日どこか悪くした?」
恐る恐る聞くと、念のために、って小さな声で返事が。う…。だけどだけど、記憶は戻る!絶対、あと少しで。
だってあたし知ってるもん。つきのんが拾った雌猫に、ルナって名前つけた事。
これが、何よりの証拠だよね!
**
「あれ、剣城君練習は?」
病院に行くために学校を出ようとすると、聞き慣れた声が俺を呼んでいた。
振り返ると、予想通りの人物——橘美咲が立っていた。
剣城「練習には出ない。」
橘「?そうなんだ、どこ行くの?」
その質問はスルー。答える義務は無いし、いちいち答えていたらキリがない。
橘「…病院?」
…何で知ってるんだ、この女は。
ただ、振りかえるのはやめておく。一度足をとめたが、何事もなかったように歩きだすした。
橘も、もう呼び止めはしなかった。
**
天馬「剣城どこ行ったか知ってる!!?」
橘「っ!?び、びびびびっくりしたぁ!!!」
立ち去る剣城君を見送ると、その少し後で天馬君がやって来た。すごい勢いで。
橘「えっと、あっち。北の方かな…びょう(天馬「ありがとっ!!」
病院の方、って言おうとしたけど、言い終わるより早く天馬君は走り去った。突風の如し(ゴトシ)。
水鳥「…はえぇ。」
同意します、先輩。
**
剣城は、病院の中に入って行った。
天馬「剣城はどこか悪い様には見えなかったけど…。」
不審に思いながら剣城を追いかけて病院の中を進む。こっちは入院してる人たちの病室が集まってる場所だ。
何で剣城が…?
「どうかしたの。」
天馬「!!」
慌てて振り返ると、月乃さんが1人立っていた。包帯とかそういう類の物は見つからなくて、今から帰るみたいだった。
どこも悪くなかったんだ…良かった。
月乃「…何で、笑ってるの。」
天馬「ううん、体どこも悪くなかったんだ、良かった!」
月乃「私、サッカー部に…」
…そうだ、月乃さんサッカー部やめるって言ってたんだ。…っ!でも待って、もしかして月乃さんなら…!!
天馬「そうだ、月乃さんのキック力ならアルティメットサンダーを完成させられる!!」
月乃「!アルティメット…サンダー?」
昨日部活を休んで話を知らない月乃さんは顔をしかめるけど…。万能坂戦で月乃さんはすごい技術を見せてくれた!
早速必殺タクティクス・アルティメットサンダーがどんなものなのか説明した。
天馬「それで最後のキッカーに高いキック力を持った選手が必要なんだ!キャプテンも倉間先輩も出来なくて…」
月乃「だから剣城君を追いかけて病院に。」
天馬「え…剣城が居る事知ってたの?」
さっき見た、と指差す先には病室がいくつも並んでる。あの内のどこかに剣城が居るのかな。
月乃「…私は、許されるならサッカー部には当分関わりたくない。」
天馬「!どうして…何があったの?!」
俺が問いかけると、月乃さんは無表情だった顔に悲しみを少しにじませた。
俺まで悲しくなる。サッカー好きなはずなのに、だからあんなに強いはずなのに、月乃さんはサッカー部にいる事が辛いって。
月乃「…剣城君は、あの病室。」
天馬「え…っ、月乃さん!」
またいくつもある病室の1つを指さして、月乃さんは階段を駆け下りていった。空気は心なしか冷たく感じられて、悲しみの香りが漂っている。
指差された先に剣城はいる。会うために来たはずなのに、足が重い。強引に動かして、病室の前に立った。
少しだけドアを開けて声をかけようとすると、兄さん、と言葉をつむぐ柔らかい、聞きなれた声。
天馬(…剣城…?!)
病室に立つ、マントのような制服。その奥で…剣城そっくりな人が、ベッドに横になっていた。
剣城「!?松風っ…」
あ、見つかった。