二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*前作参照10000超え企画 ( No.655 )
日時: 2012/08/19 08:10
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

第70話 2つの計画、始動!


魁渡は荷物を持って病院を出た。

空は雲が覆っていて、あまり良い天気では無い。翡翠色の、少年らしく澄んだ瞳は空を拒む事はないが。

魁渡「……で、鬼道はどうすればいいって言ってたかな。」

「流星魁渡さん。」
魁渡「! …お前は?」

駐車場まで来ると、木陰から出て来た少女に呼び止められる。

見知らぬ人物が自分を知っている事に顔をしかめるが、少女は全く気にしていないようだ。

「私は青卯未港。これでも“レジスタンス”の一員。」
魁渡「! じゃあ、お前が鬼道の言ってた迎え…?」

こくり、と頷いた未港に魁渡はほっと安堵する。

未港「……話には聞いてたけど、本当小さい。」
魁渡「あっ、そ。」

病院の駐車場を素通りして正面入り口に来ると、丁度タイミング良く目の前で車が止まった。

運転席側の窓が開くと、運転していた男性が魁渡を見て笑顔を浮かべる。

魁渡「! ヒロト!?」
基山「久し振りだね。」
未港「ギリギリだよ、基山さん。」

ストレートに吐かれた彼女の言葉に苦笑する運転手、基山ヒロト。

魁渡(そう言えばヒロトって、今何やってんだ?)

疑問に思いながら、後部座席に座る。ヒロトは2人のシートベルト着用を確認してから、車を発進させた。

基山「それにしても良く受けてくれたね、魁渡。」
魁渡「ん? 別にフィフスセクターって気に入らないし、俺だったら都合良かったんだろ?」
未港「小さいから。」
魁渡「何回も言うとさすがにキレるぞ?」

正体不明だったから今まで我慢してたらしい。

基山「まあ、未港の事はあまり言及しないであげて。」
魁渡「は?」
未港「……私はただのレジスタンスの一員、魁渡さんはただのサッカー好きの小学生だから。」

彼女の言葉で、車内に緊張感が走る。

基山「これから魁渡が行くのはリハビリ施設よりもずっとキツイ所だけど、」
魁渡「父さんの訓練より易しい場所なら全然平気だ。」

バックミラー越しに見た彼の表情は、爛々ランランと輝いていた。それに目を見開いていると、今度はあどけない笑顔で。

魁渡「久し振りにサッカー出来るんだろ?」
未港「本来の目的は。」

スッと睨まれても、サッカー出来る事が楽しみなのか本人のダメージは小さい。

魁渡「分かってる分かってる!」

彼はリハビリ施設などにはいかない。それはつい最近、鬼道からの依頼事で打ち消されたのだ。

その見た目と実力なら、全く問題がないだろうと。


“目的は、月乃杏樹の捜索だろ?”


車が停まったのは、とある船着き場だった。



橘「キーパーって、大変だね。」

ぼそりと呟かれた言葉を歌音が拾い、頷いた。

歌音「プレッシャーがすごいと思うわ…責任重大で。」
橘「まあ、天馬なら出来るよね!」

ニコッと笑う橘と、苦笑して不安そうに見えるベンチのマネージャー達の差。

後半開始直前、雷門は選手のポジションを入れ替える。三国がDF、天馬をGKにという大胆な采配だ。

歌音「…やっぱり、彼のオーラは……」
橘「うん……きっと、成功するよ。」

だって、あたしと同じだもんね?


監督を見て微笑む彼女を、歌音は訝しげな表情で見つめた。




帝国学園のレジスタンス本部では、響木や久遠達が大画面の液晶で試合を観戦していた。

久遠「後半の鍵は、松風でしょう。」
響木「ああ……彼が覚醒すれば、流れは雷門中が握る。」

その時、響木の携帯電話が鳴り響く。響木は相手を確認すると、すぐさま通話ボタンを押す¥した。

他の議員にも、時間帯から相手は大体推測できた。

響木「……ああ、ご苦労だった。」
久遠「響木さん、相手は。」
響木「ヒロトだ。魁渡を無事に送ったらしい。」
雷門「魁渡君には大変かもしれませんが……」
鬼道「いえ、魁渡にとっても良いリハビリになるでしょう。」

彼は今まで、目が覚めてもサッカーをしていない。それはずるずると、段々と体が悪い方へ行くのを防ぐためだ。

姉を見つけ出すため、早く行動したかったのだ。

リハビリで無理をしたと医者に言われたが、彼なりに無理はしなかった為体に異常は見られず、今日の作戦決行に至る。

雷門「……本当に、こんな状態になっても強い光がいくつもあるのは嬉しい事だ。」
久遠「ええ、信じられる強い光がこれだけあるのなら。」

フィールドを見つめる、円堂の強い目。


もうすぐ、後半戦が始まる。






アルモニ……アルモニ、


天界の未来を、人間達の未来を……闇色に染めないで。




ヴィエルジェを見つけ出して、再び天界と人間界をつなげて————。




オラージュ「ソフィアっ!!!!」

倒れていく天使長を見て、オラージュが声を張り上げた。

自分とソフィアを隔てる見えない壁を強く叩くも、自分の力ではどうしようも出来ない。

ソフィア「オラージュ……聖力の無駄よ。」
オラージュ「!!!」

膝を地につけて何とか踏みとどまったソフィアが、オラージュに微笑む。

それが痛ましく、オラージュはソフィアの前で立つ犯人——悪魔を睨みつけた。


襲われたのは、聖霊達の為の芸術エリアだった。

マジシャンや女優達が悪魔の手に捕えられ、そのボスをソフィアが見極めて引き留めた、それまでは良かった。

問題は、ソフィアの戦術が知られていた事だった。

オラージュ『ソフィア、僕も手伝う。』
ソフィア『ええ、頼む……わ、』

悪魔が濃い緑色の手袋を着けた右手を空に掲げた瞬間、ソフィアとオラージュの間に見えない壁が生まれた。

ソフィアは敵を拘束し、動きを封じている間に仲間が攻撃を仕掛ける。

ソフィア『……やられたわね。』

彼女も分かっていたのだろう、余裕のない表情をしていた。

敵は、並みの悪魔では無かった。



ソフィア「……オラージュ、ここで劇をしていて避難した聖霊の中に、かの魔人はいる?」
オラージュ「? さっき、見かけたが……まさか、」

傷を治すために聖力を使おうとしないソフィアの傷だらけな顔は、自嘲気味に笑う。

ソフィア「オラージュ、彼と一緒に人間界に行きなさい……」



想いだけでは、羽ばたく事は出来ない。



ソフィア「魔王と裏で繋がっているフィフスセクターを彼等の手で潰して貰えたら、それほど気楽な事はないわ。」


だから勝利の女神からのプレゼント。



ソフィア「……私は目の前の敵を倒す事に集中したいの。だからオラージュ、貴女に頼むわ。」



想いと強さが両方あったら、闇色の空模様を変えられるはず。



オラージュ「……すぐ戻ってくる、アルモニを連れてくるからっ……だから、」


ソフィアの祈りは届いた、けれど。

言葉の続きは、嫌な想像が邪魔をして声にならない。


——どうかあの子が勝利を手に入れた時、貴女の隣で笑えますよう。——


オラージュは祈りながら、駆けだす。


* to be continued... *