二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*71話更新,企画実施中 ( No.663 )
日時: 2012/08/26 15:06
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

第72話 硝子の槍

歌音「化身を出すには、力を前に出す事が必要だったのね。」

円堂の説明を少し聞いてから歌音がそう言うと、成程、とベンチのメンバーは頷く。

フィールドでは、再び三国がGKのユニフォームを着ていた。化身が出た事で勢いづいた雷門イレブンの表情は明るい。

そしてボールを受け取ったネガティブな速水は、やってみなくちゃ分からないと、ドリブル技“ゼロヨン”を披露した。

そのボールが剣城は渡り、デスドロップで雷門は1点を返し、2−3。

水鳥「いよっしゃあ!!」

盛り上がる会場。これならいける、と歌音が笑みを浮かべた時だった。

鳴り始める、円堂の携帯。

円堂「?」
音無「もしかして、美咲ちゃん……?」

歌音は一転して、顔を歪ませる。

天馬の化身が出る前にどこかへ行ってしまった美咲を追いかけた彼女は、何も見つけられず戻って来たのだ。

円堂「もしもし、」
橘『あっ、監督!? あたし家に帰らなきゃいけない用事が出来ちゃったんで! それじゃあ失礼しますっ!!』
円堂「え、橘!?」

歌音「……」

家に帰ったらしい、と音無に伝える円堂を横眼で見ながら、歌音は眉を寄せた。

歌音(超能力か何か持ってるのかしら……なんてね。)

あの時、電話をしていた訳でもないのに駆けだした彼女を思い出して、口角を上げた。



バリスト「ククッ、成程お前が噂の技を盗む天使か。」
アルモニ「人聞きが悪いなぁ、せめてコピー天使にしてくれない?」

悪魔の向けた視線の先には、空中に浮かぶ——否、悪魔の作った壁を燃やした炎。

アルモニ「タイムラグコピー。フラムの地獄炎を使わせてもらったよ。」
バリスト「キキッ、あいつの火力は半端無かったからな……で、お前は俺を倒す気か?」

勿論、と答えた直後、アルモニは悪魔に突進していった。あの槍を手にして。

私はとりあえず傍観する事に決めた。私の拘束具ではあの悪魔の武器にやられてしまうし……ダメージも悔しいけど軽くない。

それに、あの槍はきっとアルモニに力を貸してくれる——。


「キィインッ」
バリスト「カッ!」
アルモニ「——くっ、」

思わず目を見開いた。

彼女、いきなり本気だわ……見えない敵の得物エモノを、槍で受け止めた。あれは、コピーする気ね。

アルモニ「あたしっ、全然技を使えなかった……」
バリスト「?」
アルモニ「オラージュは雷、クローチェは金……それなのにあたしは何も出来なかった!!」

同じように透明になったアルモニの槍に、悪魔が驚いて一歩後ずさる。

アルモニ「だけど、負けたくないってずっと思ってた! ……強くなれるって、信じてくれた人がいたからっ。」

アルモニの得意とする戦法は、相手の技をコピーして返すという天使としては異例の物。

彼女の負けたくないという強い想いが、自分の実力を超えた技をも出せるようになった……最初見た時は本当驚いたわ。

アルモニ「あたしが天使になった理由はただ1つ、自分を信じてくれる天使の皆を守りたかった、ただそれだけっ!!」

アルモニは槍から手を離し、一瞬目を閉じてから真剣な表情で悪魔を睨む。

コピーしたのね、見えない槍をコントロールする相手の戦法を。

見えない槍同士が2人の間で火花を散らせる。互角だわ、アルモニがここまで集中している姿を見るのは初めて。

——しかし先に動いたのは、悪魔だった。

突然槍を手で掴み、それをアルモニの体めがけて——。

アルモニ「!!」

驚異のスピードで、空中でやっていた時は狙わなかった首を狙われた。アルモニの集中力は切れているのに、あれは……!!

バリスト「!!」


「キイインッ……」


響いた音に目を開くと、悪魔の槍がパラパラと砕けていた。

アルモニ「えっ…? あたし、今何も……」
ソフィア「……あの槍は、アルモニを守ってくれるのね。」

アルモニの槍の先が、悪魔の槍を砕いた。

守られた彼女は、改めて覚悟を決めたのか槍をもって悪魔と距離をとる。

悪魔は散った硝子のカケラが消えていくのを見て、笑みをこぼした。全く、こんなに不気味さを極めた悪魔なんて初めてよ。

バリスト「ククッ、少しはやってくれるようだな……」
アルモニ「黙って。」

雰囲気の変わった2人。悪魔は銃を作り出し、アルモニに向ける。彼女はそれを見て走り出した。

アルモニは槍で銃弾を防ぎながら、悪魔に近付いて行く。あの銃弾を受けてひびの入る気配すらない槍……か。

アルモニ「桜花嵐オウカラン!!」

槍が繰り出せる必殺技。右手で回された槍から、激しい風と敵を囲む桜の花弁が吹き荒れた。

……やっぱりあの槍は、アルモニの憧れたフローラ・ヴィエルジェの武器だったのね。だから、アルモニを守る様に動く。

バリスト「カッ、これは良い必殺技だがな、」

コートが切り刻まれて、嵐の収まった後に姿を現したのは体の表面を自らの硝子で覆った悪魔の姿。

一部欠けたり、ひびが入ったりしているけど……あまり効いてないわ。

アルモニ「それならっ……!」
バリスト「ケケッ、お前自身と俺との差は、大きいんだぜ……?」
アルモニ「タイムラグコピー!」

相手の蹴りを槍で上手くあしらい、そしてもう一度“桜花嵐”を発動させながらアルモニが叫ぶ。

アルモニ「地獄炎っ!!」
バリスト「!!!?」
ソフィア「! 槍の必殺技とあのガラスを溶かせる地獄炎のコンボ……」

地獄炎は壁を溶かした炎が嵐の風に乗って悪魔を包む。これなら悪魔のガラスを溶かして本体までダメージを与えられる……!!

そしてアルモニの読み通り、悪魔はダメージを受けてよろめいた……のに。

バリスト「カカカカカカカッ、ここまでやってくれるか! おもしろい……だが!」

にたりと笑う悪魔。なぜ……ボロボロなのに、嫌な予感がしてならないの。

アルモニも嫌な予感を感じたのか、数メートルの距離をとる。

バリスト「俺はこれでも、トップ3には入る悪魔なんだぜ……?」

直後。


ピシッ……


バリスト「カカ、俺の全力を込めたブーメランでその程度か。遠距離からそこまで硬度を上げるって相当の手練だな。」

あの槍が、元の薄桃色に戻っていく。そして、静かに、真っ二つに割れていった。

アルモニ「!!!?」

アルモニは砕けた槍を見、そして悪魔を睨む。その様子を見て悪魔はにやりと笑って——……。

ソフィア「!! アルモニ、気をつけて!!」
バリスト「キキッ、言っただろう……?お前と俺との差は、大きいってな!!!」

悪魔が姿を消した。お願いっ……間にあって!!

アルモニ「——!!」
バリスト「ゲームオーバー、ククッ、これで俺の任務は終了だ。」

悪魔の魔力のこもった長い爪は、アルモニを背中から突き刺した。私のチェーンのスピードでは、悪魔に届かず——。

ふらっ、と倒れたアルモニは、何が起きたのかまだ認識できていない。

バリスト「ククッ、こんな感じでどう? 天使長様?」
ソフィア「……もう一度聞くわ、何が目的なの!」

睨んでも、返ってくるのは見下したような笑顔。

バリスト「ケケッ、時間稼ぎさ♪」
ソフィア「!?」

時間……稼ぎ?