二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 世界への羽ばたき!『イナズ ( No.16 )
日時: 2011/09/11 20:50
名前: 携帯しずく ◆UaO7kZlnMA (ID: Qn90BKnn)
参照: 後で改行します←脱字とかごじ&よみずらくてすいませんorz

男性教諭を合図に、留学生が教室に入ってくる。秋の言葉通り、少女だった。
肩にかかる程度の天然パーマ気味の金髪に白い肌。小さな桃色の唇、耳には羽の形をしたイヤリング。意志が強そうな茶色の瞳は、長い睫毛で縁取られていた。背はあまり高くないが、欧米人であるためか、蓮や秋よりもやや年上に見える。着ているものは雷門とは違った制服で、胸に校章が刺繍された白いブラウスにリボン型の赤いネクタイ、膝を隠すほどの長い赤と黒のチェック柄のスカート。赤いソックス。靴だけは、雷門生と同じ黒の革靴だった。可愛い、と言うよりも大人びた印象の少女だ。彼女を見た男子たちから一斉に溜め息が漏れるが、蓮はその中に入っていない。留学生に興味はないらしく、ぼうっと窓の外に視線を投げ掛けていた。

「オールコットさん、こちらへ来てください」

男性教諭(英語科)に促され、リサは髪を揺らしながら教壇に上がった。生徒たちの視線がリサに集中する。リサは顔付きこそそのままだが、しきりに髪をいじっていた。やがて男性教諭は、教卓がある列の真ん中にいる秋に目をやり、

「あ、木野さん。オールコットさんに通訳してあげて」

その瞬間、クラスの大半以上はお前英語の教師だろ!?と突っ込んだが、秋ははい、と嫌な顔もせずに受諾した。席から立ち上がると、教壇の上のリサに歩み寄り、にこやかに笑いかける。
「リサ、久しぶりね。元気だった?」

秋の淀みない英語に、クラスから軽いどよめきが起こった。と同時に疑問符も浮かんだ。英語が理解できる蓮は、秋が再開の挨拶をしたことから、二人がかなり前から知り合いであったことを察していた。へえ、知り合いなんだ程度にしか気にしていなかった。

「ええ、これからよろしくね」

リサも笑いながら、英語で返し、秋がそれをみんなに通訳。みんなもよろしくー、や仲良くしようね、と日本語で話しかけ、リサはみなに微笑みかけた。
と、ここでと男性教諭が割り込んでくる。

「彼女の紹介をします」

やっとかよ、と言わんばかりに呆れながらも、生徒たちは男性教諭に視線を向けた。男性教諭は、満足そうに頷き、説明を始める。

「彼女は、リサルダ・オールコットさん。三日前に、アメリカから来たばかりです。この雷門中に二週間程短期留学することになりました。ただ、彼女は日本語がほとんどできませんので、彼女の知り合いの木野さんに通訳をお願いしています」

その担任の日本語を、秋が同時通訳してリサに伝えていた。英語科の担任より、秋の方がすごいと蓮を含む大半の生徒は感じていた。
「では、そろそろオールコットさんに自己紹介してもらいましょうか」

改めてリサに好奇の眼差しが注がれる。やや戸惑い気味のリサに自己紹介して、と秋が英語で伝える。リサはそれを聞いて真顔に戻った。わかったわ、と中学二年生でもわかる範囲の英語で答えた。

「みなさん、こんにちは」
リサは落ち着いた声音で、挨拶をした。英語ではあるが、「こんにちは」くらいは通じるらしい。生徒たちは笑顔で、ハロー、ヘイ、コンニチハと返す。少しでも英語が通じて安心したリサは、口許を綻ばす。生徒たちも、歓迎の意を示すように笑った。それを見たリサは、先程よりも柔らかな表情で、

「私は、リサルダ・オールコットと言います。アメリカではみんなに、"リサ"と呼ばれていました。よろしく」

自己紹介をした。リサちゃんか。リサなら呼びやすいよね。リサ姉さんに罵られてえ。生徒たちはそんな声をあげ、ようこそ日本に! 仲良くしようね! と明るく返事をした。

「あ、そうだ! 私、リサちゃんに質問したいことがあるの!」

女子生徒の一人がそんなことを言って、私も俺もとクラス中が盛り上がり始める。男性教諭も観念したように「まあ一時間目は英語ですし、構いませんよ」とお許しが出た。秋が、即座に翻訳して、質問をしていいかリサに確認をとると、リサは承諾した旨を英語で話した。そして、片手を挙げる。

「じゃあ、私に質問がある人は手を挙げてねって言っているわ」

秋が言うと、さっき質問したいと言っていた女子生徒が腕を伸ばした。秋がその女子生徒を指名すると、女子生徒は席から立ち、

「ねえ、何か知っている日本語はある?」

秋による通訳を聞き、リサは首を縦に振った。

「ええ、あるわ。今日、先生に連れてってもらった場所で素敵な日本語を覚えたの」

秋が訳したその返事で、女子生徒の目が輝いた。興味津々でリサに頼む。

「ねえ、言って?」
「いいわよ」

リサは二つ返事で了解した。わあ、と喜ぶ女子生徒とわくわくする生徒たち。蓮もようやく視線を前に戻した。
リサはクラスメイトの視線を一身に浴びながら——
何故かスカートの裾を手でつまみ、頭を下げて、腰を低くしてお辞儀をする。どこかの舞踏会の挨拶のようだが、日本語と結び付かない。訳がわからず呆然とする生徒たちをよそに、リサはすうっと息を吸い込むと、日本語で叫んだ。

「オカエリナサイマセ、ゴシュジンサマ!」

〜つづく〜