二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【短編・シリーズ物など】刹那的蜃気楼【取り扱い】 ( No.1 )
日時: 2012/05/27 22:13
名前: 帆波 (ID: cA.2PgLu)

長文で【初心者】3のお題 - girls
めだかボックス、球磨川禊ver.


0.1 指から伝わる温度が心地よくて

「『あれ』『こんな所にいたんだね、渚ちゃん』『一緒に帰ろう?』」

そう言って笑った彼__球磨川禊とは、ひょんな事から知り合った。
一度、私、財部渚は人間関係の事で目安箱に投書した事がある。その時の担当が球磨川先輩だったのだ。
依頼が終わっても、たまに会うようになって、今ではどんな形であれ、毎日一言は会話を交わす関係になった。まあ、簡潔にいうと友達以上恋人未満のような関係で。

「あっ、球磨川先輩。もうちょっと待ってくれますか?まだ少し、図書委員の仕事が残っているので」
「『うん、わかったよ』」

その一言だけで、たかが一緒に帰るだけなのに、待っていてくれる球磨川先輩は優しいと思う。あのマニュフェスト以来、球磨川先輩は怖い人とばかり思っていたけれど、話してみると意外と面白い、良い人だとわかった。
五分ほど経って、本棚のチェックを終えると、机の上に置いておいた鞄を手に取る。

「お待たせしました。球磨川先輩、帰りましょうか」

話しかけると球磨川先輩はうん、とだけ言って歩き出す。

帰り道、色んな話をした。
今話題の芸能人の話、ゲームの話、時々エロ本の話。私は基本、流行はチェックするし、アニメやゲームもするので大抵の話題にはついていける。流石にエロ本の話にはついていけなかったけど。

「『__ねえ、』『箱舟駅の近くに美味しいケーキ屋さんが出来たの、知ってる?』」
「いえ、初耳です。それにしてもケーキ屋さん、ですかぁ」

行ってみたいな、と何に期待したわけでもないが試しに呟いてみる。
その時、球磨川先輩の口元が愉快そうに歪んだ事に、私は気づかなかった。

「『じゃあ、今度行ってみる?』『今頷いてくれれば、おまけとして先輩である僕が奢ってあげよう』『さあ、どうする?』」
「…え?あ、良いんですか?本当の本当に?」
「『もちろん!』『男に二言はないぜ、…で』『行く?行かない?』
「それじゃあ、お言葉に甘えて」

そう返すと上機嫌になったのか、私の手を握って激しく上下に動かして握手もどきをする。本人は気にしていないようだが、私にとって男の人に手を握られるなんて滅多にない事で。程よく冷たい、ひんやりとした温度が何だか安心する。手とかが冷たい人に限って、優しかったりするというのは本当のようだ。
…あー、もう。一人で何意識してんだろ、くだんない。
心ではそう思っても、顔が仄かに熱くなっていくのがわかる。

「『どうしたの?渚ちゃん』『顔が赤いけど、微熱?』」
「い、いえ。別に、そういうわけじゃ、ないです」

大丈夫ですから、と付け足す。
後になって、恥ずかしくなってくるものだから、今日は計画をたてただけで終わり、その後私達は特に寄り道もせずに帰った。




「ただいまー」
「(ちっ、帰ってきやがった)おかえりー、姉さん」
「こらこら依真ちゃん、いくら本音と建前の線引きをしてるとはいえ、お姉ちゃん傷つくよ?」
「うっ…、煩いこの馬鹿姉!今何時だと思ってんだ!?7時だよ、しーちーじ!今日は早く帰ってこいって言っただろーが!」
「ごめーん、委員の仕事がさぁ。…さーて、早く晩御飯作ろーか。今日は青椒肉絲チンジャオロースにでもしよーかなー」
「なっ…!私がピーマン嫌いな事知っててやってんなテメー!妹相手に嫌味な事するな!」
「ふふふ、依真ちゃんったら線引きも忘れてるよ?…まあ、さっきのは冗談だよ。麻婆豆腐でもしようか」
「(あ、やっぱり中華なのは変えないんだ…)」