二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 短編集-花闇-【色々雑食】 ( No.14 )
日時: 2013/07/01 23:09
名前: 帆波 (ID: K84EbAPL)

・花宮妹なヒロイン


「真実ちゃんってばピュアぁ、かっわいー!」
「ちょ、ちょっと、やめてよこんなトコで……。恥ずかしいよ」
「恥ずかしがってる所もかわいーよ、真実たん!」
「うわぁああ…、”たん”とか本当に恥ずかしいからやめてぇ……、本当やめて……」




ほんっとやめて欲しいったらないよね。皆わたしをマスコットか何かに勘違いしてる?大して仲もよくないくせに、とりあえずわたしを褒めちぎればいいと思ってる?そうすれば自分も輪に入れるって思った?……筋金入りのバカ共かよ。そういう集団意識って吐き気するなぁ。それでもわたしって優等生だから笑顔振りまいて皆をいい気分にさせてあげるんだ。まあ、卒業までの辛抱だよ。どーせ高校じゃばらばらになるんだからさ。三年間一緒にいたマスコットから裏切られるなんて、……あはっ。滑稽にもほどがあるわぁ!愚者の才能あるんじゃないかな?


「真実ちゃん一緒にかーえろっ」
「うわっ、…もぅ、後ろから抱きつくのはなしっていったじゃない。毎回びっくりするんだからね?」
「あははー、ごめんごめん。ほら、かえろっ?」


後ろから抱きついたクラスメイトにぷう、と頬を膨らませて拗ねたふりをすれば、クラスメイトの彼女はころっと騙されてくれる。わたしは立場上、よく弄られるのだが……後ろから抱きつくのはぎりぎり許容範囲内というところ。あまりべたべた触れないでほしい。鬱陶しいから。
まあそんなことは表にださず、上辺だけはにこにこと笑っていればそれで世の中渡っていける。ほら、この子だってわたしの上辺しかみてない。「ねぇ、あの人かっこよくない?」…、今頃の女子は通行人にまで手をだすの?生憎、わたしは一目惚れとかは信じない主義だから、初対面の人に媚を売るような、…そう。ナンパとか、逆ナンとかよくわからない。適当にあしらうが、それでも「かっこいいんだって!ほら、あそこ!」と主張してやまないクラスメイトに、渋々その指差す方向を見る。
高身長。そしてわたしと同色、紫がかった黒のショートの髪。そして何故か見慣れた制服。——あっれー、見覚えあるんだけど、誰なんだろー。

……ええい、こうなれば気付かれる前に退散するに限る。


「あ、ほんとだぁ。ああいう人憧れるなぁ、……あっ。あの小物かわいい!見に行こうよ!」
「わ、ネコじゃん!さっすが真実ちゃん。いいセンスしてる〜!」


今度こそ適当に相づちをうち、すぐさま話題を変える。女子中学生なんてものは、興味の対象がすぐに変わってしまうものだ。違う話題を提示してやれば今までのなんかほっぽって、そっちに飛びつく。バカだなぁ、と普段なら思う所だが、今ばかりはその移り気な性質が役に立った。クラスメイトは目を光らせて雑貨屋さんに足を進める。


「あれ、真実?」


ぎくり。自分ではない誰かがわたしの名前を呼んだのを聞いて、クラスメイトの足も止まる。文字通りロボットのようにぎくしゃくと振り向けば、少し驚いた表情をした男。さっきまで話題にあがっていた男である。クラスメイトは「え、なになに?もしかして知り合いだった!?」と余計な詮索をいれてくる。
うわぁ…、こういうのだけは避けたかったのに…。うげぇとなったわたしを他所に、男はわたしに近づいた。


「此処で会うなんて珍しいよな、そっちの子は友達?」
「あ、はは……、……こんなトコで何してるの?お兄ちゃん。部活は?」
「今日は休み。先生達の会議があるからってさ。…いや、それにしてもこんな所で会うなんてな」


男……もといお兄ちゃんはわたしに営業スマイルともとれる笑顔をむけてきた。なにそれ、やめてほしい。横ではクラスメイトさんが一人ではしゃいでるし。


「え、うそ、真実ちゃんのお兄さん!?えー、まじでかっこいいじゃん!やっぱり遺伝なんだぁ〜!!」
「真実の友達?初めまして、花宮真です。うちの妹、迷惑とかかけてない?」
「いやっ、そんなことないですよ!むしろこっちがまとわりついてるって感じでぇ、あはは〜」


…クラスメイトよ、わたしの兄と分かった途端「接点発見!」とばかりに媚を売るのはやめてくれないか。怖いから(主にうちの兄の目が)。
「そうなんだ、いつも仲良くしてくれてるみたいで、ありがとう」うわぁあ、お兄ちゃんも会話にのんじゃねぇよぉ…。営業スマイル(目が据わってる方)とでれでれスマイルとかまじで最悪な組み合わせだからさぁ……。


「あ、お兄さん真実ちゃんと帰ります?滅多にあわないんですよね?兄妹水入らずでどうぞ!じゃあねー、真実ちゃん!」
「え、あ、うん。ばいばい」


うわぁあああ、もういらんとこで気ぃつかわなくていいよぉおお!!今は誰でもいいからこいつと二人にしないで、「さーて真実。邪魔者はいなくなったし、帰るか。兄妹”水入らず”で」
…もうこいついやだぁ……。



「おにぃちゃぁん、とりあえず手ぇ離してくれませんかね……」
「やだよ、離したらお前逃げるだろ?絶対離さねー」


クラスメイトと別れたわたしとお兄ちゃんは絶賛帰宅中、なのだが……。お兄ちゃんが何故か手首をつかまれたまま離してくれない。兄は流石バスケをしているということで手が大きい(わたしが周りと比べてかなり小さい、ということもあり余計に)。だから少し力をいれているだけのつもりなのだろうが…、十分痛い。


「いや、そうはいいましても手首いたい、…っぁ、い、ったいなぁ!なにす、ん……」


どん、と背中に衝撃。周りには人がいない、閑静な住宅街のコンクリート塀に追い込まれる。いわゆる壁ドンってやつ?……あれ、結構やばくないかな?


「もっと痛くしてやろうか?」


不敵に笑う兄に対して冷や汗が流れる。掴まれていた手首は掴むままでは飽き足らず、ひねりあげてそのままコンクリートに縫い付けられていた。にやりと歪められた口元にわたしは引き笑いしか起こらない。
近親相姦とかまじシャレになんないよお兄ちゃん……。やめて、の意をこめて睨むと、特徴的な笑い声が聞こえてずいいとお兄ちゃんの顔が間近にくる。


「ふはっ、そんな目していいのかよ?…逆効果だぜ、それ」


小さく、吐息混じりの声で囁かれて不覚にもびく、と体が跳ねた。その生理的反応にもう一度笑ってから、お兄ちゃんはわたしから離れた。


「こんな所じゃなんだしなぁ、早く変えろうぜ。ほら」


まるで今までの行為がなかったかのようにいつも通りの声色で言って、そして手を差し出した。突き返されるなんて思っていない、絶対的自信のもとに行われているこの行動に反発したい気はあるが、やはり兄の前では叶わないことである。
差し出された手をとって、せめてもの腹いせに思いっきり強く手を握ってやる。右手17、左手18のわたしなんかの握力じゃ痛くもかゆくもないのだろが。…案の定、その抵抗は鼻にかけたような笑いによって空しく終わった。



とある最低兄妹の話

((お前って握力弱いよな。ていうか、全体的に貧弱))
((いや、お兄ちゃんが強過ぎるだけだからね。…あ、地味に握りかえそうとするのはやめて?わたしの手が潰れる))
((潰れれば?そしたら俺が介抱してやるよ))
((加害者が介抱とか……、どんだけ病んでんの?))
((本気で潰そうかなって思うくらいには))
((うわぁ…、危ない人だぁ……))




  end



ヒロインちゃんのちょっとした設定。
名前→花宮 真実/はなみや まみ
花宮真の一つ下の妹。花宮に似てかなり歪んだ思考をもった中学二年生(ちなみにこの短編の設定ではまこたんは中三)。けど兄には敵わない。むしろ怖い。でも好き(兄として)。最近兄が近親相姦に走っている気がしてならない。まこたんが花宮”真”で名前が名前なのにめっちゃゲスいから、どうせなら妹も、と思って真実(しんじつ)でまみにしてみた。この名前つけた親御さんまじ報われないね。