二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【短編・シリーズ物など】刹那的蜃気楼【取り扱い】 ( No.5 )
- 日時: 2011/10/31 15:09
- 名前: 帆波 (ID: gaoI7MOT)
「ご主人様」
わたくしのことをそう呼ぶのは、目の前にいる女性。
艶やかな紫色の髪に、薄紫の瞳。黒のワンピースを着ている女性は、確かにわたくしのことを、"ご主人様"と呼びました。
このような方は存じ上げない上に、ご主人様と呼ばれる理由が思い当たりません。
幸い、今わたくしが居る場所は休憩室で、自分一人と手持ちポケモン達しか居いないのですが、反対に言えばわたくしとポケモンだけであったはずの休憩室に、音もなくどうやって入ってきたのか謎、ということでしょうか。
「ご主人様、無視というのは辛いので、何か返事を」
「突然で申し訳ありませんが、貴女様は何方でいらっしゃいますか?それに、何処から入ってきたのでしょう」
「…?何をいいますか、ご主人様。…まさか、私のことがおわかりにならない、とか」
そのまさかです、そう返せば相手の女性は些か顔色を悪くしました。
そのような顔をされては心が痛むのですが、この女性に見覚えがないのもまた事実。どうしようもないのです。
「それより、先程の質問にお答えくださいまし。貴女様は、何方で、どこから入ってこられたのです?」
「…嗚呼、この姿ではわかるはずもないですね。それと、私は入ってきてなどおりません。私は、最初からこの部屋に居ました」
「ですから、貴女は誰だと、」
「私は、貴方のポケモン。…詳しく言えば、貴方の手持ちの中でも特に可愛がってくださった、シャンデラ。でしょうか」
女性の口からでた言葉に、わたくしは固まった。
確かに、この女性はシャンデラと同じ色の髪や瞳、服を着ていますが、それでもポケモンが人間になるなど到底ありえないことで。
「このシャンデラ、もっとご主人様のお役にたちたいと思い、気付けば…、ニンゲンの姿になっていたのです」
「そんな、の、信じられるわけないでしょう」
「…私は今カナシイです。私がヒトモシの頃から可愛がってくださったご主人様が、私の存在を否定なさるのですから。…私をゲットしたのは、あるお昼過ぎの時。…嗚呼、天気は曇りでしたね。ゲットしたての頃は、私も警戒して反発したものです。今となっては懐かしい。ノボリを燃やそうとしたことも御座いました。…そういえば、ヒトモシであった私の火を、クダリ様が消そうした時がありましたね。あの時は非常に怖かったです。死ぬかと思いました。ですが、ご主人様が助けてくださった!その時の感謝の心は今だに残っております!」
ぺらぺらぺらぺら、マシンガントークをしている女性。信じられないのですが、彼女の言っている内容は全て事実で、わたくしとクダリしか知らないこと。
言い終わった彼女は、信じていただけましたか?と少し不安げな表情で聞いてきた。
嗚呼、そんな顔をしたら、
「信じないわけには、いきませんね」
「…それでは、私が貴方のシャンデラだと信じていただけるのですか!?」
「ええ、あんな事まで言われてしまったら、信じざるをえないですから」
信じる、そう言っただけな彼女は__シャンデラは、とても嬉しそうに微笑む。
その笑顔につられて、わたくしの頬も、少し緩みました。
「あ、今ご主人様、笑いましたね!滅多に笑わないのに、」
「…わたくしだって、笑うことくらいあります。人間なのですから」
「そう、でしたね。でも、本当にご主人様は笑うことが少ないのです。だから、珍しくて、嬉しくて。…でも、やっぱりご主人様は無表情の方が似合うのです」
無表情の方が似合う、それは褒め言葉なのか、解りませんが一応褒め言葉として受け取っておきます。
「だって、クダリ様はいつも笑顔ですから。無表情はご主人様の専売特許です。__それに、ご主人様が無表情でも、私には解ります。ご主人様が何を考えているか、怒っているのか嬉しんでいるのか、私には解るので、ご主人様は無表情でいいんです。私とクダリ様だけが解れば、それでいい」
笑顔でそう言い放った彼女は、少し歪んでみえた。
けれど、それが彼女なりの好意の表し方なのなら、それはそれでありだと、わたくしは思います。
____________
またまたノボリさん夢。
そして、ノボリさんの手持ちのシャンデラちゃん擬人化。擬人化は始めてなんですけどねー、結構書きやすかったです。