二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【青の祓魔師】 〜漆黒の記憶〜 更新再開!!!!!! ( No.515 )
日時: 2012/10/04 20:05
名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode


  第17話「紅く、青い・・・」


 ———ドドドドドッ!!
 小雨が降る中、燐、愛妙、葵の三人は森の中を猛ダッシュで走っていた。背後には巨大な・・・雨大蛇が、三人のあとを追っていたからである。
 愛妙と葵は訳も分からず走っていたため、とうとう愛妙が口を開いた。

 「・・・燐ー!! これは一体どういうことぉー!?」
 「悪ぃ!! 実は、かくかくしかじかで・・・」
 「なるほど。私たちを捜していたら雨大蛇のしっぽを踏んじゃって、で雨が降って来ちゃったから巨大化して追いかけられている訳ね!」
 「そうだ。さすが愛妙!」
 「ていうか、よくそれで分かったわね!? 蔀さん」

 隣でふたりの会話を聞いていた葵は驚いていた。
 燐は後ろを振り向くが、

 「まだアイツ追ってくるぞ!!」
 「しょうがない・・・3つに分かれるわよ! アイツは私が引きつけておくから、ふたりは別々の方向に逃げて!」
 「分かった!」「分かりました!」

 ふたりは頷くと、それぞれ別の方向へと分かれる。

 それを見た葵は、その場でストップし、後ろでもの凄いスピードを出して追ってくる雨大蛇に向き直る。
 「さて、いくわよ、『ホーリー』!」

 すると葵の服のフリルの間に隠れて見えなかったが、腰の辺りから声がした。腰には剣が刺してあり、その剣がしゃべり出した。

 『おぉ〜! やっと出番かよ。待ってたぜぇ〜! ゲッ、コイツまじぱねぇ〜。めちゃくちゃでかくね? もしかしてこれ殺んの? うわぁ〜まじやる気無くすわぁ〜。テンション、ガタ落ち? もうきつく———』

 しゃべり続ける魔剣———『ホーリー』の言葉を遮る。

 「めんどくさいよ、あんた。あと、話長すぎ。ドンだけしゃべれば気が済むのよ」
 『おっと、ごめんよハニー。んで? このでっかい雨大蛇を倒すわけ?』
 「そう、いくわよ!」
 『オッケー』

 葵は剣を構える。雨大蛇はもう、すぐそこまで迫ってきていた。
 『よし、いくぜぇ〜〜!』
 「聖斬・・・」

 そう言いながら剣を頭上にあげ、

 「———破ッ!!」

 真下に下ろしながら、斬撃を100発撃ち続ける。が、しかし、

 「えっ!?」

 雨大蛇は全く別の方向にいた。葵など見向きもせず、在る一定の方向へと進み続けている。そこにいたのは、

 「キャアアァァァ!!」

 愛妙がいた。雨大蛇は愛妙の方へとスピードを緩めることなく、進み続ける。

 「くそッ!」

 燐はそう言いながら愛妙と雨大蛇が行った方へと走り出した。

 『オイオイなんだよ。意味分かんねーぜ? 何がどうなってん———』
 「チッ!」

 葵は舌打ちをし、しゃべり続けるホーリーを無視しながら後を追おうとする。

 しかし、その葵の行く手を阻むように、無数の何かが飛んできた。それは、蜂だった。しかしその蜂を見て、葵の顔色が変わる。震える声で葵は呟いた。

 「こいつは・・・雷蜂(ライトクイーン)!?」

 雷蜂は初級の悪魔だ。普段は特に危険性はなく、普通の蜂と思われることが多い。
 しかし、雷雲が現れると凶暴化し、針で人を刺すようになる。針には毒があり、刺されると電気を受けたようなマヒに侵される。

 「くそッ。こいつら、凶暴化してる・・・!!」

 凶暴化すると、体が電気に包まれ、火花を放っているようになる。今、まさにその状態だった。

 (おかしい・・・。雷雲は出ていないはずなのに)

 空には雨雲は在るが、雷雲はどこにも見あたらなかった。すると、

 「くっ!!」

 ブウウゥゥン! と羽音を立て、無数の雷蜂が葵に襲いかかってきた・・・!


   ◇◇◇◇◇


 「はあっ、はあ、はあっ!」

 先ほどよりも日が沈み、しかも雨雲が立ちこめているこの天気の中、日がほとんど当たっていない森の中を、愛妙は夢中で走っていた。

 「はあっはあっ!!」

 後ろを振り返ると、巨大な雨大蛇がすぐそこまで迫ってきていた。

 夢中で走る中、愛妙はある感覚を感じていた。

 (———前にもこんなことがあったような気がする・・・)

 あの時も追いかけられていて、走って、走って、・・・たくさん走って。足から血が出るくらいに。そして、あの時も確か———

 (———雨が降っていた)

 ———ズキン。と頭に鈍い痛みが走る。痛みは思い出そうとする度に、どんどん大きくなっている。

 (あ、れ? 『あの時』っていつ? いつ、そんなことがあったっけ?)

 失った記憶の何かが思い出せるかもしれない。けれど思い出そうとする度に頭痛がする。

 ———ズキン!

 「痛ッ!」

 あまりの激痛に愛妙はその場に座り込む。

 (痛い。頭が痛い! ・・・・・・これは、何?)

 頭の中に浮かんできたのは断片的な映像。そこには何人か、人が映っている。何か手がかりになるものかもしれない。けれど、その映像はところどころ、赤く染まっていてよく見えない。
 この赤、この紅は・・・

 「・・・血? ウッ!」

 激しい痛みが走った。頭も痛いが、体に何か巻き付けられているような圧迫感があった。

 よく見ると、愛妙はいつの間にか宙に浮いていた。否、雨大蛇に体を縛られ、持ち上げられていたのだ。

 (どうしよう・・・。体が、・・・全然動かない)

 体は全く身動きがとれず。足も地面から離れ、手が縛られている状態なので内もできないでいた。


 その時、なつかしい、よく耳に慣れた声が愛妙の名を呼んだ。

 「愛妙ぁぁーーー!!!」

 下を見ると、———青い、青い。吸い込まれそうなくらいの美しさで輝いている青い炎を身に纏った、幼なじみの少年———
 ———燐の姿がそこにはあった。
   

  〆 10月4日