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第５話 「目覚め」

燐は寮への帰り道、いつもより早足で帰っていた。
—————今日の学校や塾の授業はいつもより耳に入らなかった。
授業中には何度も注意され、塾ではしえみに
「大丈夫？」
なんて聞かれたほどだった。

どうしても、どうしても、気になってしょうがなかった。
あの、

———————桜色の髪の美しい少女が———————

そう思うとなぜか、いつのまにか、走って帰っていた。

　　　　　 ◇　◇　◇　◇　◇

それは雪男も同じだった。
授業に身が入らず、先生たちに「大丈夫？めずらしいね。」と、そう言われたほどだった。

気になって、気になってしょうがない。

———————あの少女のことが。

早足で帰っていたのがいつのまにか走っており、寮のドアの前についた。
寮の前のドアにつくと、燐とばったりあった。

「兄さん。僕、あの子を見たことがあるような気がするんだ。」
雪男は部屋へ向かう途中、突然そう言った。
「・・・・実は・・・・・俺もなんだ。」
燐はそう答え、部屋のドアを開けた。

「おやぁ、お早いお帰りですね☆」
メフィストは手に持っていた特注品のピンク色の３ＤＳを閉じた。
メフィストが座っていた横にはまだ目覚めていない様子の少女が雪男のベットで眠っていた。
「では、少し失礼。見たいドラマがあるので☆」
そう言ってメフィストは部屋を出て行った。
（見たいドラマがあるのなら、録画しておけばいいだろ！！）
雪男はそう思ったが、怒りを抑え、少女のほうへ向き直った。

雪男のベットで眠っていた少女を、燐はじっと見つめていた。
「・・・・・なあ、雪男。昔さ、女の子といっしょに住んでなかったっけ・・・・・。」
燐は突然言い出した。
「あぁ、そう言えば・・・そうだね。それがどうかしたの？」
「いや、顔は思い出せないんだけど・・・。昔、その子と大事な約束をしたようなきがするんだ・・・。」
「・・・・・・桜の木の下で？」
「そう！そうだよ！桜の木の下で約束したんだ！またこの桜を見に来ようって！そして・・・・・あれ？もう一つ約束したんだけど・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
燐は思い出せずにいた。雪男も思い出せずにいたが、朧気に女の子の顔を思いだし、
「そういえば兄さん。その子って、この子と同じピンクの———————桜色の髪じゃなかった？」
「・・・・そうだよ。そして、約束したんだ。いっしょに・・・・・そばにいてやる。って。」
「思い出したよ。兄さん。」「思い出したぞ。雪男。」
二人は同時に言い始めた。
「「その子の名前は、あ——————————
と、言いかけた瞬間、
『グルルルルルルルルアアアアアアアアァァ』
と鬼ゴブリン、子鬼ポブゴブリンが無数に出てきた。
「うわぁ！！悪魔か！？」
鬼ゴブリンたちは燐と雪男には目もくれず、ベットで眠っている少女へ襲いかかろうとしていた。
「兄さん、どうやら悪魔はその子を狙っているみたいだよ。」
そう言いながら、雪男は二丁拳銃を取り出し、悪魔を倒していった。
「ようし。じゃあ、さっさと終わらせるか。」
「兄さん！！」
燐は雪男が止めるのも聞かず、降魔剣———————倶利伽羅を抜き、無数の鬼ゴブリンを倒していった。

しかし、そんなタイミングの悪い時に少女は

———————目覚めた。

少女は目覚めてまだ視界がはっきりしないなか、ある光景を見た。
それは、
メガネをかけた少年が二丁拳銃で、
青い炎をまとった少年が剣で、
悪魔を倒している光景だった。
その光景を見て、少女はなつかしさを感じ、つぶやいた。

「—————りん？ゆきお？」

少女はそう、自分を悪魔から守り、戦っている二人の少年の名を呼んだ。

　〆　１１月２日