二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

わたしとあなた / ぼくときみ ◎一話 ( No.5 )
日時: 2011/10/30 19:54
名前: 兎子. ◆.UAIP8bSDA (ID: Lnsp.uM2)


「……明王さん、」
「よォ……迷子。姉貴、居るかァ?」

 台所で料理を作っていた頃。不意にインターホンが鳴り響いたかと思えば鍵をかけていたはずなのにガチャリと戸の開く音。もしかして母さんが帰ってきたのかな、と思っていたら違った。明王さん、だ。
 久しぶりに、明王さんに会った気がする。明王さん、というのは無論イナズマジャパンのメンバーであの円堂さんと共に優勝したという凄い人で、私の姉の弟——つまりおじさんということになる。私は明王さんの姪ということだ。
 そんな明王さんはあまり母さんには会いに来ないのに、用事でもあったのだろうか。

「嗚呼、母さんなら出かけてますけど」
「へェ……相変わらずかよ」

 がしがしと頭を掻きながら舌打ちをする明王さんに、私は問いかけた。

「どうしたんですか? 珍しい」

 明王さんは小さく黙り、やがて口を開いた。

「別に用事は無いケド……偶には姉貴に顔出した方が良いだろ、」

 そっぽを向いてぼそぼそという明王さんに笑みが零れる。この人は結局は母さんが大事で、だから母さんにほんの時々顔を見せに来てくれるんだ。とはいえ、うちの母さんはふにゃふにゃしてるし、そんな気遣いになんて気が付いてないんだろうけど。
 私は明王さんに座るよう促し、己も椅子に座って再度口を開いた。

「母さん、多分9時までには帰ってきますよ。今日は友達と遊んでるらしいです」
「ふうん……錯夜さくやサン、は?」
「父さんは仕事です。父さんも多分9時までには帰ってくると思いますよ」

 そう答えながら、先程まで作っていた料理へと視線を投げた。ぐつぐつと煮込んでいるのはカレーで、仄かに良い香りが漂ってくる。あ、そうだ、と呟いて私は立ち上がった。

「明王さん、泊まってくんですよね?」

 キラキラした視線を向けると、明王さんは少しだけ気圧されたような呆れたようなよく分からない表情を浮かべて小さく頷いた。明王さんは優しいし私も大好きなおじさんだから泊まってくれるのは嬉しい。とはとは言え、私はそんな子供みたいな年齢では無いけど。

「……そうだ、迷子、」
「?」
「お前まだ、旧姓名乗ってンだろ」
「……ハイ。だって、旧姓は母さんの最初で最後の大切な人の名前ですから」

 旧姓というのは雪原ゆきはらという苗字だ。母さんは、バツイチと言える存在だ。
 最も、籍を入れ結婚式の直前に愛する人を失ったのだ。母さんは今の父さんと結婚しても雪原という苗字にこだわっている。だから私もそれを名乗っている。其れに、今の苗字だったら先輩と被ってしまうから。
 先輩というのは南沢さんのことであり、錯夜という父さんは南沢さんの兄にあたる人なわけで。事実、私は南沢さんの姪ということになる。其れが何だか悔しくて名乗らないというのもあるが。

「ただいまー! あれ、明王が居る!?」
「お帰り、早かったね。カレー、もう完成したよ」

 そんなことを考えていると、母さんが大きな声で喋りながら家へ帰ってきた。くすりと小さく笑み、私は椅子から立ち上がった。





迷子が南沢の姪とか俺得ry
因みに天馬が来る数日前の話だったり違ったり、