二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【リボーンと】月下で交わる二つの橙【BLEACH】 ( No.1 )
- 日時: 2011/12/02 14:58
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)
——————ようやく、平和な世界に戻ってこれたのだと思ったようだ。
しばらくは、闘いから遠い暮らしを遅れると思っていた。
でも、平和とは唐突に断たれるものだと、彼はまだ気付いていなかった——————
「やっと……過去に帰ってこれたんだ」
一階から二回に上がり、自分の部屋にベッドの上に飛び乗った少年が最初に発したのはそういう言葉だった。茶色い、爆発したようにも見えるぼさぼさの髪のその少年は、気の緩みきった顔で窓の奥の遠い空を見つめた。
彼の右手には、二つのリングがはめられていた。一つは、可愛らしいライオンのキャラクターを模したような指輪。もう一つは、中心に一際大きい珠がはまっていて、周りに六色の違う色の宝石がはめこまれている指輪。ふと見たら綺麗だとも感じられるその指輪が、マフィアの後継者の証と気付く者は、果たして何人いるだろうか。
彼、沢田 綱吉には、人には言えないとある悩みがあった。正確には、言ったところで到底信じてくれそうにも無い悩み、だ。
彼は去年、中学一年生まで、普通の『ダメダメな』人生を送ってきた。何をやっても上手くいかず、周りから『ダメツナ』と呼ばれる日々。そんな日に、いきなり家庭教師を名乗る赤ん坊が現れた。彼の名は『リボーン』。しかも、彼はただの家庭教師ではなく一流の殺し屋だと自分で言い放った。
赤ん坊が家庭教師と言うだけでもかなりの悪夢なのだが、沢田の不幸はそんなところで終わらなかった。平和主義の、争いごとなんて絶対にしたくない彼が、いきなりその赤ん坊にマフィアの後継者候補であると宣言された。しかもその組織は世界的にも有名な、超巨大なもので、継承すれば実質的に裏社会を仕切れるほどだ。
だが、臆病者でチキンで、争いが大の嫌いで、心が優しすぎる彼はこれまで一度としてそれについては首を縦に振らなかった。にも関わらず彼は、裏の関係者、六道 骸に命を狙われる羽目になり、XANXUSという男と次のボスにどちらがふさわしいかということで決闘をすることにもなり、しかもその闘いで得た指輪でのせいで未来に行って悪魔のような人間たちとまた命をかける闘いをしないといけなかったりと、相当悲惨な運命をたどっている。
そして今、この瞬間もその運命のスピードは加速していた————。
「オイ、帰って早々寝るな。そんなんだからダメツナって呼ばれるんだぞ」
その声を聞いた彼は、背筋に何か冷たい感覚が走るのを感じた。もはやこの声を聞くだけで冷や汗が出るほど、恐怖が染み付いてしまっていた。
「何だよ! 久々に家に帰ったんだからちょっとぐらい良いだろ!」
「良くねえ。今回の事を正式に九代目に報告するために守護者全集合だ」
「えっ……今日ぐらい皆家族水入らずにさせてあげようよ」
「どうしようもねえバカだな、ツナは。獄寺にそんなことさせたら一日中卒倒するし、クロームとランボには家族いないも同然だし、雲雀は元々来る訳ねーし、了平はとりあえず京子にその順番を譲るだろーし、山本は……来るだろ」
ようやく闘いが終わったから休憩させて欲しいと、訴えるように沢田は反論した。したのだが、理不尽な家庭教師様は断固ダメだと言い張る。しかもその後につらつらと理由を説明した。
だが、沢田にとって突っ込みどころが色々ありすぎて、この後叫び続けて疲れることとなる。
「雲雀さん来ないって分かってるならもう良いじゃん! それに、順番譲るって家族水入らずにそんなの無いだろ! それに、山本が来るの理由になってないし!」
「さすがだな、シリアスなバトル続きでもそういうのはできるんだな」
「うるさい!」
五月蠅いと言われたリボーンは、これ以上抵抗するなら仕方ないと銃を取り出した。途端に沢田の顔つきが変わる。
「待って! 分かった! ちゃんとするから!」
「分かれば良い」
顔から冷や汗を、滝のように吹きださせて彼はそれだけは止めてくれと懇願する。それを見届けた赤ん坊は、わずかに口の端を上げて、ニヤリと笑った後に懐に銃をしまった。
「じゃ、了平とクロームと、来ねーと思うけど雲雀の所には俺が行くから後は任せた。集合場所は……学校だ」
そう言い残して、二頭身のスーツ姿のリボーンは、窓から出て行った。よくそんな所から出ていけるなと、半分呆れて電話の方に向かった。そしてその時に気付いた、絶対学校でやれば嫌でも雲雀が来るということに。
下手したら咬み殺される、そういう恐怖が頭の片隅に居座って離れなかった。でも、このまま何もしないとそれ以上にリボーンが怖い沢田はとりあえず獄寺と山本に電話をかけるために一階に向かった。
〜一時間後〜
「さて、全員揃ったみたいだな」
沢田の通っている並盛中学の応接室に、八人の人間が集まっていた。二人はさっき言っていた通りの沢田とリボーン。そしてまず、銀色の髪の毛の、煙草のような形の発煙式のダイナマイトの着火装置を口に咥えている男子、獄寺 隼人だ。次に、カッターシャツの姿でいる黒髪の、竹刀を持った男子が山本 武。額に傷のある男子が、笹川 了平。牛のような風貌の姿をした幼い子供がランボ。若干頭頂部の髪の毛がパイナップルの葉っぱのようになっている女子がクローム髑髏。そして最後に、学ランを肩にひっかけるようにして、トンファーを持っている男子が雲雀 恭弥。
彼らは皆指に、それぞれ赤、青、黄、緑、藍、紫の宝珠の付いた指輪をはめていた。そしてもう一つ、それぞれ猫、燕と犬、カンガルー、牛、フクロウ、ハリネズミを模した指輪も付いている。これが、ボンゴレファミリー十代目候補の、守護者の面々。
「ところで十代目、一体どういったご用件で?」
一番最初に口を開いたのは、獄寺だった。沢田のことを唯一尊敬の眼差しで見ているのがこの男。ちょっと過大評価気味なところもあるが、いざという時にはとても頼れる。
「えっと、未来のことを報告するってリボーンが……」
「ああ、そのことなんだけどな」
沢田が説明を始めようとするのを、いきなりリボーンが止める。一体何があったのかと、沢田が聞きなおすと、大層困った答えが返ってきた。
「ユニから未来の記憶貰ってるらしいから、やっぱり良いってことになった」
「何だよ! じゃあなんで今集まってんだよ!」
「お前ら、おかしいとは思ってないのか?」
この集会はお開きだとでもいうような内容が彼の口から出たのを聞いて、沢田は声を少し荒げて問いただした。すると、彼は何かおかしなことがこの場にあると言う。
「何がおかしいんだよ?」
「普通雲雀がいる訳ねーだろ」
あっ、という小さい驚きの声が彼の口から洩れた。そういえばそうだと、全員が頷く。そして、その皆が頭を悩ませる理由は、その人自身が言いだした。
「何か物足りないから、咬み殺す相手が欲しかったんだ」
そういやトンファー持ってるな、と山本がポツリと呟いた。洒落にならない、そう、切実な沢田の叫びが校舎内に響いた。