二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リボーンと】月下で交わる二人のオレンジ【BLEACH】 ( No.18 )
日時: 2011/12/23 19:35
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Zqou3CL2)

「更木……剣八?」
「ああ、俺の名前だ」

 いきなり登場したその男に山本は呆気に取られながらその名を反芻した。誤り無くその名を脳裏に刻むために。その反復した言葉が正しいことを指すようにその男は頷く。そういう二人の雰囲気とは裏腹に、一人見当違いの反応を取っている奴がいた。
 先ほどの雰囲気では一切予想できない反応だ。普段の彼を知る者ならば別にどうと言うことは無いのだが、初対面の者が見たならばその違いようは相当なものであり、目を丸くする程度で済むかは分からない。呆れかえって嘆息し、失望する者も現れないとも限らない。ただし、それが彼らしさなのであって、だからこそ皆が付いてくる、そういう面も否めない。

「怖っ! 何こいつ!? ヤクザ!? もしかして!」

 冷や汗を滝のように流して、今にも死にそうなほど驚いて、白目を向いてガタガタと体を震わせながら、まるで五歳児のように怯えている。指で指して示そうとしても、その方向も焦点が合わずに絶えずその方向を変えている。明らかな同様、そしてビビっているなと、獄寺以外の守護者たちはため息を吐いた。

「何情けねぇ事言ってやがんだ、ダメツナが」
「五月蠅いなリボーン! 怖いものは怖いんだよ」
「うるせえのはどっちだ、『怖っ! 何こいつ!? ヤクザ!? もしかして!』とか叫びやがって……マフィアがヤクザにビビんじゃねえ」
「なっ……俺はマフィアなんて継がないっていつも言ってるだろ!」

 論点は次第にずれてきているが、ボンゴレを継ぐ、継がないという問題も沢田にとっては一大事になりえる問題であり、もしかすると今直面している事よりも深刻だ。

「ふーん。ま、今さら拒否できるかは知らねーけどな」
「ん? どういうことだよ?」

 意味ありげにニヤリと笑い、意味深な言葉をこぼした赤ん坊に対して沢田は疑問符を浮かべる。拒否しづらい状況にあると言われても、心当たりはまるでない。

「未来でプリーモ(Ⅰ世)に認められた上にそれが九代目に伝わったんだ。簡単には断れないだろうな」
「うっ……それは……」
「それに、お前がならなかったら後継者がいねーんだぞ」
「ざんざ・・」
「XANXUSは却下だぞ」

 言おうとしたことを先に止められ、苦々しそうに沢田は口をつぐんだ。確かに、そのXANXUSがボスになったとしたら恐怖政治が始まるだろう。要するに沢田が断った場合、多くの者にとって彼ら彼女らの持つ平和がガラガラと、音を立てて崩れていくということ。

「で、てめぇら、無駄話はもういいのか?」

 それまで黙っていた、更木が久しくなったかのように口を開いた。そういえば長い間ほったらかしにしてしまったなと、やや反省しながら二人は振り返った。

「すいません……」
「悪かったな」

 おどおどとしながら、丁寧に謝った沢田と対照的にリボーンはと言うと、全く悪びれる素振りも無く形式上だけで謝罪する。その声には未知の人間に対する警戒の念が存分に込められていた。その上、守護者と沢田が何人もで一斉に闘ったあの巨大な何者かをあっさりと斬り伏せたのだ。敵対していた場合を考えると、本当に恐ろしい強敵だ。さらに、剣戟が放たれたのはかなり離れた場所、そんな所から瞬時に自らのいる場所に来たことも加味すると、速力も相当。警戒しない訳にはいかないという訳だ。
 もしかしたら、剣を振るった者と目の前の男は全く違う人間かもしれないなと、リボーンはさらに予測の幅を効かせる。ただ、そうだった場合はそのような事が考えられるだろうか。それについても彼は今示唆している。
 一番良い状況はその二人がお互いに面識のある味方同士で、自分の仲間がしたことをさも自分がしたかのように偽っている場合。ただし、同じ空間にいるだけで伝わってくる殺気が、この男がそのようなことをしないことを暗示しているようにも思える。
 とすると、最悪の場合を考えないといけないな、とも思い始める。最悪の場合、それはあの化け物を斬り捨てた者が味方であり、目の前の男が自分たちをこの謎の世界に連れてきた張本人である場合——。

「どうした? そこのガキ。急に黙りやがって」

 瞬時に様々な可能性を張り巡らせ、口をつぐんだリボーンに剣八と名乗った男が声をかける。それにしてもこの男は赤ん坊が普通に話していることに何の違和感も感じないのだろうかと沢田は疑問に思うが、その原因が良く分かった。

「ちょっと剣ちゃん、そんな言葉遣いはダメって言ってたでしょ!」
「んだよやちる、別に良いだろうが」

 注意を勧告するようにして、いきなり剣八の背中から降り立ったのは、リボーンよりもほんの少し身長が大きいか同じぐらいの、幼い女の子だった。桃色の髪の毛の、やちると呼ばれた、子供なのに一丁前に日本刀を腰に差している。言葉で形容するならば、天真爛漫といったところだ。

「良くないよ、あのおじいちゃん怒らしたら怖いんだから!」
「ちっ……」
「はい! 自己紹介して」
「あぁ!? 今やったばっかだろうが!」
「え——っと……これって……何なの?」
「さあな、ほっとけ」

 勝手に仲間内で軽い喧嘩を始めた二人を尻目に、沢田はリボーンに問いかけた。結局、この二人は自分たちに何がしたいのか、皆目見当がつかないからだ。
 目の前で未だにいざこざと口喧嘩を続ける二人をどうにかしようとする沢田を視界に収めながらクロームは考えていた。本来、一番最初に現れたもの、さらにはさっきまでいた大きなモンスター同様に、この黒い袴の男は自分たちには見えない類の存在のはずだ。それなのになぜ彼は、自分が沢田や獄寺、リボーンや山本に見られているのが分かったというのだろうか。魔レンズを実際に操っている彼女だからこそ、そういう事まで読み取れるのだが、実際にその原因は分からない。
 すると、彼女の視界の端に、もう一人乱入者が入ってきた。更木剣八と名乗ったあの男同様に真っ黒な着物と袴を着ている。剣八と比べて特徴的なのはオレンジ色の髪の毛と身の丈ほどの柄と刃しかついていない大刀のみだ。その彼は驚いたような顔で一人目の乱入者に声をかけた。

「剣八……お前なんで、こんな所にいるんだ? やちるまでいてるし、向こうに何かあったのか?」
「一護か……! お前、どういうことだ。聞いていた話と違うぞ。お前、力を失ったんじゃなかったのか?」
「ああ、色々あってな。しばらくは力が残ってる。説明はまた今度する」

 だが、一番驚きを露わにしたのは一護と呼ばれた青年でなく、先に来た剣八の方だった。




ようやく六話目が完成です。
一護さん出てきましたよー。一番嬉々としてるのは自分だったり……
では、次回に続きます。