二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リボーンと】月下で交わる二人のオレンジ【BLEACH】 ( No.30 )
日時: 2012/01/21 19:58
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: jxbxTUdV)

第二話 戸魂界<ソウル・ソサエティ>





 どこにでもありそうな普通の町、電柱が立ち並ぶ平凡な大通りを青少年達は歩いていた。初めて着いた町を観察するように、ほとんどの者はせわしなく辺りを見回している。一人だけやけに不機嫌そうに離れた所を歩いているが、それについては誰も言及しようとしなかった。
 先頭に立つ少年だけはここに慣れているようで迷うことなく道をたどる。どこかに案内していることが見ているだけで手に取るように分かる。少しずつ彼は大通りからそれた細い路地に入りこんで行く。決して怪しげだったり、閑古鳥が鳴くような淋しげな所ではないが、通る人の数は自分たち以外は一もない。
 一体どのような場所に連れて行かれるのだろうかと、びくびくしながらずっと沢田は身構えていた。黒髪の男は物珍しそうに辺りを見回し、銀髪の少年は眉間にしわを寄せて胡散臭そうに先頭に立っている男を睨みつけている。額に傷のある男は落ちつかない足取りで、紅一点の少女は俯いている。
 「着いたぞ」とオレンジ色の髪の青年が彼らに呼び掛けると彼らは一斉に顔を上げてとある建物をその目に収めた。何だか昭和に建てられた平屋の民家みたいで、とても古臭い印象を放っている。よっぽどこっちの方が胡散臭そうだと銀髪の少年は呆気に取られた。かかっている看板には大きな字で“浦原商店”と書かれている。そういう名前の店なのだろう。その入り口付近では二人の子供が箒を持っていた。

「くっそ……テッサイの奴また俺に掃除やらせやがって……」
「私もやってるよジン太くん……」
「うっせえ雨(うるる)! お前は黙ってたら良いんだよ!」

 やけに短気な少年のようで、ちょっと何かを言われただけでカッとなって怒りだした。隣でちゃんと箒で掃除している少女の結わえられた髪の毛をおもむろに掴んで引っ張り出す。「痛いよ」と何度も言って止めるように頼んでいる彼女を無視して理不尽な制裁を続ける。
 いつもながら凄まじいことだと、オレンジ色の頭髪の青年が動いた。ジン太と呼ばれた少年の肩を叩いて自分の存在を知らせた。

「あ、アンタか……話は店長から聞いたぜ。ん? 後ろの連中誰だ?」
「こんにちは、一護さん」

 一護に気付いたジン太は攻撃の手を緩めた。数少ないお客の一人だからだ。それによって虐めのようなそれから抜け出せた雨も軽く会釈して挨拶をした。後ろにいる沢田達にジン太はすぐさま気付いたようで、誰なのか教えて欲しいと一護に訊いた。

「俺もよく分かんねえんだ。どっか別の世界から来た、って言ってたけど」
「ハア? 何それ。誰が言ってたのさそんな事」
「それに、違う世界って……どういうことなんでしょうか……?」
「えっとな……宇木良平って奴が言ってたんだ。違う世界っていうのは流石にまだだ」
「で、分かんないから店長に訊いてみようっていう魂胆か?」

 まあそういうところだと、一護は彼の言葉を肯定した。自分一人で分からなかったら、色々なことをよく知っていそうな人に訊いてみるのが一番だ。彼の場合は、ジン太から店長と呼ばれている男が、最も頼りになりそうだと思ったから、ここに来たと言う訳だ。
 そういう事ならと、彼ら二人は入口の引き戸を開けて、奥の方を指で指した。あっちにお探しの人がいるぞということだろう。

「ありがとな、行くぞお前ら」

 親鳥に付いていくカルガモのように沢田達は歩きだした。それにしてもこいつらは一体誰なのだろうかと残された二人は頭を抱えたが、知る由も無かった。
 中に入った一行は一直線に進み、商品の置いてある棚の辺りを素通りして少し奥の方のふすまの方に近付いた。足音を聞きとったからか、奥の方から一人の男が歩いてきた。

「あれー? 困るなあ二人とも。まだ開店よりちょっと早いじゃないっすか。……って、黒崎さん?」
「急にすまないな、浦原さん。ちょっと、困った事が起きて……」
「へえ……アタシに手伝えることだったら良いんすけどねえ……」

 現れたのは、本当に、店から想像していた者よりもさらに胡散臭そうな男だった。はだしで下駄を履いていて、やけに古臭い着物のような服装で、緑と白の帽子を被って、常に笑っているような雰囲気で杖を持っていた。まだまだ無精ひげの色も黒色で、見る限り若い彼は足腰を悪く下老人が突いていそうな杖を手にしていた。そのうえかなり独特な口調で、怪しい感じが倍増どころか、数倍にはなっていた。

「後ろの方たち、誰なんでしょうか?」
「ああ、実はこいつらの事なんだけどよ……」
「見慣れない顔っすね、霊圧も全然感じられないですし」
「なんか他の世界から来たって言ってたんだけどさあ……なんか知らねえか?」
「それだけじゃどうにも言いづらいですねえ。他に何か知らないっすか?」
「えっと……宇木良平っていう奴が言っていたんだけど」

 宇木良平、その名前を聞いた時、彼の表情はほんの少し変化した。

「うーん、聞いた事あるような無いような……やっぱり結局の話アタシには分かんないっすね」
「えっと、そいつ死神だったんだけどよ……」
「それなら、死神に訊いてみたら良いんじゃないっすか?」

 杖を手元でくるりと回転させて、集団の方に向けた。一人一人に照準を当てるようにじっと見渡す。冷や汗を流して怯える少年、凄い形相で睨む少年、竹刀を持つ男、幼児としか言いようの無い牛の格好の者、手に包帯を巻く男子、黒づくめの服に身を包む赤ん坊、眼帯の少女、風紀の腕章を掲げる少年。
 「霊圧は感じられないけど、逸材揃いじゃないっすか」と、誰にも言わず心の中に浦原という男はしまい込んだ。

「んじゃ、戸魂界<ソウル・ソサエティ>行ってみますか?」