二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【三章開始】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.77 )
- 日時: 2012/03/13 15:25
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Uo0cT3TP)
- 参照: 獄寺&山本VS詩音&紅蓮 終幕です
「……燕特攻と同等かよ。大分やるじゃねえか……」
「凍土白帝が相討ち……ですか……。それじゃ、僕にはどうしようもないですね」
「くそがっ! 何つう威力だよあの炎の矢……。焦土龍帝と、互角」
「そっちも中々やるじゃねえか。あの野球バカクラスの一撃だなんてなあ」
二つの大爆発は、最初に彼らが進攻し、街々を破壊する以上の損害をもたらした。雨の二人の衝突は、周囲の家の外壁、果てには家そのものを凍てつかせ、山本の凄まじい鎮静力で空を飛ぶ鳥すらも、その場で止まってしまっている。なのに落ちるようなことはない。空間自体が、鎮静化されている。
もう一方も、それは凄まじい被害をもたらしていた。山本と詩音に極めて近い位置には、打ち消し合って完全に消失していた。が、勿論のごとく打ち消されていない他の部分の破壊活動はかなりのものだった。晴れによって活性化された嵐の分解能力によって、コンクリートで舗装されているはずの道路は、見るも無残に蹴散らされていた。まだ燃え続ける底の見えない、赤い炎は溶かすようにアスファルトを壊していく。
「こっちの攻撃が一切通用しないのかよ! 何て実力だ……」
「お前らは覚悟が欠落してんだよ。炎が弱い。馴れ合うだけで勝てるほど、ボンゴレは甘くねえぞ」
「……あなたは、僕と姉さんの絆を馴れ合いと呼ぶのですか?」
「別に。俺は言うつもりはねえけどな」
「銀髪のあなたに、見せてあげましょう、僕の覚悟を」
自分の最強の技を返され、途方にくれる紅蓮。彼女に対して獄寺は、炎が強いものであるための条件が欠落していると言い放つ。それを聞きつけた詩音は急に顔つきを変える。さっきまでは無表情であっても柔和な雰囲気を漂わせていたのに、今となっては本当に凍りついてしまったかのような表情だ。
獄寺も不味いことを言ったなぁと、山本は冷や汗を浮かべて目の前の詩音を諭そうとする。しかし、もう彼は聞く耳を持っていなかった。紅蓮がかなり不味そうな表情をしている。途端に詩音から発せられる霊圧が急上昇する。いきなりの豹変ぶりに今さら悪寒を感じるもすでに手遅れで、引き返せないところにまで、もうすでに達していた。
「訂正しろ」と、何度も何度も詩音は口の中で反芻する。獄寺に最も届けないといけないというのに、それどころか近くにいる山本にすら聞こえていない。顔を上げた彼の表情は、完全に感情を押し殺そうとしていた。ただし、勿論押し込まれていなかった。明らかに強い、憤怒の想いは。
「許さない……炎が弱いだなんて、信じない。全部の炎なんて————消えてしまえば良い」
途端にドーム状の巨大な雨の炎が詩音の刀を中心として周囲を取り囲む。その半径およそ、東西南北に半径百メートル。ただし、その中にいる四人に、何の変化も訪れなかった。命が鎮静化されることも、氷鈴斬のように温度が下がることも。
ただし、違う所に異変は現れていた。急速に、獄寺の持つ弓の炎が弱まる。それだけでなく、急速にしぼみだし、形態変化は溶けて、ただのアニマルリングに戻ってしまった。ボンゴレリングから放たれる炎も弱体化する。その変化は山本にもやって来ていた。刀を纏う雨の炎は消えてしまう。その変化は勿論、紅蓮どころか詩音自身にも影響していた。
すぐに分かった。これは炎を完全に消しさる空間なのだと。雨の鎮静で、炎を完全にシャットアウトした世界。いくら覚悟を込めても、マッチ棒の先に点く程度の火種すら熾らない。
「ほら! 君だって覚悟足りてないじゃないですか!」
得意げに獄寺に罵声を浴びせるように指摘する詩音、その顔は大層、嬉々としていた。それもそうだろう。ずっと仲の良い双子だったのだ。詩音にとって紅蓮は自分と同じか、それ以上に大切な存在なのだ。逆もまたしかりなのだが、このように暴走するのは、未だに精神の幼い詩音の方だ。
自分の持つ覚悟が、獄寺の言うようなちんけなものではないと証明できた。彼の性格ゆえに、純粋に罵倒してしまうことは無いが、それでも普段と比べると見下すような態度が混ざっていた。
それを見て獄寺は溜め息を一つ吐く。ポケットから煙草型の着火装置を一つ取り出す。いつの間にか火は点いていて、煙も燻ぶっている。胸元の辺りに手を入れて、ダイナマイトを取り出した。
「下がってろ、野球バカ」
「……一人でいけるのか?」
「当然だろ。嘗めんな」
山本を後ろに下げて、一人だけ双竜姉弟と相対する。その眉間には、相当量の皺が寄っていた。
「お前、ここは、炎を拒絶する空間か?」
「ええ、そうですよ。だからあなたの炎が点かなくても覚悟どうこうの問題じゃあ……」
「何度言えば分かる。ボンゴレ嘗めんじゃねえ」
獄寺は、おもいっきり煙草の尻を咬み潰す。ぐしゃりと口の中でオレンジ色の部分に凹みがつく。拳に力を込める。血管が浮き出るほどに、もうすぐ手の平の皮が裂けそうなほどに。
その時、炎は指輪に灯った。打ち消されるのに立ち向かう、小さいながらも意志の強い炎。
「そんな……ことが、ある訳……」
「お前ら相手に炎は使わない。ダイナマイトで充分だ。先に言っとくぜ、果てろ」
言い終わるとすぐに、大量のダイナマイトに火を点け、自分の周りに大量に散布させる。空中を、獄寺自身の周りを飛び交ういくつもの爆弾に、敵である二人は下を巻く。気が狂ったのではないかと。
リストバンドに忍ばせていた小さいダイナマイトを手首から取り出した。すぐさま着火装置の先端に掠めて導火線に火を点ける。それを後方に押しやって、駆け出した。
当然、獄寺の背後でそれは爆発する。誕生日ケーキに刺すろうそく程度のサイズの“ミニボム”の爆風を背中に受けて彼は駆け出した。その速度は生身の人間のそれを遥かに凌駕する。当然、すぐに剣士の周りに入る。しかし、彼らは剣を振るえなかった。さっきの騒動の中、近くに駆け寄っていたため、二人の丁度真ん中を通る獄寺を斬ると、自分の家族を斬ってしまう。それをためらった二人は剣を止めた。
その隙だらけの中心を、銀髪の少年は走りぬける。大量の、着火済みのダイナマイトを、彼らの周りに投げつけて。双竜姉弟の周囲を、爆弾が包囲する。もうすぐ、爆発するというかなり危険な状態。
「ボム・スプレッズ」
だが、それら全ての導火線を、彼らは持ち前の剣術で一つ一つ切っていく。すぐさま全てのダイナマイトは、導火線を失う。
だが、そんなこと獄寺には関係無い。なぜなら、それを見越した攻撃の手順だからだ。皆はその存在を忘れていた、最初に取り出した爆弾の存在を。
「ロケットボム」
一番最初に獄寺が、自分の周りに放置したあのダイナマイトが、急速に尻に仕込んだ火薬を燃焼し、急加速する。瞬く間にそれは、二人の下に迫る。刹那の時間の後に、それらを口火として、解き放ったほとんどのダイナマイトが爆発する。巨大な太鼓を打ち鳴らすような轟音を響かせて、大気をうねらせる。
ゾッとするような爆炎と爆風の中、煤だらけの二人が現れる。あれでもまだ倒れないのかと、山本は感嘆する。だが、彼にも獄寺にも、耐えきった理由は分かった。高速で各々の剣を振るう事で、真空の壁を生じて、防いだのだろう。
だが、獄寺は、最後に四つのダイナマイトを仕込んでおいた。それらを一斉に指差す。双竜の二人が気付くのは、爆発のその瞬間だった。
最後のダイナマイトは、真空の壁の内部に入り込んでいた。走りぬけるその瞬間、獄寺の手によってそれらはポケットに入れられていたのだ。
「これで最後だ。ピックポケットボム」
視界を覆い尽くす、いっぱいいっぱいの黒煙が、闘いの終わりを象徴していた。
はい、こちらの闘いは完了です。
原作で一度しか登場していない技や、Wikipediaで偶然発見したアニメオリジナルの技を使ってみました。
獄寺が原作以上に闘いで活躍してる、とかは言わない方が良いのかな……?
次回は鈴音風花と極限くんと牛ガキとクロームが闘います。
説明適当?そんなことは無いですよ……多分。