二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼夢小説〜誠に生きる者達〜番外編ストーリー募集中 ( No.108 )
日時: 2012/08/28 12:06
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

28話 輝ける満月

酔いざましの為か、風にあたっている土方を見、千鶴は当然焦る。
雪「あ、すっすいません!」
土「おいおい、逃げるこたぁねぇだろ?」
慌てて広間に戻ろうとする千鶴を、土方はひきとめた。
雪「………はい。」
今は艶姿から普段着の袴に戻っている。しかし、鬼の副長と自分の
二人きりとなると、さすがに千鶴も何をすればいいかわからない。
すぐ隣の部屋からは、原田や永倉の騒ぐ声が聞こえてくる。
原「そんじゃ、恒例の行くぜ!!」
水「恒例って…何でサラシを取るんですか!?」
平「来た来た!左之さんの腹芸っ!」
わいわいと騒ぐ声を聞いて、土方が微かに笑った。
土「…懐かしいモンだな。」
雪「え?」
土方の笑顔を見て、千鶴が小首をかしげた。
土「いや、多摩で剣術道場やってた頃に、こうして毎晩のように
  皆で呑み騒いだのを思い出してな。あの頃は、金も門弟も
  全くって程でな。飲んだらその後は金に困る始末だったよ。」
雪「…土方さんにもそういう時代があったんですね。」
しみじみと発せられた千鶴の言葉に土方は眉をひそめる。
土「そういう…まさか昔から目ェ吊り上げて不良隊士を取り締まってた
  とでも思ってたのか、お前?」
雪「あ、えと…!」
焦る千鶴に何を感じたのか、土方はふっと表情を緩めた。
土「俺も想うよ。薬売りだった俺が、腰に刀を2本差して、江戸幕府に
  仕えてるなんて。もしかしたら、長くて幸せな夢を、ずっと
  見続けてるんじゃねぇかってな。」
言い終わる前に、土方は空に浮かぶ満月に視線を合わせた。
つられて千鶴も満月を見上げる。おぼろ月は、幻のように輝いていた。