二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼夢小説〜生きる者達よ〜 ( No.4 )
日時: 2011/12/10 21:48
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

1話 都来たる少女

幕末——何もかもが動きだす、狂乱の時代。そして、その中心とも
いえる動乱の都—京。今その町に、ある一人の少女いや、女鬼が、
足を踏み入れた——。

?「ここが、京の町…」
声は少し甲高く、色白の肌に結った黒髪が彼女の美貌を際立たせる。
顔だけ見て声を聞けば、誰が見たって美少女と答えるだろう。
しかし、袴をはき、笠をかぶり、腰に刀を差した今の彼女は、
誰が見ても10代の美男子だと答えるだろう。そんな男装美女は、
町娘が見惚れているのにも気付かずに、町の検問を待っていた。

(ああもう!検問があるなんてっ。こんな事なら、鬼の力で町に
 入っておくんだったわ。)
一般人が聞いたら、彼女の美貌に関わらず変な目で見られるであろう
心の声。そうしているうちに、列が進んだようだ。
役人「そこの者、書状を!」
呼ばれて、彼女は前へ進み、役人に身分証明書を手渡す。

役人「ふぅむ。…確認する、一つずつ述べよ!」
彼女は頷いて、はきはきと答える。しかも、声は青年のようだった。
水「私は水月千幸、18歳。出身は江戸であり、ここへ来たのは
  友人に会うためで御座います。」
水月—そう、男装美少女の彼女は、水月千幸といった。
千幸の返答を聞いていた役人は、書状の中身と言ったことが間違って

いないことを確認すると書状を返した。
役人「通って良し!」
千幸は一礼を残し、静かに歩み去る。
町人「兄ちゃん、役人に一礼残すたァすごいな。」
水「いえ、僕は何となく。失礼します。」
褒めてくれた町人に優しい笑みを送り、狭い裏路地へはいる。

水「時間は食ったけど、入れたからいいわね。」
さてと…と一息つくと、千幸は眼を閉じる。
(1つ、2つ……全部で7つか)
ゆっくりと目を開けると、静かに息を吐き考えをまとめる。
(風間、天霧、不知火、君菊、千姫様…あとの2つは…?それに、
 この人か鬼かわからない気配は何だ?)

水「鬼の純血が7に、おかしな気配が幾つか。そしてその気配の
  根源は……」
千幸は顔を上げて、少し前にある建築物を見やる。
水「西、本願寺…か。」
(仏教の集い場所に、一体どうしたらこんな闇が集まるのよ…)
さっそく疲れてきて、千幸は軽く頭を振る。

もう一度今わかった事をまとめて考えると、今度は千幸の背中に
軽く冷や汗が流れた。どうすべきか考え。
水「あの人に会わなきゃ。」
一言つぶやくと、町外れの森に向かって走り始める。頭の黒髪を揺らし
ながら、千幸はまず、当初の目的を果たそうとしていた。
(八瀬の郷へ……)

空は、うっすらと茜色に染まり始めていた。