二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼夢小説〜生きる者達よ〜 ( No.5 )
- 日時: 2011/12/13 21:05
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
2話 鬼達の出会い
さく、さくと、落葉を踏む音があたりに響く。今は夕刻であり、
場所が森なのでもともと人気などないのだが、紅く照らされる
地面を見ていると、神秘的である。
水「日が暮れる前にはって思って走ったけど。帰りは暗いな。」
茜差す森の中を、千幸は一人で歩いていた。
そして、前方の大きな屋敷に入る。はずだった。
?「何者ですか?」
聞こえて来たのは、凛とした女性の声。千幸は入口で止まったまま、
話す影に笑い掛けた。
水「突然で申し訳ないけど、いきなりクナイ投げることはないんじゃ
ない?君菊。」
君「そのお声は…水月千幸様!?」
走り寄って来て千幸だと認めた彼女—君菊は、深く一礼した。
君「申し訳ありません、とんだ御無礼を!」
水「いいのよ、こっちだって急だったんだし。」
明らかに年上そうな女性が男装をしている少女に跪くという奇妙な
光景だが、幸い誰も見ていない。
?「お菊、どうしたの?」
ここでまた、可愛らしい少女の声がした。今度は千幸も一礼する。
水「お久しぶりです、千姫様。」
千「貴方……千幸!どうしてここに?」
事情を説明しようと口を開くと、千姫が一度止めた。
千「立話もなんだから、中へ入って。」
水「失礼いたします。」
中に入ると、彼女達は居間へ座った。
水「今日は、千姫様に会いに来たのです。」
千「え、私に?」
そこで千幸はすべてを話した。今日、この町で感じた事を。
千「貴方の感じた事は、全て正解よ。」
そこで千姫も語った。今、京で起きている全てを。
水「この町に、雪村の生き残りが!?」
千「確証はないけど、大体西本願寺から力を感じるわ。」
君「それから、南雲家も来ているそうです。」
水「西本願寺は、今何かになっているのですか?」
千「ええ。新選組屯所にね。」
新選組……京の人斬り集団が、寺にいる。その事実を、千幸は
今知った。
千「今の段階では、私もあまり教えてあげられない。全て、自分で
確かめる気はある?」
水「もちろんです。」
その答えを最初から予想していたように、千姫は
穏やかに微笑んだ。
千「貴方は、近いうちに新選組と関わりそうな気が
するわ。私の勘は当たるのよ?」
水「えぇ、よく知っています。」
つられて、千幸も微笑んだ。そこでふと窓を見て、
月明かりに気がつく。
(そろそろお暇しよう…)
立ち上がった彼女を見て千姫が気付く。
千「帰るの?君菊。目的地まで…」
水「ああいえ。大丈夫です。」
送ろうとした君菊を遮り、千幸は屋敷の門を出る。
千「本当に?気をつけてね。って、貴方は平気か。」
千幸は深く一礼して、森の中にある帰路を辿った。
水「今は……戌の刻位かしら。」
サクサク…と、小さな足音を立てて帰路を辿る。
(雪村家は、滅んだと思っていたのに……まさか。)
千幸の背後に影が降り立ったのは、まさにその時
だった。
?「久しいな、水月千幸。」
水「っ!!何者っ!?」
刀の柄に手をかけたまま、距離を取って振り返る。
そこにいたのは
水「風間、千景……」
刀を差し、金の髪に紅い瞳をもつ男—風間千景。
西国の鬼一族の頭領であり、千幸が鬼の中で最も嫌う
相手だった。
水「何の用だ?背後に立つのは感心しないが。」
風「フン。話は京の鬼姫に聞いたか?」
一体何の用だと思ったが、確認に来たらしい。
水「ああ。この町の鬼も…まがい物の事もな。」
風「そこまで聞いていたか。なら、俺が話す事は
何もないな。」
水「ならば失せろ。貴様は好かない。」
冷笑を浮かべ、鬼の頭領らしい言葉遣いで言い放つ。
風間も薄く笑った。
風「まあいい。お前も新選組と関わるなら、また会う
事になるだろう。」
次の瞬間、一陣の風が吹いた。静かになった後、
そこに風間の姿は無かった。
水「誰が会いたいもんですか。」
ひとり言のように言い捨てると彼女は森を抜け、
京の町へと足を踏み入れた。見晴らしのいい大通りへ
出た途端、背後から聞こえる2人分の足音。
やがて走る音に変わったが、千幸は構わず歩き
続けた。そしてその後、ついに声がかけられた。
?「そこの者、止まれ!!」