二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼夢小説〜生きる者達よ〜 ( No.7 )
- 日時: 2011/12/17 11:17
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
3話 きっかけの出会い
背後から声を掛けられ、ゆっくりと千幸は振り返った。
見ると、浅黄色の羽織を着た男が二人、千幸を睨んでいる。
どうやら、新選組の平隊士のようだ。
隊士「貴様、このような夜間に帯刀し出歩くとは、何者だ!」
水「………(ずいぶん無礼な人たちね)」
ムスッとした顔で、二人を睨み返す。そんな千幸に何を思ったのか、
一人が警戒心むき出しの声をあげた。
隊士「まさか、薩長の者か!?」
薩摩、長州。この藩に属するという事は、千幸から見て風間と同じ
という事になる。その考えをまとめた途端、そんなでたらめを問うて
きた二人に怒りを感じた。
水「だったら、何だ?」
この時の千幸の声は、誰が聞いても男のものだった。
一方隊士は、その台詞を肯定とみなしたのか、抜刀してきた。
隊士「捕縛する!!」
きらめき迫って来る白刃を前にしても、千幸は全く動じない。そして、両手を突き出した。
隊士達「うぐっ!?」ドサリ。
水「はあ。少し挑発しただけなのに。」
腹部に千幸の拳を受け気絶した二人を呆れ顔で見やっ
てから、踵を返したその時だった。
?「おーーい!どうしたっ!!」
まだ若い浅黄色の羽織を着た青年が、長髪を揺らし
こちらに駆けてきた。まだ若いが、さっきの言葉遣い
からして、幹部なのだろう。
?「おいテメェ!俺の隊の奴らに何しやがった!?」
すぐさま抜刀体制をとる。どうやら、千幸を完全に
男だと思っているらしく、今にも斬りかかる雰囲気が
あった。
水「僕は、いきなり斬りかかられたので、応戦した
までですよ。気絶ですので、ご心配なく。」
言う事だけ言い放って、その場を離れようとまた歩き始めた。その時ふと
(彼らは真選組。名前を教えておけば、関わりやすく
なるかも。)
と思い直し、くるりと振り返って、さも突然を装い
青年に尋ねようとしたが、彼の方が早かった。
平「おい。俺は真選組8番組組長の藤堂平助。お前、
名前教えろよ。」
おそらく、名前聞き上官に報告するのだろう。自ら
名乗ったのは、知れても困る事ではないからだろう。
水「これはご丁寧に。僕は水月千幸と申します。
藤堂平助、覚えておきます。」
これで用は済んだといわんばかりに、千幸は颯爽と
身を翻し、京の闇へ消えてしまった。
平「水月、千幸。」
藤堂平助は、一人呟いていた。
京の町の裏路地を歩きながら、千幸も一人呟いた。
水「本当に、姫の勘は当たるのよね。」
小さい声で口に出してみると、実感がわくのだ。
(新選組…か。)
そこで立ち止まり、白く光る月を見上げた。この形なら、明日の晩には満月だ。
水「また、会う事になりそうね…」
千幸の微笑と呟きを見聞きしているのは、空の月以外
何もなかった。