二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼夢小説〜生きる者達よ〜 ( No.8 )
- 日時: 2011/12/17 15:14
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
4話 鬼とオニ
暗い夜中の大通り。道を照らすのは満月の月光のみ。
(今宵は満月か。何か起きないといいけど…)
千幸がそう思った矢先だった。
?「ひゃはははっ!!」
浪士「ぎゃああっ!!」
(ちょと、何事よ!?)
千幸は慌てて声のした裏路地へはいる。
水「うっ!!」
そのまま飛び込もうとして、急いで退いた。
水「白髪紅眼…。こいつ等、まがい物!!」
滑らかな動きですぐさま抜刀した。磨き上げられた刀は、月光を浴び美しく輝く。
水「水龍を持つのも久しぶりだな…。」
水龍——この太刀は、水月家家宝なのである。歴代に
おいて、沢山のものをその刀身に浴びてきた。
千幸が刀を構えたのを見て、殺した浪士の血を啜っていた二人の羅刹もまた、顔を上げて体制を変えた。
羅刹「血!血をぉっっ!!!」
二人同時に斬りかかって来た。千幸の頭上を白刃が
煌めいた。
水「まがい物如きがっ!!」
ひゅっ、と。音がした。その直後、
羅刹「ぎゃああああっ!?」
二人の胸から血飛沫が上がり、息絶えた二人は地面に
倒れた。
水「姫に聞いた容姿の通りだ。白髪紅眼。」
顔に着いた帰り血を拭うことなく、歩き出そうと
した時だった。
水「!!(囲まれている…)」
暗くてよく見えなかったが、いつの間にか5人の
男に囲まれていた。全員が浅黄色の羽織を着ている。
?「ねぇ、これやったの…君?」
茶髪の若い男がさっそく話しかけてきた。返答しよう
とした時、千幸を遮って大声が上がった。
平「あー!お前昨日のっ!!」
昨晩会った青年、藤堂平助がいた。という事は、この
男達は新選組の幹部連中だろう。
水「今晩は。藤堂平助君…でしたよね?」
?「おい平助、知り合いなのか?」
?「おいおい左之、そりゃないだろ!」
今度は彼のわきに立っていた二人の男が声を上げた。
まさかぁ!という顔をしている。
平「土方さんこいつだよ!昨日話した青年!」
土方と呼ばれた男が、千幸を見て目を鋭くする。
土「なるほどな。斎藤。」
その呼びかけで、唯一の逃げ道だった背後の路地から
蒼髪の男がでてきて、道を塞いだ。
斎「如何致しますか、副長。」
斎藤と呼ばれた彼が、物静かに問う。
土方が決断を考えている間、千幸は彼らの事を見て
探っておいた。新選組は今多少有名だから、幹部なら
身なりでわかる。左利きは斎藤一、槍使いが原田左之助だという具合に。
土「何にせよ、見られたら仕方ねぇ。やるぞ。」
彼の一言で、その場の空気が一気に殺気立つ。
土「千鶴、お前は下がっていろ。」
雪「は、はい…」
その一言で、土方の後ろに誰かがいた事にようやく
気付いた。少年の身なりをしているが、顔立ちは
少女のようである。こんな所に連れてくるとは、屯所に留守番させられない理由でもあるのだろうか。
(あの子は…まさか!!)
千幸は何より、その少年のだす気配に驚いた。自分と
同じ。鬼の気配。
水「生き残りは、本当だったのか…」
とても小さな声で呟きながら、千幸は千鶴と呼ばれた
少年を見つめ続けた。だが、その視線に土方が気付き
すぐに少年を自らの背に隠してしまった。
平「りゃああっ!!」
まず平助が突っ込んできた。しかし千幸は軽く受け流し、さらに回し蹴りを当てた。
平「ぐあっ!!」
雪「平助君っ!!」
彼がやられてか、他の幹部も突っ込んできた。
沖「隙があるよッ!」
斬りこんできた沖田の件が頬に傷をつくる。しかし、
水「……フン。」
鬼である千幸は、傷などすぐに塞がる。
雪「えっ……」
千鶴はその光景を見て唖然とした。
雪「…(私と、同じ?)。」
原「こなくそっ!!」
原田の槍がまっすぐ向かってきた。
かわすのは無理だと察し、抜刀した太刀で槍の穂先を
払った。しかし、もろくなっていた穂先は、払った
衝撃で外れ、飛んでいった。千鶴の方へ。
原「しまった!!」
土「くそっ!!」
彼らが慌てて助けようとするが、間に合う速さではない。そう、人の速さでは。
水「うぐぁっ!!」
人並み外れた鬼の速さで、千幸は千鶴の前に飛び出
した。当然、穂先は千幸に刺さる。
水「怪我…は?」
かすれ声で尋ねる千幸を前に、千鶴は首を振る。
水「なら…いい。」
鬼であっても、中々塞がる傷ではない。そのまま千幸は意識を失っていった。