二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 儚く消へるは鬼の夢 ( No.34 )
日時: 2012/03/30 20:01
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

拾壱話「突然現れし鬼」


隊士「う…!?」

斬りかかろうとした隊士は、もう少しで千鶴を斬るという処で呻きだした。
何が起きているのか理解できていない千鶴は、怯えた表情をしている。
その時、千鶴の叫び声を聞きつけた土方が現れた。

土「千鶴!?」
千鶴「土方さん!」

土方は、すぐに千鶴を庇う様にして隊士と向き合う。
隊士は苦しそうに呻いていて、刀がするりと手から抜けた。
かしゃん、と音がして、刀が畳の上に落ちる。
全く戦意を感じないが、土方は強く警戒している。

?「全く応答が無いと思ったら…こういう訳だったのね?」

すっと障子裏から現れたのは、千澪だった。
にっこりと笑みを作ってから、肘で隊士の背中を叩く。

千澪「峰打ちと同じ効果ですよ」

静かに言った。
土方は今度は、千澪の方を睨む。
鋭い眼光に、千澪はびくともしない。

千澪「そんな怖い顔しないで下さいよ…。千鶴ちゃん、大丈夫?」
千鶴「う、うん」
土「なんでてめぇ此処に入った」
千澪「千鶴ちゃんを誘ってお茶に行こうと思いまして」
土「だからって屯所の中まで入ってこなくたっていいだろうが」
千澪「だから言ったじゃないですか。応答が無かったから、と」
土「違う幹部達が居ただろう?」
千澪「千鶴ちゃんの悲鳴で近くに集まってますよ?」

千澪の言った言葉にはっとして、土方は千鶴の部屋から顔を出す。
するとそこには、幹部達や隊士達が大勢集まっていた。
目線は部屋の中でもあるが、大半は何時の間にか入った千澪に向いていた。
土方は千澪の前に出て言う。

土「何でもねぇ。各自持ち場に戻れ」
隊士「はい!」

幹部達も集まっていたのを解散しようとしたが、土方は残れと言う。
総司はなにやら楽しそうに笑っていた。

総「えーと、千緒さんだっけ?」
千澪「本名を千澪と言います。千澪で良いですよ?」

総司の問いかけに、総司と同じ位にっこりと笑って答える。

左「千澪、お前、最近島原じゃ見かけねぇな」
千澪「左之助さん、またいらっしゃったんですか?私、最近休んでるんです。すみませんね」

左之助の問いには、申し訳なさそうに答えた。
千鶴は、千澪の後ろにたたたっと走って行き、こそっと話した。

千鶴「あの、千澪さん、後で少し聞きたい事が…」
千澪「良いわよ。後でお茶でもしながらね」

千澪は、千鶴に優しく笑いかけた。
千鶴はその笑みを、母親のように優しい笑顔だ、と思った。
実際、千鶴は母親の事を覚えていないのだが。

〜〜〜

千澪「はー、終わった。思ったより長かったわね」

千澪はあの後、幹部達に色々質問攻めされていた。
あまり関係の無い事まで聞かれていて、千鶴は隅っこで苦笑していた。
半刻程時間を使われ、やっと開放された千澪は溜息。
が、さっと千鶴の方を振り返り、笑う。

千澪「さ、千鶴ちゃん。聞きたい事があるのよね?」
千鶴「はい…。あ、今日は、私が良いお茶のお店紹介しますね!」
千澪「あら、本当?ありがとう」

千鶴は、千澪の手を引きながら歩いていく。
前しか向いていない千鶴に、千澪は後ろから怪しく笑った。