二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 背中合わせの志【参照600超感謝】 ( No.101 )
- 日時: 2012/04/21 19:47
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
46話「選ばれる者」
星の瞬く夜空のもと、薫と海はまだ共に居た。
薫「あれ?もう行くの、海?」
海「えぇ、今日のうちには着きたいので。」
薫「ふぅん。お気を付けて?」
全く心配していない口調だ。おまけに口元には笑みが浮かんでいる。
海「はい。野宿に関しては、獣にお気をつけて。」
こちらも無関心な声音で応じているが。支度が終わった海は、そのまま
立ち去ろうとする。しかし、それを薫が止めた。
薫「…どんな生活をしようと文句はないけどさ。」
海「……何でしょう。」
薫「俺の邪魔は、しないでよ。」
その眼は、先程の様な柔かい光を湛えていない。その眼を正面からみつ
めて、海も受け答えた。
海「…貴方が鬼の道を外れるなら」
薫「フン、鬼の道なんて。そんな物一体何の役に立つんだ?だいたい、
明確な基準なんて—」
海「—貴方は、何をするつもりなんですか?」
薫の言葉を遮って、海は核心を突いた。
薫「俺が何を…?……く、くくっ。」
海は少しだけ驚愕に目を見開いた。彼が突然笑い始めたからだ。薫は
やがて顔を上げた。その顔には笑顔が張り付いている。そして彼の瞳
の中にあるのは、狂気。
薫「俺は、俺の夢を叶えるよ。たとえ…」
薫はいったんそこで言葉をきる。だがもう一度息を吸うと、自分の
言っている事を体に、心に刻み込むように、言葉を紡いだ。
薫「たとえ、可愛い妹を、この手で殺めても、ね。」
海「……貴方の覚悟は、わかりました。」
薫に一礼だけすると、今度こそ立ち去ろうとした。しかし思い出した
様に足を止め、薫をまっすぐに見据えた。
海「畏れながら。」
薫「何?」
海「貴方は今、とても狂った目をしている。」
薫「あはは。狂わなきゃ此処までしないよ。」
海「でしょうね。ですから聞かせて下さい。貴方は鬼として、時代に
乗ろうとしているのですか?」
薫「そうさ。不可能な夢を、俺が叶えて—」
海「—時代は貴方を選ばない。」
薫の台詞を遮り、凛とした声で海は言い放った。そして何も言わず、
薫に背を向け歩き出す。背中はすぐに消えた。
薫「時代が選ばない、ねぇ。」
海に言われた言葉を浮かべ、薫は空を見上げていた。
薫「違うんだよ、海…」
穏やかだった顔に、狂気の笑みが浮かぶ。
薫「時代が選ぶんじゃない。俺達が選ぶんだよ!」
断言したように薫が夜空に向かって言い放った。
薫「待ってなよ、人間。新選組!くく、あははははっ!!」
狂った笑い声が、森の中に響き渡った。