二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 背中合わせの志【参照800超感謝】 ( No.122 )
日時: 2012/06/03 15:27
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

61話「偏りのなき月、闇と光」


空「う…ぁっ」

空が、用意された部屋に寝かされていた。
苦しそうに呻く空を、横から千鶴と烝が手当てし、千と君菊が見守っていた。

烝「とりあえず血は止まったし、鬼だからすぐ傷口も塞がりました。
   ですが、血の出すぎで貧血気味ですね」
千鶴「こればかりは待つしか出来ませんね」
千「・・・」

千は苦い顔をして空を見下ろしていた。

千「本当に海は…変わってしまったわね」
君菊「そうですね…。千姫様、お悔やみですか?海を手放したことに」
千「悔やまないわけないでしょ!私のせいで海があんなになってしまったのに!」
君菊「お察ししています」

千の眼には、悔しさの色に加えて、絶望に似た色も交えていた。

千「だから言ったのよ…。空じゃ海に何も出来ない、と」

———

匡「派手に斬ってたな、海。夜空に紅い華が咲いてたぜ?」
海「なんだ、見ていたのですか?」

匡と海は屋根の上に座りながら軽口を叩いていた。
二人共笑い合う。
海は、匡の言葉に対して、「綺麗な華だったでしょう?」と言った。
それを聞いた匡は、「ああ。かなり綺麗だった」と笑う。

匡「それにしても…お前、笑うようになったな」
海「私だって普通に笑いますよ?空や父、母と居たときの顔など猿芝居です」

ははっと、今までの記憶を軽蔑するように笑う。
その笑い顔に、匡がまた笑った。
その後ろに、すぅ、と黒い影が近づく。
そして、両方の肩にぽん、と手を置いた。

天「笑い合っているのは良いですが、此処は屋根上です。
  そして、もう真夜中です。下に戻ってもう寝なさい」
匡「ちぇっ。もうそんな時間かよ?」
海「明日もあることですし、私はこれで」

そう言いながら、海はさっと屋根から飛び降りる。
そして振り返り、匡と天霧に一礼して去っていった。

———

空「うぅ…、ぐ・・ぅあっ」

空はまだ苦しそうに横たわっている。

千鶴「障子を開けましょうか。空気の入れ替えも必要ですし」

すぱん、と障子を開ける。
ちょうど真上に来ている月を見た。
今日の月は半月だった。
どちらにも偏っていなく、真っ二つの半月。

暗い闇に染まった海と、明るい光の中に居る空。
千鶴は、二人を表すような月だと思った。