二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 背中合わせの志 ( No.50 )
日時: 2012/02/18 12:05
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

19話「未完成なカラダ」


海は既に抜刀していたが、空も抜刀する。
空の刀は青白い光を纏っていた。
海と空の刀は、それぞれ相手の事を表しているような刀だった。

海「・・・」

海はチラリと空の刀を見る。
が、自分の刀に直視線を戻すと、千景と対峙する。
千景は不敵な笑みを作ると、海との対峙を止め、空に斬りかかろうとした。
海は急いで空の前に回り、刀で防ごうとした。
・・・が、間に合わなかった。
千景の刀は海の左腕をかすった。
大それた傷ではない。

千鶴「海さん!」(でも、鬼だから、直治る筈・・・)

千鶴はそう思ったが、海の左腕の傷は治ろうとしない。
逆に血が溢れて、地面に零れる。
海はそれを見ながらも、刀を構えなおす。

千景「ほう?噂は本当だったのだな?」
海「!何故知っている!?」

海が驚いた。
あまり見せない表情だ。
空は俯いていた。

千景「風の噂だ」
海「嘘を付け!!そんな筈はない!この事を知っている奴は、極僅かな筈!!」

海が感情を露にして怒鳴る。
感情が昂るにつれ、傷口から血が溢れる。
今や、傷口より肘までが、血のせいで紅く染まっていた。

千鶴「何で・・・?鬼だったら直傷は治る筈なのに!」
空「えっと・・・それは・・」
海「空!!」

真実を言おうとした空を、海が抑えた。
千鶴には訳が分からない。
海は、ぐっと力むと、千鶴に説明を始める。

海「私の未完成な体は、生まれつきによるものなのです。左肩から左手にかけて・・・私は人間と同じ体質。傷口が早く治ったりなどしません。理由は分かりませんが、鬼の体質を持たずに生まれてきたのです」
千景「故に、そのカラダの事を、未完成体と言うようになった・・・だろう?」

千景の補足に、こくんと頷く。
その眼には、悔しさが映っていた。
千景はフンと笑うと、言う。

千景「興醒めした。お前の其の体質に免じて、今日の処は引き上げよう。だが忘れるな。俺は又来るぞ」

千景はそう言うと、風になり消えていった。
匡と天霧もそれを確認すると、消えていった。