二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 背中合わせの志 ( No.51 )
日時: 2012/03/03 13:19
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

20話「鬼の心と人の腕」

風間達が撤退し、幹部達は被害状況調べに動き始める。
雪「あの、海さん…」
千鶴が海の傷を確認すると、まだ血が流れている。
海「皮肉なものですね…」
彼女には珍しく、自嘲気味な笑みをこぼした。空も驚いて目を見張る。構わないのか、気付いていないのか
分からないが、海は続ける。
海「あれほど人間を毛嫌いし、侮辱しているのに、
  体の一部はその類の者。」
言い終えると、無表情になり、千鶴に一礼してから
去っていく。怪我の手当てをするのだろう。
空「あ、あわわわ……海が、海がっ…!!」
空はいつも以上に慌てている。海の入っていった部屋
を見て、ロクに言葉も紡げていない。
雪「そ、空さん。落ち着いて下さい?」
空「だ、だって。海が他者に己の弱さを見せるなんて
  っ。わ、私だって1度しかないのに!!」
おどおどと言った後、『ああ!明日の天気は〜!!』
等と慌て始めている。
雪「あの、空さん。海さんは、どうしてそんなに
  人を……?」
その台詞で、空の動きはぴたっと止まった。そして
俯いて話し始める。
空「…海に限らず、多くの鬼はそうです。いえ、昔は
  違ったけど…でも!特に東の鬼は……」
要領のいい説明とは言えないが、千鶴はそれだけで
理解した。周りにいる土方達も同じらしい。
雪「私の故郷の滅亡…ですね?」
堅く瞳を閉じた空は、しっかり頷いた。
永「おい、ちょっと待て。千鶴ちゃんの家系(?)は
  結構でかかったんだろ?どうして簡単に滅亡した
  んだよ?」
空「そ、それは—」
海「それはお前が知る事ではない、人間!」
ピシャッと障子をあけ、海が部屋から出てきた。
腕には包帯を巻き、まだ血が滲んでいる。
海「偉大なる雪村の過去について、詮索するな。…
  雪村を滅亡へ追いやった族のくせに、よくもまあ
  ずけずけと!!」
永「何だよ!俺がやったとかふざけた事抜かすんじゃ
  ねぇだろうな!!」
永倉が海に掴み掛るが、海は動じずさらに一喝した。
海「自らが危くなれば鬼を利用し、用済みとあらば
  殺す!そんな理不尽な理由で、雪村は滅亡した
  のだ!貴様ら人間の手によってっ!!!」
そう叫ぶ海の瞳にうかぶ怒りの色の奥に、微かな
悔しさの色を、千鶴ははっきりとみたのだった。