二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 背中合わせの志 ( No.56 )
日時: 2012/03/04 15:09
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

22話「空の涙」

空「フン!何よ、海ったら!!」
一人でブツブツ言いながら縁側に腰掛ける。
空「いっっつも冷たいし、無口だし、笑わないし、怒るし………
  あっったま来るっ!!!」
海の文句を、空なりに述べていく。しかし、口に出して言えば言う
ほど、思い出が心に浮かんだ。次第に視界がぼやけていく。
空「うっ、海が、い、いなくたってぇ……」
雪「空さんっ!!」
そんな彼女のもとに現れたのは、千鶴だった。
空「千鶴、さぁん…」
雪「空さん…?え、ちょっ!」
千鶴の姿を見た途端、空は泣き出してしまった。とても、先ほどまで
鬼の頭領と決闘していた少女とは思えない泣き姿である。
空「ふぇぇん!わ、私ぃ…!!」
雪「……………。」
千鶴はどうしていいか分からず、ただ空の頭を撫で、慰めた。自分が
幼い頃、父の綱道が、よくしてくれたように。
空「うっ、す、すみません…。」
そのおかげか、空もだいぶ落ち着いてきた。
雪「一体、海さんと何があったんです?」
空「っ。わ、私………」
少し迷ってから、空は千鶴に部屋での海とのやり取りを打ち明けた。
空「私、一人じゃ何にも出来なくて。で、でも、海はそれが『うざった
い』って!だから思わず…。」
千鶴は空の話を黙って聞いていた。その瞬間も、空の話は続く。
空「泣きながら思い返して、気付いたんです。私は、今までずっと
  海の背中を見て来たって。私の前にはいつも海がいて、それが
  当たり前だと思ってたんです。」
その口調の中に、海を憎み、妬む気持ちは少しもなかった。ただ、自分
に対する後悔の色が浮かんでいた。
雪「空さん……そんな事、ないと思います。」
空の顔を見つめて穏やかに、しかしハッキリと千鶴は言った。
雪「私が鬼として生きる事に恐怖を抱いている時、空さんの言葉で
  私は勇気をもらえたんです。」

——『人か鬼かなんて関係ないですよ!』

雪「空さんがいてくれたから、私は今でも此処に居られるんです。
  海さんだって、きっと分かっていますよ。」
空「え?」
雪「だって、海さんにとって、空さんは大切な人だと思うから。」
空「私が海にとって…そうでしょうか?」
空が俯いた時、柱の陰から声が聞こえた。
海「そうでなければ、私はお前を今まで守ったりせん。」
空「あ!!」
柱の陰から現れたのは、紛れもなく、海その人だった。