二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

-01- 第一章 嗚呼、素晴らしき悪循環 ( No.17 )
日時: 2012/02/04 08:39
名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)

-01-







 「またかぁ……。」


ご飯茶碗片手にチャンネルを回す。しかしどこのチャンネルを見ても映るのは黒いサッカーボール。出てくる文字も“破壊活動”、“エイリア学園”、と単調極まりない。


「……つまんない。」


どこの局も無表情な、まるでマネキンのようなアナウンサーが同じことを繰り返す。

若干乱れた制服に寝癖だらけの紫銀の髪、やる気のなさが全開の彼女、結祈は箸を加えたまま、むぐむぐと白米を頬張った。






「……やっぱり米って美味しいや。」


広々とした和室に小さな呟きが消える。









 「あれ、奏始君。……結祈ちゃんは?」
「遅刻です。」
「……あ、そうなの。」



赤い髪の少女の問いに、間髪入れずばっさりと告げた奏始。

そんな彼の二つの赤い目には呆れの色。
そして、









「それじゃあ、奏始君。それ……どうしたの?」
「……。」




彼の頬には真っ白な湿布。


「……結祈を起こそうとしたんです。そしたら寝ぼけた奴に殴られました。」
「うわぁ、流石結祈ちゃん……容赦ないね。」
「はい。だって目覚まし時計が幾つ犠牲になったか……ッ!!」


頬をさすりさすり言う奏始に、なんとも言えない表情を浮かべる赤髪の少女。

あからさまに不機嫌な奏始を見た彼女は手に持った鞄を抱え直しつつ困ったように微笑み、なびく髪を抑えた。

「なんか幼いねえ……二人共。」



青く高い空の下、グダグダと語る二人の前に続いていくのは鮮やかな緑と重たい灰色。もとい竹林の緑と長く続く石段の灰色。

スタスタと足を進める奏始とは対象に、赤髪の少女の足取りは重い。



「……会長、遅いです。」
「し、仕方ないでしょ!奏始君サッカー部だし、私は吹奏楽部だよ!?……体力の違いってもんだよ。」


会長と呼ばれた少女を数段上から見下ろす奏始。
ゼェゼェと息を荒げる少女、“香宮 史星”は自身を見下す後輩に大声を上げ抗議した。 

前に続くのは灰色の石段と緑色の竹林、上には青い空と白い雲。変わらない景色に飽きのきている奏始は自分の不機嫌が加速していっていることに気付かないのだ。





だから、




「……会長、俺先行きます。」
「え、ちょ、奏始君!?」

否応なしに自身を捨て、石段を駆け上がって行った彼をに刺さる香宮の哀れな視線には気がつかなかった。






「行っちゃった……。」

取り残された香宮は呟く。

変わらない景色の中で。