二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 夢中結愛信仰歌/リク短編受け付け中 【inzm】 ( No.28 )
日時: 2012/02/21 18:02
名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)
参照: 本編用スペースです

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 「……あ、サッカー部。」


少し遅れて学校に辿り付いた結祈は門を潜るなり、広いグラウンドを跳ねる白黒の球を見る。

フィールドに蠢く(うごめく)茶色と言うには明るすぎる色の、作務衣のようなユニフォームは何時見てもどう考えてもサッカーに向いている格好とは思えない。

ぼー、っと何をしたい訳でもなくただフィールドを見つめる。時折流れる風に衣服がこすれ、かさかさと音をたてていく。






そんな無意味な時間の流れを破ったのは。

「あ、結祈!!」
「!!」

先程まで眺めていたユニフォームと同じものを身に纏った特徴的な青い髪に小柄の少年。

「……木暮、僕さぁ一応中二だからね。君の先輩だからね。」
「だって、とても天咲さんと同い年には見えないからさ!」

うっ、と言葉に詰まる先輩を横目に、“後輩”詰まり一年生である彼は自身を否める言葉にも一切反省の色を見せず、小さく体を揺らし“うししし”と何とも特徴的に笑う。






「同じ環境下で育ったはずなのに。なんで何時も僕だけ幼く見られるのかなぁ……?」



ぐるぐると巡る思考の末、ぼそりとこぼれた呟きは青い青い空に音も無く消える。






 「……んじゃ、そういうことで。来週の土曜日な?」
「あぁ。宜しく頼むよ天咲君、何かよくわかんないけど花祭中の生徒会で一番しっかりしてるの君みたいだし!!」
「……うん。」

嬉しくも有り難くもない誉め言葉を頂き、引き戸を閉める。手に抱えた薄い四人分の資料が妙に重く感じて大きく溜め息を漏らしながら数十分前にも通った廊下を引き換えす奏始。
会長は来ない、書記は行方不明だなんて口が裂けても言えない。と重い気分で馴れない校舎を徘徊していたところ、運が良いのか悪いのか打ち合わせ相手である漫遊寺中の生徒会役員に鉢合わせ。そのまま否応なしに打ち合わせ開始、終了、そして今に至るのだ。


「……本当、世界って理不尽。」

赤い瞳を力無く瞬かせつつ長い長い廊下を進む。正直者が馬鹿を見る世界に背を背けながら。






そして、苦労人と自由人が再開するまで後少し。