二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 夢中結愛信仰歌  【inzm】 ( No.60 )
日時: 2012/03/13 14:37
名前: 天音 (ID: cSw9GUzL)

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 自身前方、数メートル先に見た集団に目を瞬かせる奏始。
否が応でも周囲の目を引くであろう青と黄色のジャージは案の定、辺りを歩いて行く漫遊寺の生徒から視線を集めており当然の如く目立つ。

「なんか面倒くさそうな集団だな……関わりを持ちたくないと言うか、何と言うか。」

独り言としてこぼれた何とも失礼な心情には触れず。

“人は見た目じゃなく中身だ”というおめでたい綺麗言を頭から叩き出し集団に背を向け普段より少し早めに足を進める。心中でこれから彼等と関わるであろう此処、漫遊寺中のサッカー部にエールを送りつつ。

(生憎、面倒な奴は一人で十二分なんだよ。)

嫌みかと思う程に晴れ渡った空の下で。


「あぁ、もう俺って何か不憫だよなぁ……。」

その面倒な奴を捜すべく、彼は足を進める。
















 「……きて、お………起きてください!!」
「ッ!?」

耳を突き刺さす大きな声に覚醒を余儀なくされ、渋々視界を開く。
頬を撫でる風は眠りこける前より少し冷たくなり見上げた太陽も僅かに傾いていた。自身が睡魔に負ける前、総力を上げて作られていた落とし穴は綺麗に完成しており制作者木暮の姿も見えない。

以上のことから自身がかなりの間眠っていたことを寝起きのぼんやりした頭で推測する結祈。開いたまま焦点の合わない瞳は薄い涙の膜で覆われ宝石のように輝きながら、霞んだ視界を映す。


「あ、起きました?良かった!!もしも死んでたりしたらどうしようかと思ってたんですよ!?」
「……ごめんよ生きてて。」

ぱちぱちとまばたきを繰り返しぼやけたピントを合わせる。一体誰だか分かったものじゃないが浴びせられた嫌味はしっかり返し、ついでに頬を膨らませて起こされたことに対する軽い怒りの感情を伝えようと努力する。

が、

「いや、いいんですよ?まぁ寧ろ死んでたりする方が迷惑ですし?」
「あぁ何だ、ただの不審者か……お願いします、とっととお失せ下さい。僕もう寝るんで。」
「え、ちょっと!寝ないで下さいよ!!ねぇ!!」

それはどうやら伝わっていないらしく。
さらに声を荒げる紺色のボブヘアに赤い眼鏡、見たことのない制服らしき物に身包んだ女子。

「あの!ちょっと……いい加減に起きて下さいよ!」

ぎゃんぎゃんと犬のようにに吠え続ける彼女は目の前で眠る少女に起きろ起きろと呼びかけるが、そんな努力とは裏腹に閉ざされた青は微動だにしない。

そよそよと穏やかに凪ぐ風だけが、時の巡りを教えていた。