二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 夢中結愛信仰歌  【inzm】 ( No.67 )
日時: 2012/03/17 19:05
名前: 天音 (ID: cSw9GUzL)


−08−







 「ったく……あの馬鹿、何処行ったんだ。」



捜索を開始してから早二十分。

生徒会同士の会議が終った今、本来なら学校に連絡を入れ、家に帰宅できている筈なのだ。だかしかし、面倒な連れのせいで家に帰ることはおろか慣れない他校から出ることも不可能。

まぁ、なんとも不憫なことである。


「せっかく俺が仕事終らせてやったのに、帰るときまで行方不明とか嫌がらせかよ。」

本当何処までも嫌な奴、と内心吐いた悪態。
鮮やか過ぎる空が不愉快過ぎて少し歪んだ顔。

赤い目に映るのは見知らぬ校舎に生徒、極稀に教職員や用務員。
探している姿は一向に見つからず、どんどん膨らんでいくストレス。



「「あぁもう!!」」

自然と声に出たのは自分、奏始の行き場のない怒りと苛立ちだけ。
しかし、聞こえた音は自身のアルトと、



「起きて下さいよッ!!」

聞きなれない甲高いソプラノ。











 『だから、あの子は巻き込むべきじゃない。あの子は、流戯は……危険すぎる。』
「……へぇ、永恋がそこまで言うならそうかもなァ?」






場所は変わって、とある花園。
片耳から響く電子音混じりの声に顔を綻ばせた少年が一人。






『アンタ、知ってるでしょう?この“ゲーム”には裏がありすぎる、多くの情が交わりすぎてる。……あの子には重いってこともね。』





その言葉に気だるそうに世界を移していた緑が見開かれる。まるで“驚いた”とでも言うように。
しかし電話線が伝えるのは音声のみ、その行為が相手に伝わることは無い。


「そりゃあ、知ってるさ。なんだって、オレが教えたんだぜ?」


腰掛けた花壇がカタリと音を立て、足蹴にした花達は抵抗することなく地面に頭を垂れ、ゆらりとなびいた黒髪は小さく宙を彷徨い、彼の肩に落ちる。

小さく息を吸った音が携帯の向こう側から漏れ、相手の焦りが垣間見えたところで彼は雄弁に語る。

さながら幸せな物語を読み聞かせるように。






「なぁ永恋、オレはな?戯者の無知、開催者の意図、観戦者の私情に天使の欲望、悪魔の采配、もっと言ったら堕落者の末路も敗者の運命も全部知ってるぜ?」



顔に広がる黒い笑顔、返事など聞かず強制的に切った通話、力強く踏み潰した花は儚げに宙を舞う。
























  ( 喜劇の裏を知る道化師と、悲劇を望まない女神 )





「そりゃあ当然、この“ゲーム”に————









































             ————“勝者”なんて枠がないこともな……!!」




                       (墜ち切った天使のなんと哀れなことか、)