二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 夢中結愛信仰歌 【inzm】 ( No.70 )
- 日時: 2012/03/28 19:24
- 名前: 天音 (ID: cSw9GUzL)
-09-
それは優しい堕落者に捧ぐ、最初で最期の鎮魂歌。
「……ありがと、さよなら、良き夢を。」
*
「……もう、良い加減にしてよ!煩いんだよ君!!」
自分のアルトと重なったソプラノに次いで聞こえたのは、毎日毎日聞いている、
「……やっと見つけた。」
探し人の怒鳴り声。 
声のする方向は自身の右手前方、数メートル。石畳に沿って植えられた木々の裏側からだった。
垣根に邪魔され姿を見ることはできないが、時折ひょこひょこと見え隠れする紫銀の髪には見覚えがある。
「僕はね、君のことなんか知らないの!迷子だかなんだか知らないけど、自分でなんとかしてよ!!」
勿論、親切心と言う親切心が自身の従兄弟に欠片も無いこともしっかりと身に染みているのだ。
その為、心に浮かぶ呆れと零れるため息とは相対に自然と体は動き、
「……って、偉そうに言うなら自分で自分の仕事しろ。」
「うえっ!?奏始ぃ!?」
「だ、誰ですか!?」
がさ、と枝を掻き分け会話に割り込むのに、そう時間はかからなかった。
『なぁ永恋、オレはな?戯者の無知、開催者の意図、観戦者の私情に天使の欲望、悪魔の采配、もっと言ったら堕落者の末路も敗者の運命も全部知ってるぜ?』
「!?」
小さな電話から聞こえたのは見知った少年の声、しかしそれはさながら死刑宣告のようで。
ボクも電話する!、と足元にまとわりつく銀色の少年をいなしながら、必死に脳内で言葉を解析する。
そして、彼女は気付くのだ。
“戯者の無知、開催者の意図、観戦者の私情に天使の欲望、悪魔の采配、堕落者の末路、敗者の運命”
途切れた通信には目もくれず、
“全部知ってるぜ?”
彼が告げた言葉の裏側に。
「“勝者”は……何処?」
手中から滑り落ちた携帯は、重力に逆らうことなく地に音を生んだ。
(道化師の狂気、それはさながら死刑宣告のようで。)