二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 夢中結愛信仰歌  【inzm】 ( No.76 )
日時: 2012/04/08 21:54
名前: 颯 (ID: YzjHwQYu)



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「何が嫌だって、あいつら頭硬いんだよ。いくら頼んでも全然試合してくれないし、すぐ煩悩がなんたら言うし、」
「……え、そうなんですか?」

身振り手振りと忙しなく語る結祈に、瞳を見開いて驚きの声を上げた春奈。
話を聞いたところ彼女の言う“はぐれた先輩”はサッカー部の面子であることが判明し、奏始の提案からおそらくやって来るであろうサッカーコートに彼女を送り届けることになったのだ。

「そうやってね、どっかの和尚みたいな事ばっか言うくせに髪の毛はふっさふさだよ?もう分けわかんなくない?」
「……でも相手チームが皆そんなのだったら戦えたもんじゃないすよ?……笑えて。」

女子特有の高く、軽い、笑い声。

コツコツと石畳に足音を打ち付けながら自身の前を歩く二人に声をかけることもなく、奏始はふと空を仰いだ。


「……空……色、か。」


淡い水色、所謂空色に白い雲が栄える。
脳裏を掠めたのはいつかの記憶。








ーーーーPlease, find me!ーーーー








あの時、あの場所で見た空色は二つ。昼の空と真夜中の空。確か青空も夜空も涙に濡れていた気がする。
手を伸ばしても届かなくて、視界も充分じゃなくて、体は自分の物じゃないみたいに動かなくて。








ーーーーFrom waiting, from waiting, someday!ーーーー










「……“Come to help."なんて、」

“無理に決まっているのに。"

呑み込んだ言葉は重くって。


そんなことを思うと、何処までも続くパステルカラーの空が急に憎らしく感じた。



(夕焼け色の者から空色の者達に捧げる、)























真っ白な森の中、


「さあさあ“聖女様”、貴方の番だ。」
「じゃあ……。」

白の歩兵が黒の騎士に殺された。
モノクロカラーの盤からまた一つ、手駒が、敵兵が、消える。


「ありゃー、容赦ないなぁ……。」

と、言葉にするものの薄ら微笑んだ白い少女は仇打ちとでも言うように戦車で黒の歩兵を弾く。
弾いた歩兵を手中にし、淡い紫の瞳が細められた。


「“聖女様”、最近調子はどう?あ、あれかグロリアがいるから絶好調だよね。」
「……アイツは嫌い。」

白い少女、基“エディータ=クレイモア”は駒を弄びつつ笑う。
ふわふわとした白髪に一房だけ交じる黒のメッシュは、彼女の手に堕ちた駒達と同じ色。

「アイツは嫌いだ。」

カコン、と軽い音をたてて黒の歩兵が前進する。




灰色の頭髪に真っ黒な服装の“聖女様”。
深い漆黒の瞳はまるで夜中のーーーー


「嫌いって言われても仕方ないんだよねー……。だってアンタ“15のThe Devil”でしょ?」


“絶対的にグロリア側のカードじゃん、”

そう続けたエディは、さも面白くなさげに呟いた。






(堕ちた夜空は自らの醜態を嘲笑う。)