二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 夢中結愛信仰歌  【inzm】 ( No.86 )
日時: 2012/06/13 21:18
名前: 颯 (ID: Cb0oSIti)


-04-






 「そういや、白鳥兄妹。なんでわざわざ僕らの家にきたの?」

「あぁー……言って無かったっけ?」

出された粗茶を片手に、へらり。
笑う哀零に対して眉を潜めた結祈は、無遠慮にも客人に舌を打った。


「……どーせ、ロクな事じゃないんだろ。」















「へぇ、……解っちゃった?」


軽い口調とは裏腹に冷めた表情をした哀零は、紡ぐ。



「そろそろだよ、……覚悟しておきな。」

しかし、その声音や顔色の裏に若干の笑いが含まれていたのは、彼女との付き合いが長い結祈ですら解せたものなのかは分からない。
ただ、なんの気もなく上着から携帯を取り出した奏始が着信履歴を確認し、顔を歪めたのはばっちりと視界に捉えていたのだった。

「まっ…….まさか、」













「……い、祈守か?」
『ん?もしかして兄貴分の声を忘れたのか?……それはいただけないなぁ。」

仲間に断りを入れ、集団から少しばかり離れた鬼道。走って走って、ふと目についたベンチに腰を掛けてコールをとったのは今から約数分前の自分。

「……いや、別に忘れていた訳ではないが?」

そよそよとさざめく木々に耳をすませ、言葉を繕う。時たま眼前を通っていく生徒達に軽い会釈をしながら語る電話からの音声に返答をかえし、通話を切断しようとする本能を必死に抑える。
何故なら。単刀直入に嫌いなのだ、この神坂と言う男が。

もしも第三者がどこが、と問うならば彼はこう答えるだろう。



『あー……まぁいいや、あれだろ?今エイリア学園とかの討伐で忙しいんだろ?』
「……なんでそれを知っているんだ。」



“放浪癖”。
幼少時、紙切れ一枚を残しフラリと生活空間から消えた彼に覚えたのは他でもない絶望感。当時、訳あって鬼道の家に居候していた祈守はそんな奇妙な人物だったのだ。

そして、もう一つ。























「だって、見てたし。」


悪意の無い、興味本位からのストーカー行為とでも言うべきか。

携帯越しではなく空気の振動に、つまり生声に鼓膜が震えた。
いつのまにやら背後を取り、ニヤニヤと嗤う青年には嫌気が差してくる。はぁと零した溜息は青年の瞳同様、綺麗に澄んだ空に消えた。


「Piacere!!……Come stai ?」
「……日本語で頼む。」


@


イタリア語

「Piacere!!……Come stai ?」

→「会えて嬉しいよ!!……調子はどう?」