二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 夢中結愛信仰歌 【inzm】 ( No.88 )
- 日時: 2012/06/23 16:56
- 名前: 颯 (ID: Ft4.l7ID)
- 参照: 誰か合作しませんk
-05-
「それで?暇になったから日本に戻ってきたって?」
「……まぁ、そう思ってくれてかまわないかな。」
イタリアも良い所だったんだけどねー、と。空いていたベンチの左側に腰をかけ、祈守は笑った。
限りなく黒に近い紫髪に、それに相対する限りなく白に近い水色の瞳。
傍らに置かれた荷物は彼の私物と思われる物より、明らかに土産物と取れるものが多く異国の雰囲気を目に見せる紙袋には、正直に言うと目が痛い。
「あ、有人にもお土産は買ってきたからなー?」
「……今度は何を買ってきたんだ。」
“要らないものなら速攻で捨てる。”と赤い紙袋から飛び出た木刀を見つめ、鬼道は苦虫を噛み潰したような顔を見せた。
奴の土産のセンスは尋常じゃない。
前回、オーストラリアに行った彼から貰ったのは妙にリアルな単眼のコアラのキーホルダー。
正直、意味がわからかった。
そして今回もそうだろう、何が好きでイタリア帰りの者から木刀を貰わなければならないのか、木刀を受け取ることになるであろう顔も知らない人物には心底同情する。
「……いや、買ってきたんじゃないな。」
そんなことを思っていたからか、鬼道の耳に祈守の呟きは届かなかったのだろう。
「“連れて来た。”……が、正しいな、この場合。」
ほら来た、と。
屈託なく笑う祈守の視界の角で、
「……うぇ、帰ってきてる。」
「哀零の言った通り、か。仕方ない、腹をくくれ……諦めろ。」
明るい茶色と、紫銀が揺らめいた。
そして、場所は変わって結祈と奏始の自宅。
「二人とも……会えたかな?」
「会えたんじゃないか?凄い嫌そうな顔してたけどな。」
奏始の携帯の伝言に顔を青くした二人が、客人である二人を放り出して家を飛び出して行ったのは数分前の出来事。
「今回のお土産はなんだろーね?」
携帯を片手に、哀零は小さく嗤う。
青い空、白い雲。
その中を翔るのは、
「……ほんっと、なんでこんな鉄の塊が空飛ぶんだろ。」
信じらんない、と。
白銀の髪を無造作に掻き揚げ、少年は思考する。
小さな窓から空を見下ろし、深い青の瞳を細める様子は傍から見れば“恰好良い男の子”と見えなくもないのだろうか。
いくら、吐いた台詞が年寄り臭くても。
「ねぇねぇ実告、なんか甘いもの持ってない〜?お腹空いたんだけど……。」
「黒君、ホント良く食べるね。見てて胃もたれしそう……。」
「あ〜……適当に僕の鞄漁ってみて?チョコかなんか入ってるし。で……美夜、それ禁句。」
言われるが早い、ガサガサと鞄を漁りだす菖蒲色の髪の少年。
お菓子のレシピ本を片手に苦笑いをする藍色の髪の少女。
実告、と呼ばれた少年は背もたれに体重を預けつつ微笑む。
「僕も黒も美夜も、久しぶりの日本でしょ?どっか観光したいとことか無いの〜?」
「……甘い物あるなら、どこでも。」
「え……お寺、とか?」
“いや、もっとあるでしょ”。
そう的確に突っ込む実告は仕方なさそうに、また、笑う。
「楽しいお祭りの前夜祭みたいなノリで……ね?」
彼等を乗せた飛行機は、青い空を翔る。
(静かに、僅かに、確実に。運命の輪は駒を集わせて、)