二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

未来への黄金夢想曲 ( No.9 )
日時: 2012/03/07 22:23
名前: 雪華 (ID: l2K1ra0t)

(2)謙虚なストーカー+律儀な鈍感者

















雷門中 対 星裂中の練習試合は0-3、前半もいよいよ終盤というところで御開きとなった。
なぜかって? 理由は単純。

 “誰も試合続行可能な状態にないから。”

もっと言えば、

 “FW・MF・DFともに重軽傷、GKは気絶。”

なんていう意味不明な試合状況となった原因である星裂の選手お二人組はフィールド上で呑気に会話を交わしていた。






「救急車? え、あれって火事の時に来るヤツじゃなかったっけ?」
「違う。それは・・・消防車。でパトカーが警察で、トラックは工事現場。」



へぇー、と人に聞いておきながら既に少女の興味は到着した救急車に向いている。
そんなチームメイトに溜め息をついたわけでは無さそうな少年。
黒地に黄色いストライプがはいったスパイクで落ちていた石を蹴り、「あっ。」と飛んでいった石を取りに行くような動作を装いながらグラウンドと校舎の間にある茂みに立ち入った彼がまず初めに口にしたのは。








「覗き見なんてみっともないことしないでよ。おまえみたいなオエライサンがそんなことやってるのを見るのも、俺にはまた一興だけどさ。」

















担架に乗せられた円堂を前にして、不安げに名を呼び続ける陸上部姿の青い髪の少年、風丸一郎太。
そんな彼の肩をそっと叩いたのは先ほど救急車と消防車の違いが判っていなかった星裂の少女。
風丸は救急車の中へと運ばれた円堂を見送ってから、彼女に向かい合った。



「ねえ、円堂くんの様子はどうなの?」



軽く微笑みながら問いかける哀零に、風丸はぶっきらぼうに答える。
彼は絶対に少女と目を合わせようとはしない。終始———日に当たって輝く金色の髪を見ていた。



「気絶だとさ。・・・っていうか、おまえが俺に聞く権限あるか? 最後にシュート決めたのおまえだろ?」
「さあ———なんかの間違いじゃない?」



気絶した円堂の友であるくらい重々承知していたのに、わざわざ彼に尋ねたという鈍感者。
車の種類を間違えるだけなら笑って済ませられるのだが、人を一人気絶させた選手として、素直に認めるのが当たり前のはず。
しかしその辺りを誤魔化そうとする意地の悪い奴。風丸が哀零に対して抱いた第一印象は———第一印象なのかというとそうでもないのだが———最悪な結果となった。
まあ、それも彼女が火に油を注ぐ言動を加えたからなのであるが。
太陽が陰る。
険悪なムードのなか・・・少年の怒りを爆発させた発言とは。





「でも気絶したのは彼の責任だからね。」