二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ポケスペ〜炎天パラメータ〜 ( No.23 )
日時: 2012/04/18 21:58
名前: 周波数3.3 (ID: cA.2PgLu)

第九話


「……よく眠ってるね、この子」


無事、荷物を小屋まで運び、今は穏やかな寝息をたてて寝ている少女を見守るアケビ。その表情は子を見守る母のようだった。
暫くすると、見ているこっちも眠たくなったのか、うつらうつら、とし始める。それを見て、隣にいたクオンは尻尾をぱたぱたとさせて、「寝てもいいよ」と合図(が、これがアケビに伝わったかは定かではない)。まあ、大体伝わったらしく、「ありがと……」と言ってすぐにこてん、と寝てしまった。

(……そんなに眠かったなら寝ればよかったのに)

少し呆れながらも、睡魔がクオンにも移ったのかうとうととしてくる。
数分たった小屋の中では、2人と1匹の静かな寝息だけがあった。



そして、アケビはとある夢の中__


周りを見渡せば大きな"紅"。
視点は高くて、なんだかとても不安な気持ちでいっぱい。そこから、沢山の映像が流れてくる。


"おかあさん……、おとう、さん……? "

"まっかっか……、あつい……"

"おじさん、だあれ……? "
"まっくろくろすけの、おじさん"


一気に沢山映像が流れこんできて、混乱せずにはいられない。小さい彼女、それを私は見ていることしかできなかった。
映像の、シーンが飛んだ。


"きらい、きらいっ……。おじさんきらい!! これ、わたしのだいじなもの。おじさんなんかにやらないっ "
"煩いガキ……、___、こいつを黙らせろ"


"まっくろなおじさん"の後ろに隠れていた黒い影。
なん、だろう。とても怖い。顔から血の気が引いていくのが、手に取るようにわかる。震える、体全体が。

じりじりと小さい彼女ににじり寄る。


"や、こっちこないで……、こないで……! "
"やれ、__"


い、やぁ……。こわい、こわいこわいこわい!
もう、みたくないっ…………!



そこで、意識は途切れた。




がばっ、

息切れをしながら、冷や汗をかきながら飛び起きる。とても怖い、昔の夢を見た。窓を見ると明るい、もう朝日が上っているようだ。


「ゆめ……、だよね」
「きゅうん? 」
「きゅるる? 」
「ぐるる……」


ん?ふと耳元から聞こえた鳴き声。うん、めっちゃ近く。
少しだけ横を向いてみると、私を心配そうな目でじーっと見つめているクオン、ノイズ、デインがいて。もしかして……、と反対も見るとそこにはツバキ、シラナミ、サトリ、……少し離れたところにアゲハ。
驚いて声もでなかった。ていうか皆勝手にでてくるね、自由だねえ!……その自由なポケモン達の主人がここにorz


「あー、ごめんね、なんか。嫌な夢見てて……、魘されでもしてたかな? 大丈夫だからねー。……アゲハも、出てきてくれたんだぁ? 」


にやり、と意地悪い笑みを浮かべてやると、アゲハことリザードににどげりを繰り出される、顔に(正確にはほっぺに)。むぎゅう、いてーよ。なんで顔にするんだよ馬鹿ぁ!…………あれ、リザードってにどげり覚えた?覚えられた??!


「んん……、ここ、は……? 」


リザードと取っ組みあっていると(理由はいわずもがな、こいつが私ににどげりをしたからである)、その音で目が覚めたのだろう。少女が目を開け、起き上がる。今はアゲハと喧嘩している場合じゃない。……って、あれ。皆いないんだけど。クオン以外ボールに戻っちゃった??……、お前ら全員人見知りかよっ。


「起きた? 君ね、昨日の猛吹雪の中、倒れてたんだよ? あ、熱とかないかな? 体、暑くない? 」
「助けてくださったの? 有難う! ええ、熱は、ないわ」
「いえいえ、どういたしまして。熱はないんだね、よかった……」


女の子は満面の笑みでお礼を言ってくれる。え、なにこの子。女神じゃないか!! でも、なんか違和感ある気がするのだけど。
ま、どうでもいいけどさ。


「お腹空いてるでしょ?ちょっと待ってね……、っと、はい! サンドイッチなんだけど、食べれる? 」


買い置きのサンドイッチを袋から取り出して、差し出す。……?なんでだろ、女の子、きょとんってしてる。いや、可愛いけどね。
戸惑っていたようで、少し控えめな様子でサンドイッチを受け取る。なだか心底不思議、みたいな表情している。一瞬、彼女の口元は優しげな形に緩んだ。


「いだだき、ます」
「はい、どうぞ」


自分も笑顔で、サンドイッチを頬張る。……ああ、あとで皆にもご飯あげないとな。今は……、無理そうだ。まったく、私のポケモン達の中で社交性があるのはクオンだk…………、違うや。クオンもそっぽ向いてるや。かろうじて外に出てるだけだこいつ!


「……あ、そういえば自己紹介がまだだったよね。私はアケビ。お嬢さんは? 」
「アタシはブルー、宜しくね」


お互いは握手をして、ちょっとした雑談を始める。それは女の子特有の、「好きな人いるの?」とか「お気に入りのファッションは?」とか。まあ、どちらにせよあまり私には関係ないことなんだけど。
話してみてわかることっていっぱいあると思う。例えば、ブルーちゃん……もといブルーは結構人懐っこい。いや、違うな。なんというか、初対面でもすぐに馴染む才能みたいなのをもってる。段々と、前から知っていた友達みたいな感覚になっていく。
こんな子はきっと皆から好かれるんだろな、なんて。ほんのちょっと話しただけで一丁前に嫉妬だなんて、我ながら呆れる。


「……アケビねぇ、さっきからその話し方はなに!? 」
「え!? 私なにか変だったかな? 」
「ええ、変よ。特にその女の子を神格化しているみたいな話し方! アタシ達はもう他人同士じゃないのよ、ちゃんと普通に話して頂戴」


ずいっと顔を近づけて、ちょっとむくれた表情でブルーは私にそう言い放った。まあ、確かに私は女の子と話すとき、意識して話すけれど。そんなに変な話し方だったのかな。
……でも、嬉しいな。こんなにちょっと話しただけなのに、ブルーは私をもう友達と思ってくれている。自意識過剰とかかもしれないけど、さ。

実をいうとさ、私から女の子にブルーみたなことを言ったことはあるけど、女の子から私に言ってもらったことなんて、一度もないんだ。……悲しいことにね。
だから、本当に嬉しいんだよ。——ありきたりなんて言葉、もうとっく聞き飽きてるんだぜ。


「……ああ、そうだね。私は少し女の子を意識しすぎていたみたいだ。じゃあ、私も素で話すよ」
「うん、よろしい! 」


ぽふ、と私の頭に手をのせて、眩しいほどの笑顔を見せてくれる。
まるで月のよう。太陽は眩しすぎて、月ぐらいがちょうどいいい。手の届かない高嶺の花なんて、私は嫌だ。



「ブルーはさ、これから何処にいくつもりなの?」
「タマムシシティよ。あそこで一儲け……、いいえ、なんでもないわ」


んん?ちょっと待ってよブルーさん、貴女今一儲けとか言いませんでした?
ぶ、ブルー、今とってもいい笑顔してるんだけど!「今の、聞いてないわよね? 」みたいになんかの圧力をかけられてる気がするなあ!
今、初めてブルーのこと怖いって思ったよ。本当に……!


「あ、あのう……。ブルー? 今一儲k……、ああ! なんでもないヨ! えへへ、私の聞き違いだったみたーい! 」
「……もう、いいわ。目で釘さしておいたのに、そんなに気になるならおしえてあげる。
驚かないでね? 私はね、」