二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 炎天パラメータ【ポケスペ】 ( No.3 )
- 日時: 2012/04/02 15:18
- 名前: 周波数3.3 ◆QDM2NgkqeM (ID: cA.2PgLu)
第三話
「はぁ、はぁ……。どうしたんだよ……。お前達、俺が助けを、なんだっつったっけ? 」
服はぼろぼろで、所々切れたりしている。だけど、それ以上にあいつらはボロボロで地面に倒れこんでる。俺とポケモン達は立っているけれど、辛うじて、という所。
「こいつ……、子供のくせになんでこんなに強いんだよ……」
「俺が強いんじゃない、ポケモン達が強いんだよ。
__負けたんなら、さっさとこの街からでていけ……! 」
……私1人なら、勝てるどころか、こいつらに啖呵を切ることもできなかった。私は、戦ってくれる仲間がいないとそんなこともできない臆病な人間。
そう自分で思ったくせに、なんだかとても悔しかった。もどかしく感じた。
ジュンサーさんに突き出してやろうと思ったけど、私はなにか犯罪をしている所をみたわけではない。でも、こいつらならピジョン達を攻撃してた時点で、捕まって当然なのかもしれないけど。
すぐに黒い服の奴等はでていった。去り際に私を睨んでから。
「……あ、あはは。やっちゃった、なぁ……。
ごめんね、皆。巻き込んじゃって……」
緊張がとけて、へたりと地面に座り込み、皆に謝るにはなんだか申し訳ない格好だけど、謝罪の言葉を口にする。それに「そんなことない」と、穏やかな表情で首を振る皆に涙が出そうになった。別に、涙脆いわけじゃないだから。
「あーあ、この格好どうしよう。母さん達になんて説明すればいいんだろ……。__まあ、終わったんだし、帰ろうか」
「……アケビ!? どうしたの、その格好! ……とりあえず家にあがりなさい」
「はい……」
家に帰った私は、案の定母さんに驚かれた。……うん、ちょっと怒ってた。ちょっとね。
温泉入ってきなさいって言われたから、言われるままに温泉に。普段は滅多に入らせてくれないけど、今回は特別だそう。ここの温泉、治癒効果があるから。4匹と1人で入っても狭くは感じない。改めて、この温泉の広さを知る。
「さあ、お母さんにちゃんと説明してくれるわよね? 」
「はい……。えっと、最初は普通に散歩してたけど、でも途中で……」
必死に説明した。怒られないように所々捏造……、したかったけど焦ってできなかった。その前にそんな器用なこと、このお母様の前じゃ出来やしない。
「……はあ、無茶するわね、貴女も。もうそんなことしないで、……といいたいけど、きっと無理でしょうし。いいわ、今回は特別にお咎めなし。
それに貴女がしたことは、お母さんは正しいと思ってるから」
「ありがと、母さん。それで、その、……迷惑かけてごめんなさい」
少し照れくさいけど、ちゃんと言う。それに笑って「いいのよ」と返すお母さん。
"続いてのニュースです"
つけっぱなしにされていたテレビの音。ちらりと見ると、そこには思わず目を見開いてしまうニュースが、取り上げられていた。
"今日の午前2時頃、トキワの森で何者かによって数匹のポケモンに、悪影響を及ぼす薬が投与されていた事が今日の午前8時頃にわかりました。
犯人は単独ではなく集団によるものとされ__"
目撃情報では、全身が黒い服の集団らしい。薬を投与されたポケモンは目が充血し、暴走していたようで、発見から数十分後に、死、亡…………?
あぁなんでだろ、胸の奥から黒くてどろっとしたモノが溢れ出してきそう。こいつら、どこまで堕ちているんだ。何の罪もない、何の関係もないポケモンをっ…………。
折れそうなほど、歯を強く食いしばる。固く握った手、伸びた爪が食い込んで痛い。そうでもしないと、怒りと無力さ故の悔しさを紛らすことができなかった。痛みが、一番の鎮静剤だった。
今ここにいたら、母さんに当たってしまいそうで怖くて、どたどたと2階の自室にいき、ベッドにダイブする。
「なんで、なんで私はこんなに無力なんだよ……。自分の故郷ポケモンが守れないなんてっ。
私が頑張った意味なんて、ないみたいじゃない……」
ベッドに仰向けになって、目を腕で覆う。目からは確かに涙が溢れ出していて、口元は悲しげに歪んでいた。
"アケビっ、怪我は、ない? "
"……、おかあさん。わたし、だれもたすけられなかった……っ"
"……いいのよ、貴女が責任を感じることない。悔しいなら、これから強くなればいいんだから"
__あの時、誰も救えなかった。自分のことで精一杯で、一番私がそう出来たはずなのに。
今度も、私は救えなかった。私が一番知っていたことなのに。気づかなかったのは、今度こそ私の責任。
怒りと悔しさが、睡魔にとけて消えていく。それでも、この怒りと悔しさは、忘れはしない、から……。
部屋には、すぅすぅ、と穏やかな寝息の音だけがあった。
あとがき
シリアスなシーンって苦手……。