二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: inzmGO【音は1つになり、空へはばたく】 ( No.107 )
- 日時: 2012/05/09 19:29
- 名前: 風風 (ID: tCmJsotq)
「にしても、今年は見事に咲いたな」
先程、狩屋が言っていた、甘ったるい紅茶を口に一口つけた霧野は庭に満開に咲くサクラを眺めていた。
「あぁ。去年は、小さな内戦が起こり、ここもかなりやられたからな」
霧野の視線を追った神童は、そのことを思い出しているのか、瞳はどこか不安げで、揺れていた。
「ぇ、去年も...ここは内戦が起こったんですか?」
内戦 という言葉に1番に反応したのは歌海で、その表情は、深刻そうな顔だった。
そう、彼女も戦争で心を痛めた者であるからだ。
「まあ、去年のはすぐに収まったんだけどさ、10年?11年ぐらい前のかな?あの...あれだよ...そ!《トレイス》で起きた、革命派国と支配派国の戦争!あんときはすごかったすよね」
何気ない狩屋の思い出話。
だが、歌海には重大な思い出話である。
トレイスという名前が出た途端、紅茶を含もうとした唇は-キュッ-としまり、-カチャン-と陶器と陶器が重なり合う音がなる。
歌海がティーカップをカップ皿に乗せた音だった。
そんな、細やかな変化に霧野は気がついたのか、少し態度が変わった歌海を不思議そうに横目でみた。
「あぁ。あの戦争でトレイスは...」
悲しそうな表情で神童は、ズボンの生地を握りしめる。
「うん。僕はそんときのことは、まだ4、5歳だからよくわからないけどさ、トレイスは行ってみたい町だったよ、神秘的で、美しい硝子の町....1度は行ってみたい町だよね」
1人で黙々と紅茶を飲んでいた玲音は、飲み干した空になっているティーカップを起き、憧れのようなキラキラと輝いた瞳でトレイスという名の町を想像する。
それは、凄く美しく神秘的な町だった。
「トレイスには、ここ、神童財閥との契約を結んでいる硝子細工屋が数多くありました。この屋敷のシャンデリアは殆どがトレイスの職人さまたちが、作り上げた傑作です。」
一通りの仕事を終えたレイラは、一通りの会話を聞いていたらしく、まだ誰も座っていないソファに腰をかけ、1口紅茶を含む。
「今年も、内戦が起こらないといいがな」
「はい。」
神童の小さな不安に歌海も頷く。
「だが、今年は油断できないぞ。支配派国の力が異様なまでに攻め込んできている。もしかしたら、トレイスの時よりも、ひどく残酷になるかもしれないぞ」
霧野の深刻な予想は、辺りを一瞬にして静まり返らせていた。