二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D・Gray-man 〜涙のメロディ〜 コメ募集中!! ( No.105 )
- 日時: 2012/08/19 16:17
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
第3粒「これはシナリオという名の箱庭の中」
「———、よっと」
屋根の上から飛び降り、着地する。
「大丈夫?」
あたしは地面にしゃがみ込んでいる少女に声をかけた。少女は、ほとんど放心状態になっていた。
———無理もない、と思う。目の前で人が殺されたのだ。
少女は数秒間、ずっと沈黙を置いていた。しかし、緊張がとれたのか。・・・ガバッとあたしに抱きつき、
大声で泣き始めた。
「う、うわああぁぁぁぁぁぁん・・・———」
少女の泣き声が、夜の街に反響、木霊する。
たぶん殺されたのは少女の弟なのだろう。見たところ少女は6〜7才だった。そんな幼い精神で保つわけ
がない。目の前で自分の弟が殺されたのだ。大切な人が殺されて、平気なわけがない。
———大切な人が、死んで。
「———ッッ!」
思わず唇を噛み締める。悔しい。間に合わず、助けられなかったことに。
そして、激しい怒りを覚える。なんでもっと、早く助けられなかったのか!
「ゴメン、ゴメン。・・・・・・ゴメンねッ———!」
そんな、かすれた声しか、出なかった。あたしが泣いても意味がない、のに・・・。
泣き崩れていく少女をあたしは、強く、強く、抱きしめる。
ただ、それだけしかできなかったから・・・———。
「・・・もう、大丈夫?」
「・・・・・・うん」
少女は力なく頷いた。
少女の名はセシリア。母におつかいを頼まれたその帰りに、アクマに襲われたのだという。
・・・・・・ほんとは言いたくないけど、・・・しかたないな。
「ふう・・・」とあたしはため息をついて、
「セシリアちゃん」
と声をかけた。するとセシリアが顔を上げる。表情は精神的に疲れ切っていて———、これはヤバイ、と
思った。
「・・・あのね、アーサー君を蘇らせてあげる、って言ってくる人がいるかもしれない。でも・・・」
一息置く。
「———絶対にダメだから、ね」
アクマは、「機械」と「魂」と、「悲劇」を材料に造まれる。
人には誰しも心に闇がある。その闇が「悲劇」により、深くなった者の所に<製造者>———千年伯爵が現
れ、アクマを造む。
人の心の闇により呼び出された魂を、魔導式ボディに閉じこめることにより、アクマは完成する。
セリシアの顔が、怯えた表情になった。あたしの言った言葉の恐ろしさが分かったのか・・・。いや、あた
しの顔がきっと怖ろしい表情になっていたのかもしれない。
セリシアは、ゆっくりコクリとうなずいた。
それを見届けると、その後あたしはその場から立ち去った。
「・・・サクラ? どうしたの、そんな深刻な顔して」
「えっ、あ、だっ、大丈夫だよ」
リナリーが心配してる。ダメだ、こんなところで思い出しちゃ。・・・昨日の任務の。・・・・・・きっと、あの
少女はアクマを造ってしまうかもしれない。
———そのときはきっと、あたしがあの子を、・・・・・・———。
「なんだい、この子は!?」
コムイの声が聞こえた。思わずそっちへ向かう。どうしたんだろ。
「ダメだよ、部外者入れちゃあ〜〜〜。なんで落とさなかったの!?」
と、いうことは、そいつ、あの崖を登ってきたのか。すごいな・・・。あたしはある意味感心した。
「あ、コムイ室長。それが、微妙に部外者っぽくねーんスよね」
おい、リーバー。いろいろ手伝ってやってんのに、なに有意義に座ってんだ! あたしが、後ろから怒りの念を送ると、リーバーが何かに反応したように、ビクッッ! と震えた。
「ここ見て、兄さん」
リナリーが監視カメラ(まあ、ゴーレムなんだけど)のモニターに映った少年を指差す。
モニターに映った、白髪の少年。
「この子、クロス元帥のゴーレム連れてるのよ」
あたしは一瞬固まった。そして、「ああァァァァァアアアァァッッッ!!」と少年を指差しながら大声を
出す。
だって・・・・・・、
——————あ、”梦“に出て来た子じゃん!!
そう、思ったから。
〆 6月28日