二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.174 )
日時: 2012/10/14 20:44
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ftamISp/)
参照: http://www.nhk.or.jp/ncon/

三話   「無能じゃないのよ」



「わーっ。ここが『三国志』の時代なんだね!」
「自然いっぱいだな。」
「見れるかな、兵士の人形。」
「……ん?」

友撫がへんなこといってるよ? つか、兵士の人形って、あの? 墓に埋めるやつ?
……友撫って、そういうの好きだったのか。

「にしても、むかしの中国がどんなのなのか、調べとけばよかったな。」
「ていうかさ、速水先輩、残念だったよね。『アイドルを見にいくわけではない。』っていわれちゃってたけど、友撫たちをつれていくくらいなら、連れていってあげればいいのにねー。」
「賛成。つか、めちゃくちゃ暑くなってたもんな、速水先輩。よっぽど好きだったんだ。」
「友撫もあれくらい、夢中になれるものがあったらなあ。」
「おまえら……なんの話してるんだよ;;」

横から倉間先輩が、苦笑いしながらきいてきた。友撫は、なにもかくさず、キラキラしたひとみで、

「兵士の人形と、速水先輩の話ですっ。」
「兵士の人形?」

やっぱり、倉間先輩もわからなかったか……。つーか、兵士の人形って不気味そうだから、俺は会いたくねえや。教科書で見たやつだと、みんな似たような背格好して、ずらーっといっぱいいるんだよ。かんがえるだけでぞっとするわ。

「よし、いくぞ——っ!」
「おーっ。」
(とは、いったものの、いくぞってなんの話なんだろ。きいてなかったわ。)

とか、地味にひとりで思ってた俺だった。

     ☆

「すげっ。どこ見ても竹、竹、竹!」
「あはは、風花、目のつけどころ、そこ?」

フェイのいうことはもっともだけど、ほんとにあたり一面竹だらけじゃん。つか、これ、竹か?

「にしても、めずらしいね。」
「なにが?」
「風花、これまでずっと男子のかっこうがいいっていってたのに、こんどは女子のかっこうなんだ。」
「あー、うん。こっちのほうが、いろいろ便利そうだから。」
「便利?」
「んーと……あっ、身を守る、とか?」
「「服は元々、身を守るためにあるんです。」」

フェイと天馬が、声をそろえていった。ううっ、わ、わかってるけどさ……。
にしても、竹のやろう、よくのびてんなー。ノビノビしてるなあ。すげえ高いし。
……あれ? なんか、竹を見下ろせるようになってきた。あっ、あれ? なんで天馬たちまで、見下ろせるようになってんだよ、俺!?

「ちょっ、風花!?」
「お兄! なにやってるわけぇ!?」
「俺も知らねえよ! なんか、からだが浮いてるんだって!」
(ま、まさか……。)

俺が一瞬、あのいやらしいひとの顔を思い出し、イラッとした、その瞬間。
すごいいきおいでうしろに引っぱられ、いきなりドスンとおとされた。

「いっでー……。」

俺が、打ったおしりをさすっていると、ザッザッと音がして、クスリとほほえんだ。

「あら、まあ。かわいそうに。だいじょうぶ?」
「てめえがやったんだろ、母さん!」

母さんは、口もとに手をあてて、「ふふふっ。」とわらった。

(わらうな、まじでイラつくからよ。わかったか、クソババア。)
「風花、おねがいがあるんだけど、いいかしら。」
「……いやだっていったら、こわいことになるから、いちおうきくっていっとく。」
「つぎ会うときあなたの脳みそがどうなるか、楽しみね♪」

ほほえんでいうセリフじゃないよ、母さん。

「あっ、いけないわ。脱線しちゃうところだったわね。」
(脱線すれば、すっげえうれしかったのによ……。)
「あなたのからだにも、だいぶ『ガタ』がきてるはずよ。」
「ああ、そっち方面の話か。」

その話をきいた俺は、あきれ半分。つーか、母さんが真顔で話してても、ぜんっぜん真剣に、聞く気しねえし。まあ、でも、かなり重要な話なんだけどな。

「まあ、きてるっちゃあ、きてるけど……。」
「でしょうね。それは、わたしもお父さんも、さんにんとも同じよ。」
「父さんもとはな……。」
「お父さんは、まえからの頭痛、わたしは、足のケガ、風花は、持病よね。」
「……まあ、な。」

母さんめ、さすが俺の母親。いろいろ知ってるじゃん。……あ、母親なんだから、むすめのことを知ってるのは、とうぜんか(←イマサラですが)

「あなた、いつまで雷門の手助けをしているつもりなの? もう時間は、あまりないはずよ。」
「できる限りだ。それに……友撫も、まだ……。」
「まあ、友撫のことをかんがえると、なかなかいなくなることもできないけど……。」

やっぱり、母さんだって、友撫の気持ちは、かんがえてあげてるんだな。

「友撫は、まだまだ弱いんだ。」
「心の弱さ、からだの弱さ……すべてが、弱すぎるのよ。とてもじゃないけど、わたしたちがいなくなったら、どうなってしまうか……。検討がつかないわ。」
「あいつは、俺たちがどういう『存在』なのかを知ってる。だから、いなくなっても、おどろきゃしないと思う。」
「でも、やっぱり、わたしたちぬきで生きていくには……。たとえ、あの天馬くんって子たちがいたとしても、とてもむりよ。」
「かんがえものだよな。」

俺はあたまのうしろで、手を組んでいった。
……って、ん?

「待て、母さん。それが、本題?」
「そのとおり。それがどうかしたのかしら。」
「いや、それが本題っつーことは……友撫にきけってことなのか? それとも……。」
「そうよ。もう、かくしている場合じゃないのよ。いつ『消える』かもわからないわたしたち……まあ、エルドラドはいいとしてよ。いいとして、雷門はべつ。もう、きちんと伝えておかなくちゃいけないのよ。風花の、いまの『存在』を。」

母さんのいうことは、なんとなくわかる。
もう、いわなきゃいけない時期なんだ。いつ『いなくなる』かもわからない。天馬たちはやさしいから、雷門のだれかがきゅうにいなくなったら、心配する。だから、心配させないために、みんなにいっておけ。そういうことなんだよな。
でも……まだ、いいたくない。

「なあ、母さん。」
「なに?」
「……母さんと父さんは、いま、エルドラド側でなにをしてるんだ?」
「はあ……あなた、最近ケータイをひらいてないみたいね。」
「は?」

俺は、ポケットの中にいちおうつっこんでおいたケータイを、ぱかっとひらく。
あれ!? いつの間に、こんなに大量のメールが……。それに、メールが来たときは、着信音が鳴るはずじゃ……あ。

(マナーモードになってるぅうううぅ!)
「まったく。マナーモードにする必要がなかったら、解除しておきなさいって、なんどいったら、わかるのかしらねえ。」
「あれ? これ、全部母さんと父さんから……しかも、エルドラドについての情報ばっかり……。まさか!」
「あたりまえよ。わたしたちが、そんな無能みたいに、エルドラドにしたがうわけ、ないでしょ。さあ、もう、もどりなさい。そろそろみんなは、劉備たちとあっているはずよ。」
「劉備……?」
「ええ。諸葛孔明と会おうとしている、劉備とね。」

母さんは、ふっとほほえみ、あっちというように、竹のむこうを指さした。