二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.179 )
日時: 2012/10/25 20:09
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ftamISp/)
参照: もうすぐ全国大会だ——ッ!!

五話   「父さん登場」



はい、いきなり飛びますぜ、シーン。
いまなにがおこってるかっつーと、諸葛孔明の住んでる砦(?)に入ってみたら、エルドラドが劉備の兄弟ふたり組をあやつって、試合をもうしこんできたんだよ。劉備のオッサンは、キーパーやってんだけど……。
うーん、なんなんだろ。自分勝手のような気がしないでもないんだけど……。

「お兄、すなおに全部いっちゃったら? 自分の『存在』のこと。はいちゃいなよ☆」
「はいちゃいなよ☆ じゃねえし。だいたいさあ、んなこといったら、ドン引かれるのはわかってんだしさ。いうの、めんどうだよ〜。」
「弱虫(虫を強調)。」
「きょ、強調部分が!;;」
「ていうか、あれ、マインドだよね?」
「びみょうに略しすぎのような気もするけど……。まあ、そうだろうな。エルもいるし。」
「お兄っ。略しすぎで、なにいってるのか、さっぱりわかんないよ。」
「でもさー、ふしぎな話だよな。なんで父さんと母さんにも、『ガタ』がきてるんだろ? 俺ならまだしも、あのふたりもとはな……。」
「うん、それはいいんだけどさ……なに、そのお兄の足元にある穴?」
「へ?」

下を見ると、いつの間にかできている穴! なんじゃ、こりゃ——ッ!

「にゃあぁああっ。」
「ねこ!?;;」

ふたりの声が重なったとき、ちょうど穴の口が、なぜか閉まった。
え、なんで? とかなんとか考えるヒマもなく、俺は思いきり背中をゆかにぶつける。……いたい……。

(なんだよ。また母さんか! もううんざりなんだよ、えぇ!?)
「ずいぶんと、ブザマにおちてきたものだな、風花。」

俺の肩が、ビクンッとはねた。
こ、この低い声って……俺きらいなんだよなあ。

「久しぶりだな、風花。」
「久しぶりッスね、父さん。」

俺は細い目。いや、わらってるんじゃなくて、あんまり父さんを見たくないから、細めなだけなんだからなっ。そこんとこ、よろしく!

「ずいぶん、大きくなったものだ。」
「そりゃ、数年たったしな。つーか、なんで父さんが、ここにいんのさ?」
「おまえにカンちがいされないように、いいにきてやった。」

カンちがいって……なんの話だ?

「母さんはどうなのかしらんが……。」

お、おいおい、しらんがって、おまえら夫婦だろうが!

「おれは、裏切りなんぞしない。」
「…………へ?」

いや、なんの話だい? 裏切りじゃと? わしにはよう、なにを話とるかわからんじゃきに。

「エルドラドの話だ、ばかもん。」
「あー、はい、すいません、はい。」

心読まれてるんだ、読まれてるんだ?
つーか、あいかわらず真顔で悪口いうところはかわんねえな。

「おれの予想だと、母さんは風花に情報やってるんじゃないのか?」
「まあな。
 とはいっても、ケータイに着信きてたの、知らんかったけど((ボソッ」
「まぬけめが。」

えっ、きこえてるわけ!? 父さん超地獄耳! ……は、まあ、いいとして。

「それよか、おまえ自身としては、こちら側につく気はないのか?」
「ないね。だいたい、俺が雷門についてる理由、知ってるだろ? わかってるくせに、いうなよ。」
「おれは反対だ。そもそもあの……。」
「いうな! ……父さんには、わかるはずない。」

俺は、父さんの目から顔をそむけた。
父さんには、話してなかったんだっけ……。

「とにかく俺、もどるから。」
「待て。」
「なんだよ、まだ話が……。」

俺の声がいきなり、プッツリと切れた——……。


「そんなところにいたら、危ないよ。」
「はやく降りておいで!」

下のほうで、そんな声がする。でも、あたしはかまわず、そこにいた。

「降りておいなさい。はやく!」
「だれか、はしごをもってきてくれ。」
「わたしの家からもってくるわ。」

あちこちで、バタバタうるさくさわぎ、ひとが出入りしていた。
あたしの手は、あともうすこしで、黒と白のふわふわあったかなものに届きそう。——なのに、とどかない。
がんばって、うんと手をのばしてみる。ふわっとした、やわらかい毛先の感触がした。

(届く!)
「風花、やめろ!」

パキパキパキ……

なんだか、そんな音がした、その瞬間。

「危ない!」
バキッ

まったく同時に、ふたつの音がきこえ、風がからだで感じられた。涼しい感じがしたとたん、自身は、地面にたたきつけられた。

     ☆

意識がやっともどってきたときには、白い天井が見えた。ふわふわした感触が、からだをつつんでいるから、たぶん、ベッドだと思う。
からだを起こそうとした瞬間、ズキンッとからだ中に、激痛が走った。

「あづっ。」
「あら?」

窓ぎわで、高めの声がした。首だけを動かして、声のほうを見た。
ナース服のメガネの女のひとが、あたしを見ていた。ホッとしたような顔をし、あたしのところに歩みよる。

「目がさめた?」
「あ……はい。」
「すごいわね、あなた。あんな高い木からおちたのに、腕と足の骨折だけだなんて。奇跡に近いわ。」
「ど、どうも……?」

このひと、なんの話を?

「にしても、なんで、あんな高い木にいたの?」
「あの枝に、ちっちゃい子ネコさんがいて……それで。」
「助けたかったのね。でも、そういうときは、親やまわりのおとなにたのみましょうね。今回みたいな事態をふせぐために。」
「? はい。」

よくわからないながらも、あたしはうなずいた。

「ふーちゃん!」

とびらが、なんのまえぶれもなく開き、そこにいたのは——……。