二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.180 )
日時: 2012/11/08 19:08
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ftamISp/)
参照: もう全国大会おわった——ッ!!

六話   「《半個半幽》」



「ん……っ?」

俺は、横たわっている重たいからだを、むりやり起こした。まるで、自分のからだを、いじめるみたいに。

「ここ、どこだ……?」

あたりを見まわしても、あるのはまっ暗な、まさに深遠という感じの闇だけ。ほかには、遠くにある、細い細い光だけ。ほかは、なにも見えない。どうやら、とじこめられた、または……。

(もしかして、死んだとか?)

俺は、苦笑いした。いやー、こまる、こまる。冥界だか霊界だか知らないけど、どんだけッスか。じょうだんにもほどがありますぜぃ、神さま。まあ、仮定しておくか。
俺はとじこめられていて、まっ暗闇のなかにいる。うん、そういうことにしておこう。
とにかく、出口さがしだな。

「って、いっても……。」

俺はつぶやき、上を見た。とてもじゃないけど、手のとどきそうにない光がある。そのことで、ここがかなりひろいことが、わかる。でも、あそこぐらいしか、出口ない感じだよなあ。

「やるっきゃないか。」

俺は、目をつぶって、一気に精神を集中させた。背中に黒いオーラがあらわれ、それは、ものを形づくっていくのを感じる。そして、それは、美しい水色になり、美しいつばさを持った。

「『夢の水鳥 アクア』。」

アクアはそのサファイアのようなひとみをひらき、光をチラリと見たあと、俺のほうを見た。俺がわらいかけると、アクアもわらいかけ……ない。まあ、アクアらしくていいかもしれないけどよ。でも、やっぱり、何度経験してもイラッとするな、この反応。

「いくぞ、アクア!」
『はい、はい。』

アクアの声が、脳内で響いた。
それに、一瞬違和感を感じたが、アクアは大量の水を噴射! ゆかに噴射された水により、ゆかにかかる圧力で、俺のからだがふきとび、光にぐんぐん近づく。
いける——! と、思ったとたん、噴射されていた水がぴたっととまった。

「え゛。」

ヒュルルーと音をたてて、俺のからだが落下していく。

『バカ。いつまでも、噴射できているわけじゃないの。』
「なにー!? 先にいわんか!」
『そんなことくらい、あんただって知ってるでしょうが。おちるわよ。』
「へ? ぐえっ。」

俺の背中が、ゆかにたたきつけられる。コミカルでしたが、実際はかなりいたいもんなんですな、これが。
俺は寝転がったまま、大の字になって、ぼそっとつぶやく。

「おかしいよな……。アクアの声が、こんなにハッキリきこえるなんて。」
『わかってるのね、やっぱり。そうよ。もう、時間が残りすくないの。』
「だよな。」

ってことは、そろそろいわなきゃ、マズいってことか。
それに、このからだが、もう《半個半幽(はんこはんゆう)》である時点で、存在すらあやふやになりやすい、あぶない存在なのに。
いつ『消え』ても、まあ、違和感はないか。

「で、どうやってここでるんだよー……。」
『そもそも、あなたがあの高さにある出口に、大まじめにジャンプかわたしの力を使ってたどりつこうとかんがえてる時点で、すでに、バカといい切れるわね。《半個半幽》である、あんたの力を使えば、楽勝なんじゃないの?』
「でも……あの能力は、使うごとに、固体でいられる時間が、ぐっと短くなっていくんだよ。」
『ふーん。でも、いま存在している時点で、なにか、いいことでもあるの?』

アクアのことばに、俺はことばにつまる。

『雷門のひとは、あんたとの記憶を失っていて、父親と対立して、いつ『消える』かわからないからといって、ビクビクしながら、いまを『生きる』ことしかできない。そんな、《半個半幽》という、中途半端な存在であるあんたがいて、なにか得があるの? むしろ、そんな中途半端な存在であるくらいなら、いっそのこと……。』
「アクアって、俺のことためすの、上手いよな。」
『なにをいって……。』
「俺は……。」

俺は起き上がり、自分のむねに手をあて、つぎに、いきおいよくまえにつきだした。ふわっと手のひらが光り、なんとなく形をつくっていく。そして、できあがったのは、ほんのりと光につつまれた、個体化したアクアだった。個体化したアクアはぼそっと、『ほんとうにバカ。』とつぶやいた。
それをきき、俺はむねをおさえ、息を荒くした。アクアを個体化させるだけで、かなりの体力をつかうんだよな……。

「俺は、雷門のみんな……サッカーを守りたいっていう意志をもっているひとたちの力になりたい。ただ……ただ、それだけだ!」

俺のことばに、アクアはニヤリとほほえんだ。

『まったく……バカはバカのままね。そんなストレートなこたえしかでないんだもの。……でも、まあ、いいわ。』

アクアの声が、ふわっとやわらかくなる。
アクアは、そのきゃしゃな手で、俺のほおをなでた。

『あんたは、どうも母親似のようね。まるで、あんたは母親の生き写しみたい……。』
「アクア、もしかして、母さんを知ってるのか……?」
『そんなのは、どうでもいいわよ。しかたないわね。中途半端な存在である《半個半幽》を、サポートしてあげるわ。』

アクアは立ちあがり、俺を見おろした。アクアの、キラキラした、美しい湖のような青のひとみが、俺を見つめる。

「アクアが、なんでそこまで?」
『おまえに『消え』られたら、わたしの主がいなくなるの! まったく、ほんっとうにバカなんだから。とはいえども、サポートにも無理があるわ。《半個半幽》は、どちらにしろ『消える』ことをふせぐことは不可能な存在……。『消える』までの時間が、長くなるだけと思っておかないと、あとで公開するわよ。』
「わかってる。」

俺も、アクアにつづいて立ちあがった。俺とアクアの目が、ばちっとあう。そのときのアクアの瞳(め)は、だれがどう見ても、悲しそうで。でも、それを追求しちゃだめなような気がして。
俺は、アクアの目を見つづけた。

『な、なにじっと見てるの、バカ風花。』

目をそむけたのは、アクアのほうからだった。俺はムッとして、アクアにいいかえす。

「なんだよ、そのいいかた。」
『ほんっとにバカ。あんた、気づいてないでしょ? あんた、かなり男前の顔してるのよ?』
「……男前の顔してるって、俺、男じゃなくて、女なんだけど?」
『お似合いよ、バカ風花にはね。』
「ムッカーッ。」
『そうそう、重要なことを、いいそびれてたわね。』

アクアは話を変えた。いきなり真剣な顔になったアクアに、俺は一瞬とまどう。

『わるいけど、風花。サポートがおわってからは、よほどのことがない限り、よびださないで。』
「えっ……?」
『わたしは風花の化身。でも、風花の場合は《半個半幽》でしょ? まわりにいる、化身使いとはちがうの。風花の疲労は、わたしにも影響する。そして、わたしの疲労も、残念だけど、風花に影響するわ。
 風花のからだに、わたしとおなじだけの疲労が……いえ、《半個半幽》の存在を維持するだけの体力もかんがえたら、そんなもんじゃないわね。とにかく、それくらい負担がかかるの。それに化身を召喚するとき、ふつうの人間ほどじゃないかもしれないけれど、体力をつかうでしょ? どう? これでわかったでしょ。わたしがいってること。』
「……わかったよ。じゃあ、ファイアリも……?」
『第二の化身。でも、やっぱり化身という存在であること自体に、まったくかわりわないわ。二体分の疲労を背負いながら、ほんとうに《半個半幽》として、いまを生きていきたい?』
「ああ。」

俺は、きっぱりと言い切った。アクアは一瞬、あきれ顔を見せてから、すがすがしい笑顔になった。それは、俺みたいなへんに『特別』な存在のものだけがあやつる化身だけの、『感情』というもので、俺もわらいかえす。

『そこまで決意がかたいのなら。』
「ありがとう、アクア。」
『いくわよ。しっかり、つかまりなさい。』

アクアが、俺に手をさしのべた。俺は、アクアの手を、しっかりにぎった。アクアも、ぎゅっとにぎりかえす。

『はあっ。』
「っ……!」
『目をつぶらないで!』
「わ、わかった。」

俺は、うっすらと目をひらいた。光は、だんだん近づいてくる。それは、《半個半幽》の力と、アクアの力があわさっているものだと、すぐにわかる力だった。



気づいたら、あたりは森で、俺は突っ立っている状態だった。森……っていうか、竹の林みたいな感じ。地上だってことは、なんとなくわかった。

「アクア……やっぱり俺のこと、ためしてたんだな。」

あのアクアの顔は、まちがいなく、俺をためすときの顔だった。
でも、あの悲しげな顔は、まったくちがった。あれは、きっと……。

「あれ? あれって……。」

俺は、空を見て気づいた。青い車が一台。しかも、宙を浮かんで、あなに飛びこんで……って、あれ、まさか!

「キャラバン!?」


風丸風花 三国時代におきざりにされました