二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.181 )
日時: 2012/11/20 18:44
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ftamISp/)

☆番外編☆第十三話   「暗闇」



ときは流れ——。
あたたかい雰囲気と、満開のさくらのした。風花は校門のまえで、じっとせず、母のむけたカメラに、ずっとピースサインだった。

「ちょっと、風花。ピースじゃなくて、じっとしていてちょうだい。」
「だって、風花ピースがいいもん。じっとしてるのヤ。」
「はあ……風花……;; おちつきがないのは、小学校に上がってもかわらないのかしら。」

風花は、小学校に入学したのだ。幼稚園で年中さん全員におこなわれるテストがあり、それに風花は、なんと三年生レベルのものに合格した。三年生からではちょっと飛びすぎだからということで、仲のいい輝もいるということで、一年生からにしたのだ。

「パパ、これなくて残念ー。」
「パパはいま、頑張ってお仕事してるのよ。ロボットの設計もしながらね。」
「パパすごいんだっ。」
「そうよ。さあ、風花もいってらっしゃい。体育館はあっちよ。」
「ふーちゃーん! 一緒にいこ♪」
「おっけー♪」

風花と輝は、仲よく手をつないで、体育館にむかっていく。
そんなふたりを、母は、ながめるほかなかった。

     ☆

「風花のクラスはー……。」
「風花は三組、輝くんは……あら、残念。二組ね。」
「でも、おとなりだね! すぐ会いにいける!」

さんにんは、クラス表の張り出されたところで、キャッキャとはなしていた。

「うん、そうだね! 風花、授業おわったあと、会いにいくね!」
「ふたりとも、授業はじまっちゃうわよ。」
「友撫ちゃんと輝のママ、これないなんてねー……。」
「友撫を輝くんのママにあずけちゃって、ごめんなさいね。」
「いいんだよ。ママも、友撫ちゃんあずかるって、すっごくうれしそうだったし。」
「そう。それなら、よかった。さあ、ふたりとも。はじめての授業が待っているわよ。先生の話をきいていらっしゃい。」

風花の母は、輝と風花の背中をどんっとおした。

「えっ、ママは?」
「ママはお仕事。ごめんなさいね。」
「ううん。お仕事、頑張ってきてね。じゃあね!」

風花は母に別れを告げると、教室にむかう。
そして、教室のまえに立つと、ぴたっと停止してしまった。

「どうしたの、ふーちゃん?」
「き、きんちょーするかも……。」
「ふーちゃんもきんちょうとかするんだ。だいじょうぶだよ。」
「う、うん。」

風花は教室のとびらをそうっとあけた。みんなワイワイと、となりの席の子と話している。
風花の席は、いちばんまえの、いちばん窓側の席だった。席につくと、となりの子が話しかけてきた。桜色のひとみをした、かわいい子だった。

「となりの席なんだー。よろしくね!あたしは三友 蓮香(みとも れんか)。あなたは?」
「風花は、風丸風花だよ。よろしくね、蓮香ちゃん!」

風花と蓮香は、にこっとほほえみあった。
ガラッとまえのとびらがあき、先生が入ってきた。保護者の視線が、いっきに先生に集中する。

「えー、みなさん、はじめまして。」

先生は黒板のほうをむき、チョークを手にとると、名まえを書きはじめた。

『松本 いつき』

「松本いつきといいます。みんな、よろしくね。みんなで仲よくしていきましょう。」

松本先生は、にこっとわらった。もちろん、みんなは「はーい。」と元気よくお返事。そのなかに、風花もいた。

「みんな一年生。ということは、新しいことのはじまりです。みんなで、はじめての楽しい学校生活を、つくっていきましょうね。」
「はーい。」

     ☆

入学から二ヶ月。風花はとなりの席の蓮香と、仲よくなってきていた。

「わあ、蓮香ちゃん、かわいいね、このネコさん。」
「でしょ? あたしのお気に入りなんだ。」

蓮香は、ちょっとむねをはって、じまん気にいった。
風花のいまの気分は、ほんとうに最高という気分だった。クラスの子ともイイ感じだし、輝とも話していると楽しい。小学校生活は、不安が多かったが、心配する必要なんてなかったんだと、いまさら気づいた。
蓮香のキャラは、どうやら、じまんしたがり屋さんらしく、なにか新しいものや、流行っているものを手に入れると、必ずクラスの女子に見せてまわるのだ。でも、蓮香とは、しゃべっていて、おもしろい話題がぽんぽんでてくるから、蓮香といるのは、風花の楽しみのひとつだった。

「あれ? 蓮香ちゃん、蓮香ちゃんがこの間もってきてた、ペンダントは?」
「ペンダント? ああ、あれね。あれは、もうもってこないわ。飽きちゃったしね。」
「えーっ。ものは、もっと大切にしなきゃだめだよ。ママが、そうやっていってたもん。」
「そうかしら。飽きたらすてるなんて、あたりまえじゃない?」
「だめだよ。むやみやたらにものをすてると、環境にわるいって、ママいってたよ?」
「……あっそう。」

蓮香はそっぽをむき、風花の顔を見ないようにした。風花はよくわからず、あたまに「?」マークをうかべる。
なにが不満なのかきこうとしたとき、

キーンコーンカーンコーン……

鐘が鳴った。
風花は席につき、いまからはじまる国語の授業のしたくをはじめた。
——このときは、自分の身になにがおこるかなんて、想像もしていなかった。——

     ☆

「じゃあ、いってきまーす!」

風花は、母が声をかけるのも待たず、家をとびだした。楽しみにしている学校への道を、タッタッとかけぬける。
そして、校門をくぐり、校舎のくつばこに入っている上ぐつを手にとると、階段の手前で、やっとはき、階段を駆け上がった。教室の手前にきて、ふうっと息をはくと、楽しみを胸に秘めて、とびらをあけた。

ガラッ バシャッ

(へ……っ……? え……っ……?)

風花のからだには、まだ六月には冷たい、水がかかっていた。そして、風花を見ながらわらっている、クラスメイト。
なにがなんだか、風花にはわからなかった。でも、確実にわかること。それは……

(風花……もしかして、みんなにいじめられてるの……?)

小学校がはじまって、まだ二ヶ月。
風花の小学校生活に、暗闇がおとずれた瞬間だった