二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.186 )
日時: 2013/01/07 11:52
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ysgYTWxo)

八話   「すてられ……」



「恐竜時代って、おもしろいんだねっ。」
「友撫ちゃんもわかってくれた? 恐竜のすごさとか!」
「そりゃ、もちろん! 一日中いれば、すごいことくらい、わかりますよ〜♪」

むこうで、友撫と信介が、キャッキャッとはしゃぎながら、しゃべっていた。ふたりは火に照らされ、顔がほんのり、赤く見える。
空をあおげば、キラキラと輝く星々が、たくさん光っていた。やっぱり、星は、こっちのほうが、きれいに見えるんだよな……。明かりがないし。

「風花?」
「あっ、フェイ……。って、いまは『ユエ』なんですが。」
「ご、ごめん。つい……。」
「どうしたんだよ? それはそうと。」
「……となり、いいかな?」
「いいぜ。」

俺がこたえると、フェイは、ゆっくり俺のとなりに、腰をおろした。そして、さっきの俺とおなじように、空をあおぐ。

「きれいだよね……。」
「ああ。……むかし、これとおなじくらい、きれいな星空を、見たことがあるんだ。フェイたちの時代から、ざっと二百年前のことなんだけどな。」
「そっか。月とかも、でてたの?」
「月がでてた。たしか、満月で、銀色のやつ。星がキラキラまたたいてて、青い色をした鳥が、空を飛んでたんだ。いま思いかえせば、ほんとうにきれいで……。でも、あの星空を見たときは、星にあざ笑われているようにしか、思えなかった。」
「きれいってわけじゃなくて……あざわらわれている? どうして?」
「うーん……。そのときは、友撫とふたりきりで見上げていたんだ。…………両親に捨てられたと、思いながら。」
「えっ……?」

フェイの顔が、きゅうにくもった。いやなことをいってしまったと思い、あわててあたまを下げた。

「ご、ごめんっ。こんな話して……。こたえよう、ないよな……。」
「あっ、う、ううん。ただ、ちょっとね……。」

フェイはふいと顔をそむけ、天馬たちのほうを見た。俺も、しぜんとその先を見る。そこには友撫もいて、トーブがピョンピョンとびまわる度、友撫も楽しそうにわらい声をあげていた。みんな笑顔で、ついついこちらも、ほおがゆるんでしまうような光景。なんだか、あの日のできごとが、ほんとうに遠くに感じられる……。
でも、現実は現実。逃げられない、くるしいもの。
いまの自分の存在からも、逃げることはできない。
たとえそれは、生きていても、死んでいても——。

     ☆

キラキラの星たちが、俺たちを見守りながら、かがやいていた。たきぎが消され、あたりはほんとうに、月光以外、なにもたよれる光のない状態となっていた。
大きなあなのなかに、ねむっていた俺は、ふと目がさめた。なんだか、だれかが話しているような感じがしたから……。
その予想はあたっていた。フェイと、ワンダバだ。どうやら、トーブのことについて話しているらしい。

(トーブか……。いいよな、ああいうやつは。俺も、あんなふうに、しばられない人間でありたかったかもしれない……。でも、なんで原始時代のまえだというのに、人間がいるんだろう? もしかして、エルドラドからのスパイとか……? いちおう、母さんたちにきいておくか。)

ひとりで、地面にしかれた草を見つめながら、かんがえた。フェイたちの会話はおわったらしく、ワンダバはいっきにねこみ、うるさくいびきをかきはじめる。ま、まじめにうるさいぞ、このいびきは……! まさか、フェイ……ねむれているのか……ッ!?

がさっ……

あ、フェイが起き上がった。しかも、かなりうんざりそうな顔してるよー……。まあ、それもそうか。

「……風花、起きてる?」
「お、バレた? いやあ、フェイの直感には、負けるわー。」

俺は、そんなことをいってみる。でも、フェイは、

「直感じゃなくて……なんか、ゴニョゴニョいってるから。」

といい、俺のほうをふりかえった。その顔は、逆光になって見えない。わらっているのか、あきれ顔なのか……。いや、地味に知りたいww

「俺もちょっくら、ブラブラしてくるわー。」
「えっ、ちょっ……。」

フェイはとめようとしていたようだけど、俺はそれをむしして、穴から飛び出た。


「俺もブラブラしてくる、なーんて、すげえウソww ……つか、フェイもわかっててとめようとしたのかな。」

俺がきてたのは、切り立ったガケの上。はっきりいって、すげえ高いから、こわいです←
……あ、でも、俺何したくて、ここにきたんだろう……?

『とうとう、記憶までうすれるようになってきたのか?』
「うわっ。……なーんだ、アクアかよ。ビビッたー……。」
「ひと……いや、化身がきいていえるだろう? こたえろ。』
「ひとじゃなから化身っていったんだろうけど……ぎゃくにわらえるぞ、アクア。
 ……っつっても、記憶までうすれる、かあ……。わっかんね。」
『まったく……。この際、おまえ、いうっそのこと天界にいってしまえばどうだ? そうすれば、両親ともにいられるし、幸せだろうに。どうして、こんなに雷門に執着する?』

アクアさん、じみにお顔がこわいですよ?

「んー……なんだろ。兄さんの出身校だから……とかかな。あんまり、自分でも、よくわかんねえ。」
『まあ、こんなことだろうとは思っていた。でも、無理はするなよ? わたしの身に負担がかかるのだからな。』
「自分のことだけかよ。やっぱりな。」
『お、おまえのことも、いちおう心配してる……ぞ?//』
「へー。そりゃあ、どうも。」

つか、アクア顔赤ッ。水鳥なのに、だいじょうぶかよ。
……アクアならだいじょうぶだな←

「…………! なんの用だよ、母さん。」

いきなり亡霊のようにあらわれるでないわ。

「フェイくんと話していたことが、どうしても気になってしまって……。」
「きいてたんかい。ぬすみぎきー。」
「失礼ね。きこえちゃったのよ。……その子が、実体化したアクアね?」
『ええ。はじめまして、風花のお母さん。』
「はじめまして。」

ふたりとも、なんか、リアルだよ。会話が。そして、俺をはさんで話すな。

「で、気になったって、なにが?」
「捨てられたって……あれは、誤解なのよ。」
「わかってるって。だって、俺が死んだとき、わかったもん。最後までききとれなかったけど、なんとなく意味は通じたし。」
「……なら、いいんだけど。」
「母さんも父さんも、たいへんだったことはわかってるよ。でも、友撫と待っていたとき……つらかった。」
「友撫にも、深い傷を負わせてしまったのよね……。」
「ああ。……それだけ?」
「それだけよ。必要以上に長くはいないわ。じゃあね。」
「うん、ばいばい。」

母さんは、にこっと笑うと、その場を去った。