二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.187 )
日時: 2012/12/13 18:52
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ftamISp/)

九話   「無力」



「ん? あれは……。」

べつのガケのほうを見ると、フェイとビッグが、ふたりで話しているようだった。アクアが、ぽそっとつぶやく。

『やっぱり、彼は……。』
「えっ、なにさ、アクア?」
『……きいていれば、わかる。』

アクアはいうと、俺のからだのなかにすうっと入っていった。きいていればわかるって……ぬすみぎきしろてことだよ……ね?
なんかいやだなあ。でも、アクアのいっていたこと、気になるし……。まあ、いいっ。それを悪用するわけではないのだ☆((←
と、いうわけで、ふたりの会話に耳をかたむける。

「ぼくの両親は、ぼくをおいて、家をでていったんだ。」
(えっ……?)

俺は耳をうたがい、フェイの方向を見やる。フェイの顔は、つらそうな、でも、どこかへいきという、複雑とはいえない……そんな、むずかしい表情だった。

「でも、きみはちがう。だから、きみはメゲちゃだめだよ。」
「クゥー……?」
(フェイ……。)
「フェイ……。」

俺の心の声と、岩陰からの天馬の声がかさなった。

「! 天馬……。」
「ご、ごめん。つい、きこえちゃって……。」

天馬はそういうが、フェイはフイと顔をそむけた。つまり、天馬くんもぬすみぎきしておった、ということですな。
というわけで、ひとつ情報収集したな。でも……。

(フェイは、俺とはちがうよ……。)

俺は、フェイとはちがう。でも、ビッグともちがう。フェイの両親はなにをかんがえてか、よくわからないけど、ビッグの母さん……ロックスターは、ビッグを愛していて、たまらなかっただろう。なのに、りっぱに育てきれず死んでしまったなんて。どれだけの心残りだろう。まだまだ子どもの俺には、想像すらできない。
フェイと両親の事情がわかるまで、ぜったい消えたくないな。
……いや、消えない。だれが消えるもんか。
サッカーをとりもどす。それまで、ぜったいに消えてやらねえ。たとえ、天界のむかえがきたって、アクアとファイアリの合体技で、ブッ潰してやるぜ! ……ブッ潰しはしないけど。

     ☆

翌日。
天馬たちは特訓をすることになった。もちろん、チームメイトである俺たちも、ついていく。

「っつっても、特訓ってなにするんだろうな? あのスピード。」
「うーん……恐竜さんも参加するのかなあ。」

といって友撫が見たのは、トーブの「父」らしい、ケツァルコアトルス。

「いや、あいつは指示くらいだろー……;; さすがにプレイはできんって、あの足では;;」

飛ぶのに長けてるからだなんだから。

「でも、なんかやっちゃいそう((キラキラ」
「友撫、むりやりやらせるのは、俺は断固として反対だぞ。」
「えーっ。」「う、うわあっ。」

友撫の声と、速水先輩らしき声がかさなった。
ハッとすると、なんと、まわりはトロオドンでいっぱい! っつーか、かこまれてる!? ねらわれてる!?

「こいつらも、特訓に協力するっていってるぞ。」
「へ、へえ……;;」
「あっ、でも、そういえばトロオドンって、肉食だよね?」
「ヒイィッ。肉食!?」
「こわがっちゃダメだぞ。ますますねらってるぞ。」
「ヒイッ。いやですよぉっ。」
「しかたないだ。これが、万物のおきてだ。」
「なんだよ、それ;;」

水鳥先輩、ナイスツッコミです。俺も思いましたもん。

「そういえば、最近風花、プレイしないな。」
「ああ、そういえば。」
「なんだ? おまえもやるのか、ふーら?」
「風花だっつーの。ああ、やるぜ。雷門のみんなより、レベルは低いけどな。」
「そんなことないよ!」

天馬、両手をひろげて飛び出してくるのはやめようか。

「トーブ、すごいんだよ。風花はね、化身を二体同時にだせるんだよ!」
「おおっ、なんかわかんねえけど、すごそうだぞ!」

わかんないんかい!
っと、ツッコミはさておき。おどろくことに、トロオドンがポンポン足でボールを蹴って、サッカースタートしとりますがな。

「こいつら、このまえの試合見てたみたいだぞ。」
「へえ。でも、見てただけでこれはすごすぎだろっ。」

狩屋、ナイス。俺も思った。

「トロオドンはかしこいからね。からだに対して、脳がおおきいんだよ。」

信介、解説ありがとう。俺、知りたかったから。

「わるい、みんな。俺、むこうで練習してくるわ。」
「えっ、やらないの?」
「ああ。こんどの試合で、俺の出番はなさそうだし。それに、これ以上ポジションを奪うようなことは、できないよ。とちゅうから加わったしな、俺。」
「で、でも……。」
「じゃ。」

俺は、まだなにかいいたげな天馬をおいて、サッカーボールをひとつ持つと、むこうの岩にむかって、全力疾走。風を切るくらいのはやさで走り、ほおや腕、からだ全体にあたる風が気持ちいい。
岩のまえまでくると、思いきりジャンプ。すたっと岩の上に着地し、すこしだけあたりをながめる。特訓をしている天馬たち、一緒に植物を食べているブラキオサウルスの群、トリケラトプスの大群の一匹をいま仕留めた、ティr……うえっ。なんじゃ、あの光景は。見てしまった、俺は、ティラノがそのするどい牙で、トリケラトプスの○を引きちぎり、うまそうにその○を食べている光景を……。
俺、不幸なヤツだな(←自分で見たんだろ)。

「き、気をとりなおしていくか。」

そうつぶやくと、ボールを高々と蹴り上げた。天に届くんじゃないかと思うくらい蹴り上げた直後、化身を発動した。

「『夢の水鳥 アクア』!」

召喚した、その瞬間。

「ううっ!」

激しい頭痛がおそい、思わずしゃがみこむ。発動されたアクアは体内にもどり、俺は近くの壁に手をついて、ようやく態勢をとりなおす。頭痛のせいか、目のまえがクラクラしてきて、だんだん息もあらくなってくる。

「あ……はあ……は、はあ……ッ。」
(くそっ、なんで! なんで! なんで、こんなに無力に……!)

俺は、壁についている手をこぶしにして、壁をたたいた。しかし、さすがに壁とはいえ、岩の壁。俺はいたみで、思わず手をもうひとつの手でおおう。たたいた手を見ると、人さし指の第一関節のあたりから、つぅ……と血がたれ、地面にポタッとおちた。

「……バッカじゃねえの。」

なに、こんなからだで「雷門の役に立ちたい」なんて……。よくいえたもんだよ。アクアに「バカ」とかいわれても、しかたないよ。
ほんっと……無力。

「なんで、こんなんで役に立ちたいとか、いえたんだろう……。」

軽はずみすぎるよ、俺。

「……化身をつかわずに……。」

いけるかもしれない。
化身の能力をいかすんじゃなく、自分自身の力を高めたり……。
それか、イチかバチかの方法で……!