二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.203 )
日時: 2012/12/27 11:17
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ysgYTWxo)

五話   「暴走」



みんながポジションについて、試合は再開。ベータたちからのスタートだ。
でも……なんか、あいつらの顔が、よゆうぶってるっていうか……。まあね、ベータの顔は、いつもニコニコしてるから、よゆうぶってる顔に見えるんですけどね。デュプリっぽいヤツらの顔に、表情がにじみ出てきてるっていうか……。

『なにかんがえてるんだ? 風花。』
「!」

いきなり声をかけられ、俺はビクッと肩をふるわせる。声の主は、ウォーターだった。なんか、きょうはウォーターにビビらされる回数が多いな。

『よけいなこと、かんがえるんじゃねえぞ? おまえ、どうせからまわりするし。』
「あ、ああ……。」

やっぱり、みんな、そう思ってるのかな……?

『おい、はじまるぞ。試合に集中しろ。』
「わ、わかってるよ……。」

俺はウォーターから視線をはずし、ボールの方に目をむける。いつもなら切り替えられる気分が、いまはまったく切り替えられない。なんで……なんだろう……。

ピ——ッ!

試合再開のホイッスルが鳴りひびいた。
と同時に、ボールがベータにパスされた。

「ふっ……いかせてもらうぜ!」

一気にベータのオーラが、あの凶暴……ゲフン、ゲフン。いきおいのいいキャラにかわった。

「こい! 『虚空の女神 アテナ』! アームド!」

アテナとアームドしたベータは、まっすぐにゴール……ではなく、こちらのチーム全体を見た。

「おまえら全員、たたきつぶしてやるぜ!」
「! おまえ……!」
「くらいな! 『シュートコマンド 07』!」

ベータのシュートが、アクアやフェイを、まるで木の葉のように吹き飛ばした。俺もおなじように、宙を飛ぶ。地面にたたきつけられた瞬間、父さんの口から、いちばんいわれたくなかったことばがとびだした。

「しょせん、風花もまだ、まどわされるような子どもか……。」
「!!」

そのことばに、自然と手に力が入り、きつくこぶしをつくる。下くちびるをかみしめ、あのいやな記憶を思い出した。
もう……あのときの俺からは、ぬけだすんだ……。あのときの俺と、いまの俺はちがう。だから、だから……!

「俺は……あのときとはちがう!」
『ふ、風花……?』

俺はゆっくり立ちあがる。むこうのほうで、アクアが顔だけをこちらにむけて、俺を見ているのがわかった。でも、いまの俺は、そんなことにはかまっていられなかった。

「俺を……!」

背中にオーラを感じる。たぶん、ファイアリ。からだの底が、どんどん熱くなっていく。この感じは……。

「俺を、むかしとおなじにするんじゃねえ——ッ!!」

なにかが爆発して、もうそれは、とめようがなくなった。
俺は、ベータをキッとにらみ、ポツリとつぶやく。

「アームド……!」

ファイアリが俺のからだについた。でも、そのアームドは、ふつうではなかった。
からだが、まるで炎でおおわれたような、そんなアームドになっていたんだ。まあ、ふつうにアームドするほうが、俺からしたら、体力つかうんだけどな。

「ふんっ。なんだ、コケおどしか?」

ベータがそういった瞬間、俺は地面を蹴り、ベータの元へかけた。かけた、といっても、ほんの数秒の間で、数十メートルはなれたベータのところまで到着。

「なっ……!」
「ジャマなんだよ……。」

ボソッとつぶやき、ボールを奪う。

「チッ……。とめろ、てめえら!」

ベータの指示を受け、動き出すデュプリたち。
でも……。

「おせぇんだよ。」

あっさりと八人をぬきさり、残るはアルファのみ。しかも、アルファはアームドずみ。

「とおさない。いや、とおしてはならないから……。」
「ハッ。ほざけ。」

俺はボールを高々と蹴り上げ、俺も飛び上がる。ボールに追いつくと、まっすぐにゴールを見つめた。

「すべて焼きつくしてやる!」
『あのバカ……! やめろ! 「あの技」はつかうな! おまえの体力がもたな……。』
「うるせぇ! ぜんぶ消えろッ! 『全焼火炎』ッ!」

すごい熱を帯びたボールが、ゴールにむかっていく。俺が《半個半幽》になってから、ぜったいにつかってはならない技……。体力を大幅に消耗するうえ、俺が暴走してからでる技だから、ひとを傷付けることもある。

『くそっ。アイス、ウォーター、こい!』
『了解/ああ!』

三人の声がきこえた。
と同時に、ボールのまえにアクア、アイス、ウォーターがたちふさがる。

『とめるぞ!』
『わかっている。』
『「ウォーターフォール」!』
『「氷の 槍」。』
『「アクアマリン」!』

三人の技が発動して、「全焼火炎」をとめにかかる。それは、いくら相手チームとはいえ、ケガをさせないため。そう、わかってるんだけど——……。

「……マだ。」
『!? ま、まずい! アイス、ウォーター、どけ!』
『えっ!?』
「ジャマだあぁあああああぁ!!」

俺は、いっきにボールに気を送る。アイスとウォーターは、アクアの指示どおり、サッとかわした。アクアはアクアで、サッとボールをかわす。ボールはゴールキーパーをまきこんで、ゴールにつっこんだ。

「はあっ……はあっ……。ザマァみ……な……。」

俺の意識が、フッと切れた。



『風花!』
『風花さん!』

ファイアリはすかさずアームドを自らとき、実体化すると、たおれていく風花のからだをささえた。それを見て、フェイたちはふう、と安堵のため息をつく。
フィールドの外でそこまでを見とどけた風花の父は、ふっとほほえんだ。

「ここまでになるとはな……。もういいだろう。ベータ、アルファ、引き上げろ!」
「えっ!? で、でも……。」
「いけ。さもなくば……。」
「イ、イエス……。」

父におどされ、ベータたちはこの場をさった。

「さてと。」

父は、くるりとふりかえって、フェイたちを見たあと、風花を見た。

『こんなになるまでためさくても、よかったんじゃないのか? 圭庸(けいよう)さん。』
「おれだって、ここまでになるとは思ってなかったさ。」

父・圭庸は大きくため息をつき、アクアのもとまで歩みよる。アクアも、ふうとため息をつき、

『まあ、ここまでバカやるのが、こいつですからね。』
「これまで、風花のそばにいてくれて、あつく礼をいおう、アクア。」
『いいえ。いちばんがんばってくれたのは、ファイアリですしね。』
『アクアさんですよ。わたしは、すこしきらわれてましたし……。』
「……?」

フェイは、ゆっくりと起き上がり、アクアたちの元まで、ためらいがちによっていく。

『あ、すまんな。すこし存在をわすれていた。』
「ぇ;;」
『ア、アクアさんっ;;』
「まあ、いいだろう。こちらへきてもらえばいい。」

やっときていいということがわかり、フェイも安心して、でも圭庸への警戒心をいだきながら、歩みよった。

「そういえば、ためしたって……?」
『ああ、圭庸さんは、よくやるんだ。風花の実力をためすためにな。』
『ええ。でも、やっぱり暴走してからじゃないと、本気をだせないというのは……。』
「欠点だな、あれは。」
「暴走? 風花、暴走なんてするですか。」

フェイが問うと、父とファイアリはだまりこみ、アクアがこたえた。だが、そのこたえは、フェイを納得させはしなかった。

『そのことは、いずれ風花も話すだろう。』
「えっ。で、でm 『もう夜もおそい。はやくもどろう。』
『そ、そうですね。はやくもどりましょうか。』
「おれも、もどろう。風花をたのんだぞ、ファイアリ、アクア。」
『ああ。』
『わかってます。』

父はそういい残して消え、ファイアリとアクアは、フェイにむきなおった。

『すみません、フェイさん。納得、いかないとは思うんですけど。』
『こいつのことをぜんぶ話すには、まだはやすぎるんだ。』
「わかった。でも、いつか話してくれるよね?」
『ああ。この旅がおわるまでには、わたしが話させる。安心しろ。風花は、おまえのことを、案外信頼しているらしい。』
「そ、そうなんだ……。」
『ふふっ。じゃあ、そろそろまいりましょうか?』
『ああ。』

三人は、その場をさった。