二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜キャラ人気投票&2000越え ( No.204 )
日時: 2012/12/27 18:10
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: ysgYTWxo)

六話   「好きだったりする?」



「よしっ、じゃあ、きょうも特訓はじめよう!」

天馬くんは、ボール片手にそういった。元気だなあ、みんな。

「あれ? ふ……ユエは?」
「お兄なら、ずっとねてるよ。」
「えっ、そうだったんだ。」

そうだったんだって……お兄、もしかしてちょっとわすれられてたのかな;; それはそれでおもしろいんだけどね。
ていうか、いまだにみんな、風花っていいかけるね。いまは髪とめてるから「ユエ」。とめてなかったら「風花」なだけなんだけどね。
けっこうむずかしいかもしれないけど。

「どうしたんだろ、ユエ。」
「なんか、寝不足っぽい。」
「寝不足かぁ。」
「ユエ、だいじょうぶかな……。」

フェイくんはそういって、風花の顔をのぞきこんだ。

「フェイくん、だいじょうぶだよ。お兄、寝不足のときは、いつもの起床時間より二時間おそく起きるだけ。特訓してるあいだに、目をさますよ。」
「そ、そうかな……。」
「……もしかして、フェイくんさ。」

友撫はそういって、フェイくんの顔を、ぐいっと自分の顔に近づけた。

「お兄のこと、好きだったりする?」
「なっ//」

わあ、フェイくん、顔まっ赤ww

「やっぱりぃ〜。」
「そ、そんなんじゃないよ!// チームメイトだから、ちょっと心配になって……//」
「え〜、ほんと〜?」
「う、うんっ。」
「なーんだ。つまんないの。」

友撫は、フェイくんの顔を、ぱっと話した。

「なんなら、お兄攻略するのにこまってるフェイくん、見たかったのになぁ。」
「え;;」
「お兄、そういうことに鈍感なんだもーん。だから、お兄を好きになったひとは、みーんな苦労してたよ? ……特に、シュウくんとか。」
「えっ、シュウ?」

わー、フェイくんおどろいてるぅー。

「そう。出会ったばっかりのころのお兄、大好きだったみたいだよ? もう失恋したらしいけど。」
「えっ、どういうこと?」
「失恋した? あ、ちがうや。あきらめたの。」
「あきらめた?」
「お兄の攻略は、難攻不落の城を落とすのとおなじくらい、むずかいしよ〜。」
「表現方法が、なんか……;;」
「まあ、いいじゃない! 特訓いこー!」

友撫は、むりやりフェイくんをおして、天馬くんたちのところまでいった。




暗い森で、子どもふたりで入りこんでいた。ずっと小さいころからいってみたかった。でも、ぜんぜんかんがえていたのより広くて、迷って、けっきょく、森のなかで一夜をすごすことになっていた。
でも、火のつけかたもわからないふたりは、よりそいながら、ただただ夜明けを待つことしかできない。

「こわいよ……。」
「だいじょうぶだよ。朝になったら、きっと、パパとママがきてくれるよ……。」
「もし、もしこなかったら、どうしよう……。」

妹が泣きだしたとき、姉もがまんしきれず、目にためていたなみだを、ポロリとおとしてしまう。
だが、姉は「わたしはおねえちゃんなんだから。」と自分にいいきかせ、ポケットからハンカチを取り出すと、妹のなみだをふきとった。

「おねえちゃん……。」
「だいじょうぶだよ。きっと、きっと、パパとママが、きてくれる。」

姉は、妹の手をとって、そういった。だが、妹は泣きやまない。

「きっとって? ぜったいじゃないのぉ?」
「そ、それは……。」

姉は、返答につまった。
と、そのとき。

「あれ? あれ、なんだろう?」
「えっ?」

妹の指し示す方向には、灰色の煙が上がっている。

「火だわ!」
「火? あれ、火なの?」
「火なのよ! あれは、火からでた煙なの!」
「じゃあ、ひとがいるの? ひとがいるの?」
「きっと、そうよ! いきましょ!」

ふたりは立ちあがり、そこにむかった。ときどき、妹が転びそうになったところを姉が助けたり、道をまちがえたりなど、トラブルもありながら、その火のもとまでたどりついた。
だが、そこにたどりついたとき、姉は凍りついた。

「こ、これ……。」
「おっきい火だね……。でも、おっきすぎるよ……?」
「これ、火っていうレベルじゃないよ……。これ、山火事よ!」
「やまかじ?」
「山でおこった火事のことよ! ど、どうしよう……広がったら、たいへんなことになるわっ。このあたり、川があったはず……あ、あなたはここにいて! おねえちゃん、水くんでくるわ!」
「う、うんっ。」

姉は、いそいで川べりまで走った。だが、なにで水をもっていくのだろう。

「……よしっ。」

姉はエプロンを、川につっこんだ。川の水をたっぷり吸収したエプロンから、水をしぼりだそうという、なんとも時間をかける消火作業しか、彼女には思いつかなかった。
エプロンが水を吸収し、もうすえなくなったであろうと思って、姉がエプロンをだそうとした、そのとき。

「キャアアアッ。」
「!?」

森のほうから悲鳴がきこえ、姉は手をとめた。

(い、いまの……。)

姉はかたまった。いまの悲鳴は、どことなく、妹に似ている気がしていたのだ。妄想かもしれないが、もしかしたら、妹は……。
姉がそう思った、そのとたん。

グイッ

(えっ……?)

きゅうにエプロンを、なにかに引っぱられ、姉は水におちた。泳ぎを知らない彼女は、手と足をなんのかんがえもなく、バタバタとふりまわした。
姉を引っぱりこんだ生きものは、ゆっくりと川下へむかっていく。姉も、なんの抵抗もできぬまま、川下へ流れていき、一粒のなみだも同時に、川下へと流されていった。


『!!』

アクアは、ハッとして目をあけた。

『……夢、か……。』
『アクアさん、だいじょうぶですか?』

ファイアリは、アクアに問いかけた。アクアは上半身をおこし、ひたいに手をあてた。

『ああ。……どうやら、悪夢でも見ていたらしい。』
『悪夢を? それは、まあ……。』
『でも、わたしたちも、特殊だよな。夢を見られる化身だなんて。』
『わたしたちには、前世がありますからね。』

ファイアリは、苦笑いをしながら、そういった。アクアも、それをきき、顔をゆがめる。

『その前世のことだ。』
『前世のことで、悪夢といいますと、あの話ですか?』
『いいや。めずらしく、死ぬ瞬間だった。』
『それは……たしかに、悪夢ですね。』
『まったく。ほんっとうにつかれてきた。』

アクアが大きくため息をつくと、ファイアリは苦笑いをしたままいった。

『そういえば、アクアさんは、「ユエ」さんになった風花さんしか、最初は知りませんでしたよね。』
『ああ。ファイアリに教えてもらってから、はじめて風花は、女だってことを知ったよ。』
『ふふっ。』
『ファイアリはいいよな、むかしからの風花を知っていてさ。』
『そんなことないですよ。わたし、やっぱりきらわれていたみたいで……。アクアさんはうらやましいです。風花さんにとって、よき相談相手みたいです。』
『そんなことない。……わたしもわたしで、ある意味きらわれているようだ。』

アクアは、風花の顔を思い浮かべて、顔をゆがめた。ファイアリは、アクアのとなりにすわり、話をはじめた。

『アクアさんは、風花さんのこと、好きですか?』
『あたりまえだろう。まあ、あいつの場合、ちょっと危なっかしくて、ほおっておけないところもあるがな。』
『わたしも、風花さん大好きです。だから、きらわれていても、好きなら、それでいいと思いますよ。』

ファイアリは、アクアにニッコリとほほえみかけた。アクアも、その笑顔を見て、フッとほほえむ。

『……そうかもな。』