二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜3000越え ( No.229 )
日時: 2013/02/01 20:08
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: 2ft.mOaW)

2話   「恐怖の領域」



となりにいる相崎は、いったいどんな反応をするのかと、目をつぶって数秒後。
俺の予想を裏切る、大きなため息がきこえた。

「ったく……なんでおまえは、こういうの、すぐにかくすんだよ。」
「え?」
「おれが気味悪がるかも、とか思ってたのか? バカだなぁ。」
「なっ、おまっ……!」
「べつに、んなことしねーよ。いちおう、仲間だし。」
「え、あ、う……?」

なに、このやさしすぎる相崎!? 最初は、やさしいな、ありがたいなって思ったけど、いまはやさしすぎて、ぎゃくに恐怖!

「まあ、いいか。いくぞ。」

相崎は立ちあがり、先を走りだした。

(……どれだけイヤな奴でも、やっぱり、たよりになるかも。)

そう思い、ほほえんだ瞬間、相崎が立ち止まって、こちらをふりかえり、大声でさけんだ。

「はやくこいよ、バカー!」
「なっ……!? もうキレた! 逃がさねーぞ、相崎!」

     ☆

「うぎゃあああぁあっ!?」

いきなり、断末魔の悲鳴が、岩場に反響した。ふりかえると、いまにも泣きそうな顔で、マサキが自分をにらんでくる、ある『モノ』を見てる。

「どうしたの、狩屋?」
「あ、あああ、あれ!」
「えっ? って、わあっ! ヘビ!」

そう。首をもたげて、そのするどい目でみんなをにらんでいるのは、大量のヘビ。チロチロと赤い舌を出し入れし、獲物(えもの)でも見つけたかのように、目のなかの光を、ユラユラとあやしくゆらす。

「オレ、ヘビだめなんですよぉ〜! 霧野先輩、なんとかしてくださいっ。」
「はあ!? おれだって、得意なわけじゃないし!」

自分の影にかくれているマサキを、チラリとみてから、にらむ霧野先輩。

「あのなかに、いなくてよかったぜ……。」
「月流、にがてだもんな。」
「だいっきらいだし! ニョロニョロしやがって……!」
「おちつけ。あっ、なんか先、すすんでるぞ。」

そう俺に告げて立ちあがり、ヘビのほうへいこうとした相崎のローブを、俺はがっちりとつかんだ。

「こっちから、こっちからだ!」
「へーへー……。」

相崎は、一瞬あきれ顔になり、岩の影から、ヘビの目につかないような道を歩く。俺はなさけないことに、相崎のローブのすそを持ちながら、へっぴり腰で歩いているんだ……。

シャ——ッ……!

「ひいっ。」
「おちつけ。おれらをねらってるわけじゃない。とりあえず、興奮させないように、ゆっくり歩くんだ。万が一を想定してな。」

俺は、無言でコクリとうなずき、びみょうにふるえる足で、ゆっくり、ゆっくりと、一歩一歩ふみしめるようにして歩いた。岩のむこうで、ヘビが舌をチロチロやってるかと思うと、かんがえるだけで、気が気じゃない。さすがに小さいし、人間を食べたりは、しないんだろうけど。
ソロソロとヘビのひそむ恐怖の領域を歩きおえると、やっとおちついてきて、心臓がバクバクとなっているのが、うるさいほどわかる。

「おい、月流。のんびりしてるヒマなんかねーぞ!」
「お、おう。雷門どもにおいついてやる……!」

俺は、まだドキドキいっているむねをおさえながら、先をいく相崎を追った。


————このとき、まだアクアのすがたが見えないことに、俺は気づいていない——。