二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.242 )
- 日時: 2013/03/17 20:28
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)
7話 「かくさないで」
「おつかれさま、ユエ!」
うしろから、いきなりフェイに声をかけられ、俺はおどろきながらもふり返り、
「おつかれ。」
と声をかけた。
練習もおわり。とりあえず、休憩しなきゃってことで、フェイと一緒に、部屋に帰ることに。なんでフェイと一緒かっていうと、フェイと同じチームだから。輝と別々とは……って、ちょっと悲しいかも。
「そういえば、ぼくらの部屋って、となりどうしなんだね。」
そうなのです。
なぜか……ね。部屋割りが、
フェイ 俺 輝 友撫
っていう部屋割りで。ふつう、そこは、チームどうしでかためたりするもんじゃねーの? って思うんだけど……まあ、親しいひとが近くにいるってのは、また安心でして……。いや、ガンマとかじゃなくて、よかったなって。
なんか、よく知らんし。友撫がナンパされるのは、許せないし。
(そうだ。友撫をナンパしたら、俺が潰してやる……!)
「——でさー。……って、ユエ、全然聞いてないね;」
「あっ、ご、ごめん。色々考えてて……;」
フェ(黒いオーラ出てたよ、なんていえない……。なんか、こわい……;)
「じゃあな〜。また明日♪」
「また明日。」
フェイはニコッとわらって、部屋のなかに入っていった。
「また明日、か……。」
そうつぶやき、部屋の中に入る。中は、俺の趣味で、ひどくこざっぱりしてる。あるのは、モノクロのタンスと、シルエットネコ柄のベッド。それから、小物入れとクーラーボックス(←ぇ)。むかしは、ぬいぐるみとかで埋め尽くしてたけど、最近、あんまり興味なくなってきてな。
「また明日、ねぇ……。」
同じ言葉をくりかえす。なんとなくだけど。
また明日。また明日。
そういって、ずっと似たような毎日をくりかえすんだ。明日も、あさっても。これから、ずっと。
こんな《半個半幽》の体じゃないひとは。
《半個半幽》は、いっつもビクビクしてるんだって。いつ消えるかとか、分かんないし。
俺も、じつは、そうだったりするのかもね……。
ちょっと、そうやって思いはじめてる。
いつ消えるか分からないなんて、たしかにこわいしな。もしかしたら、最悪の場合、試合中に消えるかも。とかね。
コンコン
いきなり、うしろの戸がノックされた。
「はい、どうぞ。」
それを合図に入ってきたのは、輝。いつもどおり、なんかニコニーコしてる。
「どうしたんだよ? 輝。なんか、用事?」
「ううん。べつに。ちょっと、ふーちゃんのところ、遊びに来ただけ。」
「……へ?」
待って。
いま、「ふーちゃん」って呼びました!? 俺のこと、「ふーちゃん」っておっしゃいました!?
な、なんできゅうに、そんななつかしい名まえを!
「わー、ひどくこざっぱりしてるねぇ……。」
輝、さっそくコメント。でも、俺にとっては、そんな言葉、いまは雑音に等しい。頭の中で、グルグルと様々な疑問が浮かびまくっている。
そもそも、なぜ俺の部屋に遊びに来た!? てか、なんで俺のこと、「ふーちゃん」とかって呼ぶ!? イマサラすぎるだろ!
(うーん、うーん……?)
「ふーちゃん、聞いてる? いまから、フェイも来るよ?」
「え? なに? あっ、それより、輝、ちょっと出て! 私服に着替えようと思ってたのに!」
俺はそういい、輝の背をグイグイおして、部屋から追い出した。
い、いや、事実なんだよ!? 事実なんだけど、うーん、なんかちょっとした罪悪感を……ちょっとどころじゃなく感じます……。
ばたんっととびらを閉め、そのとびらに寄りかかる。
輝も私服だったし。なんか、緑のパーカー着てたし。どーでもいいけど。
「なに着よ……。」
めんどくせーな。ふつーに、オーバーオールでイクか。
……いや、持ってくるのわすれてる。よく着るくせに……。
うーん。じゃあ、なんかダサいので……。
って、これもなし。
ったく、友撫の奴、なに持ってきてるんだよ? やっぱり、友撫に服担当をさせたのは、まちがいだったか……。
俺の望むものは一切なく、なんかかわいいの多い。男子ものは一切ない。なんか、短パンまで女子っぽいのばっかだし……。
よし、もうてきとーにこれでいいわ。
なったかっこうは、淡い水色のTシャツに、黒いショートパンツ。Tシャツは、なんかサイズ大きくて、ふともものギリギリ上のところでとまってる。ショートパンツとか、はっきりいって、見えかくれするていど。髪が短くなったから、なんかやんちゃな小学生みたいなカッコ。……実際、小学生だけど。
いや、べつに、ファッションとか興味なさすぎて、勉強してないから、他人からするとダサいのかも……。
いーや! んもう、考えるだけで頭がいたい!
「あのー、ふーちゃん、まだ?」
「あっ、悪い!」
俺があわててとびらにかけ寄って開けると、輝。……と、フェイ。
「えっ、なんでフェイ!?」
「さっき、いったじゃん。フェイも来るよって。聞いてないね;」
「聞いてねー……;」
「ユエ、私服なんだね。」
「あ、うん。雷門のユニフォームのまんまじゃ、すごしづらいかなーと思って。テキトーに物をそろえてきたんだ。」
「あー、そういう手もアリか……。」
フェイ、そこ、真剣に考えなくてもいいとこだから。
「輝も、私服だな。」
「あっ、うん。たしかに、ユニフォームって引き締まるんだけど、なんか緊張しちゃうっていうか……。」
「なるほど。緊張状態がつづくのは、あんまり体に良くないよなー。」
「うん。」
「部屋、入ってもいい?」
「ああ、もちろん!」
俺は、フェイと輝を、部屋の中に入れた。フェイは「ほえー、シンプル。」とつぶやいて、それで終わり。
「シンプル・イズ・ベストってやつだ。」
「なるほど〜。でも、シンプルすぎる気が……。サッカーボールとか置けば、たしょう良くなると思うんだけど。」
「そうかな……。あんまりそういうの、置かないし。むかしは、ぬいぐるみとか、そういうの、置いてたんだけどね。めっきり興味がなくなったんだよ。小学校転校した後。」
そういったとたん、輝の顔がかげり、次の瞬間には、そむけられていた。
……気にしてるのかな、あのこと。
「ったく、輝も過去をズルズル引きずる男だなぁ。」
「ッ! でもッ!」
「は〜い、シリアスタイム終わり! フェイもいるんだよ? そういうの、話さないの。なんか食べるか?」
俺はふたりにそういい、べつの話題を投げかけた。フェイはすこし戸惑い気味に「う、うん。」といい、輝は沈んだ顔で「ごめん……。」といったまま。こういうの見ると、ちょっとした罪悪感が……。
クーラーボックスから、とりあえず適当に生クリームのホイップ済みのやつと、ぷっ○んプリンを取りだし、プリンを皿に三つ、プッチンしてから、生クリームを添えるていどでムニュ〜ッと。
が、しかし。とうぜん、あんな話してたから、空気が最悪のどん底にあることは、いわなくても分かるだろう……。
「えっと……。」
なんとなく声を出すが、むなしくも空振り。再び沈黙。
(やーめーてーくーれー! こういう辛気くさいの一番嫌い! 誰かしゃべれ!)
「ねえ、ユエ。」
「なんだい、フェイくんっ。」
「フェイ『くん』?」
し、しまった……。ノリでつい、フェイに『くん』つけちまった……。
「さっきの話……なに?」
「……えっとぉ……?」
なに、いまのフェイの質問。
「あそこで止められたら、気になってしかたないよ。それに……いいかげん、そういうのかくすの、やめて。」
フェイ……。過去にまで首をつっこんでくるようになったか……。
なんなら、おまえの過去も、ここだけといわず、練習中にさけんだろうか。……っと、これはあかんね。
「……分かったよ。あ、輝、なんか間違ってたら、修正よろしくね。」
「うん。でも、ふーちゃん、いいの? あの話しでしょ?」
「いいよ、べつに。もうけじめはついてるし♪」
俺は、輝にウインクをして、話をはじめた。