二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナクロ〜なくしたくない物〜4000越え ( No.243 )
日時: 2013/03/27 17:49
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: O59cZMDb)

8話   「消滅」



色々な理由があり、俺は、輝と同じ学校を、誰にも言わず、友撫とふたりだけで旅立とうとした。そのとき、輝がそれを聞きつけて、俺たちの家に来た。たくさん質問されたけど、なにも答えはしない俺に、ずいぶんいらだっていたように見えたよ、輝は。
けっきょく、俺と友撫は、トラックの中に乗りこんで、泣いている輝をひとり、その場に残して出発。それから、ずっと連絡もなにもとらなかった。

転校した先は、元いた学校から、かなり離れた学校。県を十個くらいまたがないと、いけないところだった。べつに、良い思い出をその学校で作れるだろうとか、そんなあまいことは、考えていなかったよ。嫌われ者は、どこにいっても、嫌われ者になるだけだからね。
でも、思った通りだった。すこしして、すぐに嫌われ、友だちも、ひとりたりともいなかった。ひとりだけ、優しくしてくれる子はいたけれど。
たったひとりで、静かに、さびしく過ごす。慣れきった日々。まえの学校でも、似たような感じだった。
だけど、こんなところまでいっしょになるとは、思ってもいなかった。

ある日、仲よくしてくれていた女の子・真理が、体調不良をうったえ、学校を早退した。
六時間授業を終え、家に帰ると、友撫がひとり、泣きじゃくっていた。
どうしたのか聞いたら、知らない人がいきなり入ってきて、俺の部屋にあったぬいぐるみを、片っぱしからとっていったのだという。兄さんの家に引っ越したんだけど、その日は、ちょっとした用事で、その日から三日間、家に居なかった。たぶん、そこをねらわれたんだろうけど。

その時点で、誰なのかまったく分からなかった俺は、次の日も学校にいった。友撫をひとりにしておきたくはなかったけど、休む理由も思いつかなかったし。
だけど、教室について、扉を開けた状態で、かたまってしまった。
ぬいぐるみを持ったクラスメートの女子が、こちらを睨みつけていたんだ。でも、俺が驚いていたのは、牛耳を執るように、先頭にいた女の子。

真理だったんだ——……。


「えっ、仲よくしてくれてたのにっ?」

ここまで話して、だまって聞いていたフェイが声をあげた。

「あー……うん。ハナから、ああするつもりだったんだ、真理は。真理にだけは、家庭内の話も、バカみたいにしてたし。いま思えば、お人好しだったと思うよ。」

そういい、俺はうすく笑んだ。フェイと輝は、おたがいの顔を見あわせて、黙りこむ。

「だいじょうぶだよ。慣れてたしね。……話、つづけるよ。」


真理は、俺が一番気に入ってるっていった、猫のぬいぐるみを持っていた。反対の手には、カッターナイフ。
真理は、俺が入ってきたのを確認すると、いやらしく、悪者らしく、ほほえんだ。そして、「バイバイ。」といってから、ためらいもなく、ぬいぐるみをズタズタに切り裂いて——まわりの女子もそうした。まだ担任の先生は来ていない時間帯だった。男子はいたけれど、すくんでいたようで、こちらを見ているだけだった。

べつに、助けを求めようとか、そんなふうには思わなかった。一言で、やっぱり、慣れてしまったからだと思う。
でも、このとき、同時に思った。
きっと、ぬいぐるみを盗みにきたのは、真理なんだって。
いや、ほかに、誰も居ないと思うんだけどね。仲よくしてたってことが、どうしても頭から離れなくて……。
このときは、どうしても信じられなかったし、信じたくなかった。だから、「きっと」って、いってたんだと思う。

俺はたまらなくなって、教室を飛び出した。教室どころか、学校の校門すらも、飛び出した。
道を曲がり、信号まで無視して。けっきょく、自分に、家族のもとと、あと一つ以外には、行き場はないってことを、実感させられた。
行き着いたのは、家。幼稚園に行っている友撫。用事でいない兄さん。
誰もいない家は、空っぽになりかけている、俺の心を見ているように感じた。
自室に飛びこんで、その場にへたりこみ、ボーッとしていた。だいたい、二時間くらい。

玄関のほうで、ガチャッと音がして、やっと我に返った。友撫が、帰宅してきたんだ。幼稚園にむかえにいくことは、学校の都合上、無理だから、カギを持たせてたんだ。それで、ガキを開けて入ってきたってわけさ。


「……うん。まあ、関わりがあるのは、こんな感じかな。」
「そういうことか……。」

すごくね、俺? みごと間違いなく、説明し切れたよ。
……でも、不安だなぁ、どうしても。『あのこと』が。
晄とフェイが話しているあいま、俺は心の中で、アクアに語りかけた。

(なあ、アクア。)

……しーん……

(えっ……?)

あ、れ……? 返事が、ない……?
ま、待って。もう一度だけ……。

(ア、アクア?)

また、返事がない。
なんで……どういうこと? 俺の声が聞こえないとか? それとも、それとも……?

「ごめん、ふたりとも! 勝手にくつろいでおいて!」
「えっ、風花!?」

俺は、部屋を飛び出した。
おかしい。ここまでアクアの声が聞こえないわけ、ない。
まさか、まさか……!













アクアが、




















































































消えた……?